第1節:食生活と栄養
(1)食生活の変遷(in19.5.28/Tue.寄稿済)
(2)食生活とライフステージ&附則「天寿を全うする」って・・・(in19.7.3/Wed.寄稿済)
(3)摂取栄養の変化 [「栄養面から見た日本的特質」:農林水産省] (in19.8.25:Sun.寄稿済)
(4)食生活に重要な栄養素 ―種類とそのはたらき― (in19.9.26:Thu.寄稿済)
(5)栄養素の消化・吸収・代謝 (in19.10.7:Mon.寄稿済)
(6)エネルギーの摂取と消費 (in19.11.1:Fri.投稿済)
第2節:医療と食事
- 医療機関における食事・栄養
今回は、医療機関における食事・栄養を「①栄養補給方法」、「②病院食の分類方法と種類」、
「③病院食の選び方」、「④栄養アセスメント」、「⑤特殊栄養について」の5つの点からまとめてみる。
- 栄養補給方法(1,2)
健康な人は、前節で述べたように日々の食事を通して、必要な栄養素を体内に取り入れ、エネルギーの産生、生体の構築を通して、生命を維持して生活している。しかし、身体に何らかの不具合・不調な状態が生じた時や疾病に陥った時には、適切な内科的および外科的治療と薬物療法や栄養療法が必要かつ重要になる。その中で、栄療療法に焦点を合わせてみると、この療法には[経腸栄養法(腸を使う方法)]と[静脈栄養法(非経腸栄養法、腸を使わない方法)]の2つの栄養療法があって、さらに経腸栄養法は、[経口栄養法(口を使う方法)]と[経管栄養法(口を使わない方法)]に分けられる(図1、2)。
疾病を持って病院等に入院し治療を受けている方(患者)への栄養補給は、これまで腸を用いない非経腸的静脈栄養法が主体的に用いられてきた。しかし、この栄養補給法では腸が使われないため、小腸粘膜が廃用性委縮となり、重要な免疫組織であるパイエル板(Peyer’s patch)などを含む粘膜層で、委縮や剥離が惹き起こされることから、体内環境が「患者の免疫力低下」という状態に陥ってしまう(図3、4)。さらに、小腸の絨毛の委縮によって腸内細菌が血中へ入り込み敗血症を起こすなど、身体にとってマイナス要因となることが多いことが分かってきた。これらのことから、最近では、消化・吸収の過程で問題となる個所がどこにあるのかを見極め、その個所よりも肛門側の臓器は少しでも使用できる方法を選択することが重要視されるようになっており、より生理機能に合った栄養補給方法となっている。
- 病院食の分類方法と種類(2)
病院食は、(a)おもに一般食における副食の分類に用いられる「形態別分類(図5)」と(b)疾病を主眼に分類する「疾病別分類(表1)」、そして(c)エネルギー・たんぱく質・脂質などを基に治療食を分類する「栄養成分別分類(表1)」の3つに大きく分けられる。「形態別分類」では図5に示すほか、ライフステージに適した食形態である[離乳食・幼児食・学童食・高齢者食]なども含まれる。しかし、「疾病別分類(表1)」では、入院時、単一疾患の患者では、治療食の選択は容易であるが、複数の疾患を持っている場合は、適切な栄養量の食事の選択が難しくなる問題点がある。一方、「栄養成分別分類(表1)」は、患者の体格や状態によって必要な栄養量を検討し、その栄養量に合った食種を選ぶことができること、また、患者個人にあった栄養量の食事を提供することが求められていることから多くの医療機関でこの「栄養成分別分類」が取り入れてきている。
③病院食の選び方(2)
病院食の目指すところとして、(a)適正な栄養素の補給、(b)栄養状態の維持・改善、(c)疾病の治療や再発、進展の防止 が挙げられる。このような中で一般的には、食事療法の意味する(a)自然治癒が期待できる場合、(b)自然治癒以上に積極的な治療が必要な場合、(c)自然治癒が望めず、症状の悪化や再発の防止、安定をはかる場合、(d)治癒が期待できず、症状の改善をおもに行う場合を考慮して、食事(栄養)のあり方が検討される。
④栄養アセスメント(2、3)
栄養管理は、栄養状態を評価・判定し、行われてきているが、これまでの栄養状態の判定には、統一された言語や概念、方法がなく、国内のみならず国際的にも混乱が生じていた。このような状況を踏まえ、栄養管理に関する言語の定義づけを行い、栄養管理プロセス(図6:栄養ケアプロセス: Nutrition Care Process: NCP)という栄養管理の手順が示された(栄養と食事のアカデミー:Academy of Nutrition and Dietetics;AND, 元アメリカ栄養士会)。栄養管理プロセスは、栄養管理システムや用語・概念の国際的な統一を目指し、アメリカ栄養士会の提案で始まった栄養管理の手法で、(a)栄養アセスメント、(b)栄養診断、(c)栄養介入、(d)栄養モニタリングと評価の4段階で構成されている。栄養診断とは、栄養管理プロセスにおける栄養アセスメントと栄養介入の中間の段階で、栄養アセスメントをもとに対象者の栄養状態を診断することで、栄養診断を行う内容は、栄養介入により、(a)問題を完全に解決できる内容または、(b)少なくとも徴候と症状を改善することができるという内容なっている。
