事業移管1年後の阪神配送センターでの試薬事業順調に推移   ケー・エー・シー

 実験動物の飼育管理、動物実験受託業務、研究用試薬提供、バイオ研究・技術者派遣などを主業務とするケー・エー・シーが、昨年7月に大日本住友製薬の子会社であるDSファーマバイオメディカル(DSPB)から研究用試薬事業の移管を受けて1年が経過した。売上高もほぼ倍になったが、今後は事業移管による相乗効果により、3年後8億円、5年後10億円を目指す。

阪神配送センター

 ケー・エー・シーの試薬事業部は、移管前、滋賀県栗東市の同社生物科学センターと鳥取県米子市のとっとりバイオフロンティアに事業拠点を有していたが、昨年6月、兵庫県尼崎市に阪神配送センターを開設。同センターにDSPBの2拠点の機能も合わせて統合した。
 阪神配送センターには、製品受発送を担当する業務グループと営業グループがあり、製品倉庫機能も有しており、東京支社の営業グループと連携して業務を遂行している。
 製品ラインナップでは、従来試薬事業部が提供してきた各種ヒト組織由来製品に加えて、移管製品として欧州最大の公的細胞バンク「ECACC」(European Collection Authenticated Cell Cultures)の各種樹立株細胞や微生物株、培地など約7000種以上の製品提供ができるようになり、製品ラインナップの幅が大きく広がった。
 自社製造品としてPOCA (Point-of-Cell-Assay)キットであるCACO2培養プレート(小腸吸収評価試薬)やHand1-EST(生殖発生毒性評価試薬)といった細胞製品の取り扱いも継続している。
 さらに、ロングセラー製品である「ブロックエース」(ブロッキング剤)、「MC-210」(マイコプラズマ除去剤)および「TC-Protector」(細胞凍結保護剤)の提供も順調に推移している。
 これらの製品は、品質の高さが評価され海外でも使われている。今後、これらを“made-in-Japan”製品として欧米やアジアでさらに販路を拡大する予定である。

細胞.jpTOP
細胞.jp商品群詳細画面


 また、製品以外に取扱い製品の検索や発注を容易に行えるウェブサイト「細胞.jp」の運営もDSPBより受け継いだ。これにより移管製品のみならず各種ヒト組織由来製品の検索や発注も行えるようになった。新製品情報も随時追加しており同サイトを介した問い合わせや受注が増加している。


 DSPBからは、製品のみならず、顧客も引き継いだことも見逃せない。従来はあまり接点がなかった、アカデミアや食品メーカーの研究者らが新たな顧客として加わり、顧客層の幅が広がった。
 DSPBからの新たな顧客には同社が以前から取り扱っている各種ヒト組織由来製品を紹介し、既存の顧客には取り扱いを開始した細胞や微生物株等を紹介することで、それぞれの顧客が各製品に興味を示すようになった。
 このように、事業移管によって移管製品の売上高がそのまま加わるだけではなく、それぞれの売上高が増える相乗効果を生んでいる。

大軽氏


 大軽靖彦氏(執行役員試薬事業部長・阪神配送センター長)は、「試薬事業部の売上高は、DSPBの事業移管によってほぼ倍になった」と明言。その上で、「試薬事業部事業を当社の一つの柱として成長させ、3年後には8億円、5年後には10億円の売上を目指す」と抱負を述べる。


 実際、試薬事業部では、これまで製薬・医療系企業中心であった顧客対象も、化粧品企業、食品企業、化学系企業等と幅広くなっているので、多様なニーズに応えるため新規提携先からの新製品の導入を継続的に進め製品ラインナップの幅を広げている。
 競合他社との差別化として、スピード感を含めた高品質な製品・サービスの提供にも余念がない。そのために定期的に海外提携先で製造監査を実施して製品の製造過程や品質を確認し、安定供給体制の構築に努めている。

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