眼の周りを温めれば入眠が促進するメカニズムを解明 花王パーソナルヘルスケア研究所

 花王パーソナルヘルスケア研究所は22日、眼の周りを温めれば、入眠しやすくなる生理メカニズムを解明したことを明らかにした。
 これまで同研究所は、睡眠と密接な関係にある体温に着目し、眠りに入りやすくなるメカニズムの解明研究を進めてきた。その結果、眼の周りを適度な温度で温めると手や足の皮膚温が上がって体の熱が外に逃げる「放熱」促進の生理的変化が、人が眠りに入るときの体の状況と類似しており、入眠にポジティブな影響を及ぼす可能性が判明した。
 人が生きていく上で、睡眠は欠かせない。だが、多忙でストレスの多い現代社会では、約5人に1人が睡眠に悩んでいると言われている。こうした睡眠問題は労働生産性を低下させるだけでなく、うつ病や生活習慣病など、様々な問題に繋がっている。
 花王はこれらの問題解決策を模索するために、睡眠と密接な関係にある体温に着目した研究を重ねてきた。
 人は、覚醒している時には体の内部の温度を高く保って活動をしているが、睡眠時は体の内部の温度を下げて体と脳を休息させる。体の内部の温度を下げる仕組みとして、手足の皮膚温が高くなって体の熱を外へ逃がす放熱という現象があり、これにより眠くなる。
 赤ちゃんの手が温かいのは眠たいサインと言われるのもそのためで、手足の先が冷たくなり易い人は、手や足の皮膚温が低いままで熱が逃げにくいため寝つきが悪くなると指摘されている。
 花王は、睡眠悩みのある人を対象とした研究で、就寝時に眼の周りを適度に温めれば「寝つきがよくなる」など、自覚的・客観的な睡眠の質が改善するという結果をすでに報告している。
 その作用機序としては、リラクゼーション効果による心理的な影響および体温変化の生理的な影響が考えられる。
 そこで、これらを検証するために、健常な男性19名を対象に、眼を安全に適度な温度に温めることができるシートを用いた試験を実施。
 日中の時間帯に、同シートで眼の周りを温めながら実験室内のベッドで60分間安静と覚醒を保ち、体の内部の温度(直腸温)、手と足の皮膚温(手の甲、足の甲で測定)、体幹の皮膚温(鎖骨下で測定)、口頭での自覚的評価(温かさ、心地よさ、眠気)、脳波、心電図などを測定した。放熱の惹起は、体幹に対する手足の皮膚温の差(手足の皮膚温-体幹の皮膚温)が高くなることで測定できる。
 その結果、眼の周りを適度に温めることで、① 対象者は自覚的な心地よさや眠気を得た、②コントロール群(温める効果のないシートを眼周りに使用)に比べて、手足の皮膚温の上昇が大きかった③コントロール群に比べて、体幹に対する手足の皮膚温の差が大きくなり、体の熱を外へ逃がす放熱が促進されたーなどを確認。
 ①と③の変化は、人が眠りに入るときの生理的な体の状況と類似しているため、眼の周りを温めることは入眠にポジティブな影響を及ぼすものと考えられる。
 これらの結果と過去の研究から、眼の周りを適度に温めることで、リラクゼーション効果としての心理的な影響と生理的な影響の両方が睡眠に影響することが示された。
 これらの研究内容は、本年6月に名古屋で開かれた「日本睡眠学会第44回定期学術集会」で発表された。また、研究結果の一部は、英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナルScientific Reportsに掲載されている。

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