【栄養診断の3つの領域と定義】
・NI(Nutrition Intake:摂取量):経口摂取や静脈栄養補給法を通して摂取するエネルギー・栄養素・水・生物活性物質に関する問題
・NC(Nutrition Clinical:臨床栄養):栄養代謝と臨床検査、または身体状況に関する栄養の所見・問題
・NB( Nutrition Behavioral/Environmental:行動と生活環境):知識、態度、信念、物理的環境、食物の入手や食の安全に関する栄養素所見・問題
上記の3つの領域において 70の栄養診断(「国際標準化のための栄養ケアプロセス用語マニュアル」P.190~)が認められている。また、栄養診断の記載方法は、「PES報告書」と呼ばれる文章表現を活用し、簡潔な一文で記載される。PESとは、Problem Related to Etiology as Evidenced by Signs and Symptomsの略で、「Sの根拠に基づき、Eが原因となった(関係した)、Pの栄養状態と栄養診断ができる」ということである。
病院の入院患者の30~40%は、低栄養の患者であると報告されている(2)。この点から、身体計測と生化学検査から得られた指標は、体脂肪や骨格筋などの身体組織を反映することから全身の栄養状態を把握(推測)することには重要である(表2-5)。
⑤特殊食品について(2、4)
(a)特別用途食品
特別用途食品とは、病気の人や、乳幼児、高齢者など、通常の食事を食べることが出来ない人のための特別な用途を目的とした食品のことで、健康増進法第二十六条で「販売に供する食品につき、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用その他厚生労働省令で定める特別の用途に適する旨の表示(以下「特別用途表示」という。)をしようとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。」と定められている。
特別用途食品の種類は、大きく分けると、病者用食品、妊産婦、授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、嚥下困難者用食品に分けられ(図7)、特定保健用食品も広い意味では特別用途食品に入る。
特別用途食品は、低タンパク質食品やアレルゲン除去食品のような認可基準があるものに関しては、その基準に適合しているか審査されて、消費者庁長官の認可を得る。それ以外の認可基準がないものについては、認可のために個別に評価される。認可を申請する際には、製品見本、商品名、原材料の配合割合及び当該製品の製造方法、成分分析表、許可を受けようとする特別用途表示の内容などを、厚生労働大臣に提出して、それぞれの特定の用途のために適する成分であるかどうかだけでなく、それ以外の栄養成分が十分に含まれているかといった観点からも、評価される。
たとえば、アレルゲン除去食の場合は、アレルゲンが十分に除去できているのかだけでなく、それ以外の栄養成分は同等の食品と変わらない程度に含有しているのかといったことも重要なポイントとなる。
認可が得られると、特別用途食品であることを表示することができ、特別用途食品であることを示すマークをつけることができます(図8参照)。
区分欄には、乳児用食品の場合は「乳児用食品」と、幼児用食品の場合は「幼児用食品」と、妊産婦用食品の場合は「妊産婦用食品」と、病者用食品の場合は「病者用食品」と、その他の特別の用途に適する食品の場合は、当該の特別用途が記載される。
【特別用途食品の種類】
特別用途食品のうち、(a)病者用食品には、低タンパク食、アレルゲン除去食、無乳糖食品、総合栄養食品、およびその他がある(図7)。[低タンパク食]は腎臓疾患等を持つ人に適した食品で、主要なものはタンパク質含有量の少ない米飯、[アレルゲン除去食]は特定の食物アレルギーの患者の人に適した食品で、ほとんどが牛乳アレルギー(ミルクアレルギー)患者用の調製粉乳や育児用ミルク、[無乳糖食品]は乳糖不耐症又はガラクトース血症の患者さんに適した食品で、ほとんどが乳幼児用の調製粉乳で、多くがアレルゲン除去食と重複している、[総合栄養食品]は、疾患等により通常の食事で十分な栄養を取ることが難しい人のための食品で、必要な栄養素をバランスよく含んでいる、[そのほかの個別評価型の病者用の食品]には、脱水時の経口補水液や潰瘍性大腸炎患者用の食品がある。(b)妊産婦、授乳婦用粉乳および、乳児用調製粉乳は、妊産婦および授乳婦、または乳幼児用の粉ミルクで、(c)嚥下困難者用食品の主要なものは、嚥下困難者の水分補給用のゼリーで、嚥下困難者用食品には、2018年4月からとろみ調整用食品が追加されている。
