データでみる医療・医薬の世界 八野芳已(元兵庫医療大学薬学部教授 前市立堺病院[現堺市立総合医療センター]薬剤・技術局長) 第8回

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第1節:食生活と栄養

(1)食生活の変遷(in19.5.28/Tue.寄稿済)

(2)食生活とライフステージ&附則「天寿を全うする」って・・・(in19.7.3/Wed.寄稿済)

(3)摂取栄養の変化 [「栄養面から見た日本的特質」:農林水産省] (in19.8.25:Sun.寄稿済)

(4)食生活に重要な栄養素 ―種類とそのはたらき―  (in19.9.26:Thu.寄稿済)

(5)栄養素の消化・吸収・代謝 (in19.10.7:Mon. 寄稿済)

(6)エネルギーの摂取と消費 (in19.11.1:Fri.投稿済)

第2節:医療と食事

  • 医療機関における食事・栄養 (in19.12.5:Thu.投稿済)
  • 疾患領域別栄養食事療法&薬物療法

 今回は、[I.循環器疾患II.消化器疾患III.腎臓疾患IV.栄養・代謝疾患V.血液疾患VI.精神・神経疾患VII.その他(脳血管障害、咀嚼・嚥下障害、妊娠高血圧症候群、消化管の術後)]の疾患領域を取り上げて、栄養療法や薬物療法について考えまとめてみる。

I.循環器疾患

 循環器疾患とは、血液を全身に循環させる臓器である心臓や血管などが正常に働かなくなる疾患のことで、[高血圧・心疾患(急性心筋梗塞などの虚血性心疾患や心不全)]・[脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)]・[動脈瘤]などに分類される(1)。主な死因別死亡数の割合では、心疾患15.1%、脳血管疾患8.4%が合わせて約4分の1、23.5%を占めている(平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況)。また、傷病別にみた通院者率(人口千対)は、男女とも「高血圧症(男:114.0、女:114.6)」が高く、次いで男では「糖尿病(男:54.1、女:33.4)」、女では「腰痛症(男:42.2、女:58.4)」となっている(国民生活基礎調査、平成25年)。このように循環器疾患では、高血圧、心疾患が死因や通院者率で高い値となっていることから、この領域での栄養食事療法と薬物療法の実際をみてみる。

  • 高血圧(2):高血圧治療の目標は、高血圧による臓器障害(脳・心臓・腎臓)の発症・進展を抑制することであり、そのため血圧を正常なレベルまで下げ、合併症が進行しない程度の血圧を維持することが治療の目標となる。その治療としては(a)食塩制限(6g/日)、適正体重の維持(BMI<25)、適度な運動、禁煙・節酒による生活習慣の改善、(b)薬物療法(3-6)になる。すべての高血圧患者に対して生活習慣の改善を指導し、そのうえで薬物療法を併用することが原則である。
  • 生活習慣の改善(7):「減塩食の調理ポイント(表1)」、「食塩1gに相当する調味料(表2)」、「生活習慣の修正目標(表3)」を考慮して、進めることが目標の達成に役立つ。

 (b)薬物療法(3-6)

薬物療法の位置付けは、高血圧患者に対しての生活習慣の改善を指導したうえでの併用療法であることが原則となる。薬物療法に使われる薬を図1に示す。なお、詳細については、参考資料(3)~(6)をお読みいただきたきたい。

  • 虚血性心疾患・うっ血性心疾患(2)

 先天性心疾患、心臓弁膜症、うっ血性心不全、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈などの心臓病のうち、食事療法の適応となるのは、「虚血性心疾患」と「心疾患に共通しておこるうっ血性心不全」である。

(a)虚血性心疾患・うっ血性心疾患の病態、栄養療法の原則と実際については、表4にまとめた。

 (b)薬物療法(7)

 狭心症の治療薬には、硝酸薬・カルシウム拮抗薬・β遮断薬がある。いずれも労作性狭心症において酸素需要を下げることができる。また、硝酸薬とカルシウム拮抗薬は、冠れん縮性狭心症で冠れん縮を抑制し、酸素供給能力を高める。

 うっ血性心不全には、従来ジギタリスが強心薬として使われてきたが、近年の臨床研究で、ジギタリスは心機能を改善して症状を緩和しても延命効果はないことがわかり、利尿薬・RASS阻害薬・血管拡張薬などによる薬物治療が、心不全治療の中心になっている。

【参考資料】

(1)循環器疾患とこころ | e-ヘルスネット 情報提供 – 厚生労働省

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp › information › heart

 (2)系統看護学講座 別巻 臨床薬理学 p.80-85 2019 医学書院

(3)八野芳已:最近の高血圧疾患の薬物治療、薬事日報 2015.9.11号 p.5

(4)八野芳已:高血圧性疾患の薬物治療、薬事日報 2016.9.23号 p.5

(5)八野芳已:高血圧性疾患の薬物治療 3rd Edition、薬事日報 2017.9.22号 p.5

(6)八野芳已:高血圧の薬物治療 4rd Edition、薬事日報 2018.9.21号 p.5

(7)新看護学3 専門基礎3 食生活と栄養 ㈱医学書院 2017.2.1 p.179-301

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