2017年8月10日の時点で、特定保健用食品を除き、特別用途食品の表示が許可されている食品は、54品目となっている。高齢化に伴い、咀嚼および嚥下機能が低下した高齢者や、食物アレルギー、糖尿病や腎臓障害など食事療法が必要な病気の患者も増加している。食品開発の分野でもさまざまな研究が進んでおり、今後は、これらの病気に対応するための新しい食品が開発され、特別用途食品の数も増加していくことが、期待される。
参考文献:・健康増進法 健康日本21、・健康や栄養に関する表示の制度について 特別用途食品 許可制 消費者庁、・特別用途食品制度について 消費者庁(PDF)
(b)特定保健用食品
特定保健用食品は1991年に栄養改善法で法制化された。消費者庁によると、特定保健用食品とは、「からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えたりするのに役立つ、などの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいいます。」とある。特定保健用食品として認可には、事業者がその食品を用いた臨床試験を行い、医学、栄養学に基づいて有効性や安全性を示すことが必要である。提出した有効性および安全性の証拠が認められて、消費者庁長官によって認可されると、消費者庁により許可されたことを示すマーク(図9)を商品に付けることができる。
【特定保健用食品の種類】
特定保健用食品には、大きく4つの種類がある。
特定保健用食品:身体の生理機能などに影響を与える特定の成分を含んでいる食品のうち、有効性、安全性、品質などの科学的根拠を示して、国の審査・評価のもとに表示が許可された一般的な特定保健用食品。
条件付き特定保健用食品:有効性の科学的根拠が特定保健用食品のレベルに届かないものの、一定の有効性が確認された食品を、限定的な科学的根拠であるという表示条件付きで許可された食品で、商品には通常の特定保健用食品のマークではなく、条件付き特定保健用食品のマークを付ける(図10)。
特定保健用食品(規格基準型):特定保健用食品として許可実績が十分あるなど科学的根拠が蓄積されている食品について、臨床試験を行わずに、消費者庁事務局にて規格基準に適合するか否かの審査を行い許可されたもの。
特定保健用食品(疾病リスク低減表示):保健機能を示す食品中の関与成分の疾病リスク低減効果が医学・栄養学的に確立されている場合に、疾病リスク低減の特定保健用食品として表示することが許可された食品で、これまでに認められているのは、「カルシウムと葉酸」で、それぞれ骨粗鬆症および胎児の二分脊椎などの神経管閉塞障害のリスクを軽減できる可能性を表示することができる。
【特定保健用食品の表示】
特定保健用食品は次に示す15項目を表示する(図11)。
特定保健用食品の表示項目:商品名、消費期限又は賞味期限、保存の方法、製造所所在地、製造者の氏名(法人にあっては、その名称)、許可証票、許可を受けた表示の内容、栄養成分の量、熱量、原材料の名称、特定保健用食品である旨、内容量、一日当たりの摂取目安量、摂取の方法、摂取をする上での注意事項、バランスの取れた食生活の普及啓発を図る文言、その他
※特定保健用食品である旨、許可表示、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」のバランスの取れた食生活の普及啓発を図る文言、栄養成分表示、一日当たりの摂取目安量、摂取の方法、摂取をする上での注意事項、保存の方法、については特定保健用食品として義務表示事項
これまでに許可されている、表示内容には以下のようなものがある。
特定保健用食品の表示例:お腹の調子を整える食品、便通改善等、血圧が高めの方に適する食品、コレステロールが高めの方に適する食品、血糖値が気になる方に適する食品、ミネラルの吸収を助ける食品、食後の血中の中性脂肪を抑える食品、虫歯の原因になりにくい食品、歯の健康維持に役立つ食品、体脂肪がつきにくい食品、骨の健康が気になる方に適する食品
特定保健用食品も、医薬品とは異なり、あくまでも食品で、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病にかかる前の人の健康の維持・増進や、生活習慣病との境界領域の人の食生活を改善するための食品であって、治療を目的とするものではないことに注意すること。
参考文献:・健康や栄養に関する表示の制度について 特定保健用食品(トクホ)許可制消費者庁、・特保(特定保健用食品)とは? e-ヘルスネット厚生労働省)
(c)栄養機能食品
栄養機能食品とは、ビタミン、ミネラルなどの特定の栄養成分の補給のために利用する食品で、それぞれの栄養成分ごとに、一日当たりの摂取目安量の中に含まれる量の基準値(上限値と下限値)が、国によって定められており、その基準に当てはまっていれば、国へ届け出たり許可申請したりせずに、該当する栄養成分の機能を表示することが出来る。
近年、食生活のバランスが乱れ、不足している栄養を補うために、さまざまなサプリメントが市販されていて、不足している栄養成分を補うという意味では、サプリメントは栄養機能食品の一部とも言えそうだが、サプリメントの中でも、ビタミン類やミネラル類などの国が基準値を定めた特定の成分について、その基準値に合っているものだけが栄養機能食品となる。
[栄養機能食品の種類]
2018年2月の時点で、機能に関する表示を行うことが出来る栄養成分は、脂肪酸(n-3系脂肪酸)、ミネラル類(亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム)、ビタミン類(ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸)の合計20種類となっている。
不足している特定の栄養素を補給する食品というと、錠剤やカプセルなどのサプリメントを思い浮かべる方も多いと思うが、栄養機能食品に関しては、対象となる食品の種類は、錠剤やカプセルだけに限らず一般消費者向けの加工食品および生鮮食品も含まれる。一日当たりの摂取目安量の中に含まれる量が基準値に当てはまれば、野菜や魚などの生鮮食品であっても栄養機能食品として表示することができる。ただし、栄養機能食品はすべて必要な表示事項を記載した包装容器に入れて販売しなければならないと定められている。
[栄養機能食品の表示]
栄養機能食品の表示の例を、図12に示す。
栄養機能食品の表示では、「栄養機能食品(ビタミンC)」のように、栄養機能食品であることを表示して、その後ろに該当の栄養成分の名称を表示する。表示した成分について、例えば、「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素」、「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素」のように、その機能を表示することができる。機能の表記は、食品表示基準に従い、規格に定められた栄養成分以外の成分の機能や、「疲れ目の方に」などといった特定の保健の用途は表示できない。
また、栄養機能食品では一日当たりの摂取の目安量が明記されているとともに、一日当たりの摂取目安量当たりの栄養成分量が表示されている。
栄養機能食品を摂取する上での注意事項として「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。一日の摂取目安量を守ってください。」と書かれているように、栄養機能食品は健康効果が保証されているものではなく、不足している栄養素を補うためのものである。さらに、これらの栄養成分はたくさんとればより効果があるというわけでもなく、パッケージに記載されている容量・用法をきちんと守って使用することが重要。
もう一つ注意した方が良いことは保存の方法で、栄養機能食品は、特定の栄養成分に関して国が定めた基準を満たしているが、保存状態が良くない場合、摂取するときまでその基準が満たされている保証はなく、パッケージに記載されている保存方法をきちんと守り期限内に消費すること。
栄養機能食品は、必要な栄養素の摂取量が不足し、体に不調をきたしてしまうようなことを防ぐことを目的として、不足している栄養素を補うために摂取するものである。しかし、通常の食事で不足した栄養素をサプリメントなどの栄養機能食品で補うよりも、健康のためには、日ごろから、主食、主菜、副菜を基本としたバランスの良い食事を摂取するように心がけたいものである。
参考文献
機能性表示食品制度の概要と現状 消費者庁(PDF)・栄養成分表示(栄養機能食品)「食品衛生の窓」東京都福祉保健局・栄養機能食品とは 消費者庁(PDF)
(d)機能性表示食品
食品の機能
近年、食品の機能として第一の機能の生命現象を営むために必要不可欠な、エネルギー源や栄養素の補給としての、第二機能の味、におい、色、舌触りなど食べた時においしさを感じる嗜好・食感機能に加えて、第三の機能として体の調子を整える生体調節機能が注目されている。
機能性表示食品とは
機能性表示制度では、個別の審査を経て保健機能の表示ができる特定保健用食品、一定の量を含んでいる栄養成分についてその機能の表示ができる栄養機能食品に加えて、2015年4月に新しく、企業等の責任において保健機能の表示ができる機能性表示食品が加わった。
消費者庁のHPでは、機能性表示食品は、「疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)に対し、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品」と定義している。
[機能性表示制度の概要]
特定保健用食品は、有効性や安全性について最終製品を用いた臨床試験を行い、それをもとに消費者庁の長官が許可する。一方、機能性表示食品は消費者庁が規定した有効性や機能性・安全性の評価を行ったうえで、事業者の責任において消費者庁に届け出ることで認められる。
そのため特定保健用食品では、製品のパッケージに「特定保健用食品」と表示することができるほか、消費者庁許可のマークを付けることが出来るが、機能性表示食品は「機能性表示食品」と表示することが出来るだけで消費者庁許可のマークはない。
[有効性や機能性の評価]
有効性や機能性の評価については、特定保健用食品の場合は、事業者が届け出をしたい製品を用いてヒトで本当に効果があるのか実際に試験をしなければならない。安全性の確保を前提とし、科学的根拠に基づいた機能性が、事業者の責任において表示されるものである。
そのため機能性表示食品は特定保健用食品と比較して登録する時間も費用も少なくてすむ。
全ての食品が対象
また、機能性表示食品は生鮮食品を含むすべての食品が対象となっている点が、特定保健用食品と異なっている。
機能性表示食品は手続きが簡便であること、また、対象となる食品が全てを対象としていることで、機能性が表示できる食品の数は大幅に増加している。
2016年12月の時点では、サプリメント形状の加工食品231件、その他の加工食品323件、生鮮食品5件(合計559件)の食品が登録されている。また、登録されている食品については、そのすべてについて、消費者庁のWebから、有効性や機能性・安全性の科学的根拠などの届け出情報を確認することができる(参照リンク1)。
[機能性表示食品の表示]
機能性表示食品のパッケージの表示例を図13に示す。
パッケージには、機能性表示食品である旨を記すとともに、消費者庁のウェブサイトで確認できるように、届け出番号を記載する。名称、原材料名、内容量、栄養成分表示などの通常の加工食品と同様の表示を付けるほか、当該機能性表示食品の使用上の注意なども記載する。
また機能性については、消費者庁長官に届け出た内容が表示される。たとえば、「本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。難消化性デキストリン(食物繊維)には食事の脂肪や糖分の吸収を抑える機能があることが報告されています。」のように、健康の維持や増進に役立つ旨を表示できる。しかし機能性表示食品は医薬品ではないため、病気の治療や予防について言及することはできない。また、科学的な根拠に基づいていなければならないが、美白や肉体改造など、健康の維持・増進の範囲を超えた意図的な健康の増強を標榜するような表現もできない。
新しく機能性表示食品の制度ができたことにより、健康の維持・増進に役立つ保健機能食品の選択肢が広がりっている。しかしながら、選択肢が広がった分正しい情報をもとに正しく食品を選ぶことが必要だと考えられる。
[機能性表示食品の認められる表現]
容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
身体の状態を本人が自覚でき、一時的な体調の変化(継続的、慢性的でないもの)の改善に役立つ旨
[機能性表示食品の認められない表現]
「診断」「予防」「治療」「処置」など医学的な表現や、疾病の治療効果や予防効果を暗示させる表現(例:「糖尿病の人に」、「高血圧の人に」)
健康の維持および増進の範囲を超えた、意図的な健康の増進を標ぼうする表現(例:「肉体改造」、「増毛」、「美白」)
科学的根拠に基づき説明されていない機能性に関する表現(例:限られた免疫指標のデータを用いて、身体全体の免疫に関する機能があると誤解を招く表現、抗体や補体、in vitro試験やin vivo試験で説明された根拠のみに基づいた表現)
参考文献
「機能性表示食品」制度がはじまります! 消費者庁(PDF)、「機能性表示食品」って何? 消費者庁(PDF)、機能性表示食品制度の概要と現状 消費者庁(PDF)、日本健康・栄養食品協会「機能性表示食品の機能表現について」 公益財団法人日本健康・栄養食品協会
【参考資料】
(1)Q&Aでわかる病態別栄養管理 八野芳已著 2008年5月20日発行 ㈱医薬ジャーナル社
(2)新看護学3 専門基礎3 食生活と栄養 ㈱医学書院 2017.2.1 p.179-301
(3)栄養管理の国際基準を学ぶ | 公益社団法人 日本栄養士会https://www.dietitian.or.jp › career › ncp
(4)公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp ›
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