ニルセビマブ P3試験で乳児のRSウイルス感染症を有意に予防 アストラゼネカ

 アストラゼネカは4日、ニルセビマブについて、P3相MELODY 試験において乳児への単回投与でRSウイルスに起因する診療を要した下気道感染(LRTI)の発生率をプラセボと比較して74.5%低下させ、有効性の主要評価項目を達成したと発表した。
 試験対象は、RSウイルス感染症流行シーズンを初めて迎えた健康な正期産児および後期早産児(在胎 35 週以上)。
 また、RSウイルス感染症流行シーズンを初めて迎える先天性心疾患(CHD)や慢性肺疾患(CLD)に罹患している乳幼児、および早産児を対象として安全性及び薬物動態を評価するP2/3相MEDLEY 試験において、有害事象は、CHD やCLD に罹患している乳幼児ではニルセビマブ投与群とシナジス(一般名:パリビズマブ[遺伝子組換え])投与群でそれぞれ71.2%、73.5%に発現、早生児では66.0%、65.0%に発現した。
 また、重篤な有害事象はそれぞれCHDやCLDに罹患している乳幼児では、19.2%、20.4%に発現、早生児では 6.9%、5.3%に発現した。
 この試験における投与後(151日目)のニルセビマブの血中濃度は、P3相MELODY 試験で観察された値と同等であり、この集団における予防効果が健康な正期産児および後期早産児と同様である可能性が高いことを示している。シナジスは、現在、RS ウイルスに対する重篤な下気道疾患の発症抑制の唯一の予防的手段である。
 ニルセビマブは、研究段階の長時間作用型抗体であり、1回の投与でRSウイルス感染症流行シーズンを初めて迎えるすべての乳児に対して予防効果を発揮するようデザインされており、P3相試験における一般乳児集団において RS ウイルスに対する予防効果を示した初めての予防薬候補である。
 MELODY 試験および第2b相試験の事前に規定された併合解析では、規定用量のニルセビマブ投与により、RSウイルス関連の入院が減少した。
 正期産児および早産児(在胎期間 28 週以上)では、プラセボ群の786例中21例(2.7%)にRS ウイルス関連の入院が認められたのに対し、ニルセビマブ群では1564例中9 例(0.6%)であった。
 投与後150日間の有効性の推定値は77.3% (95%CI50.3、89.7;P<0.001)であった。MELODY試験のみで観察されたRSウイルス関連の入院リスクについては、統計的に有意ではないものの数値的な減少が認められた(62.1%、95%CI:-8.6%、86.8%、p=0.07)。 ニルセビマブ群では、994例中6例(0.6%)の乳幼児がRSVによるLRTIで入院したが、プラセボ群では496例中8例(1.6%)の乳幼児であった。ニルセビマブの全体的な安全性プロファイルは、これまでに報告された結果と一致している。
 MELODY試験および第2b相試験においては、有害事象はニルセビマブ投与群とプラセボ群でそれぞれ、87.4%、86.8%に発現した。また、重篤な有害事象はそれぞれ、6.8%、7.3%に発現した。
 MELODY 試験の結果は、The New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された。また、MEDLEY 試験の詳細データもNEJM誌に掲載された。海外の一部の国では、規制当局への申請は、2022年上半期に始まっている。
 なお、現在、ニルセビマブが承認されている国はない。

◆Mene Pangalosアストラゼネカのバイオ医薬品研究開発部門エグゼクティブバイスプレジデントのコメント RSウイルスは、乳幼児の入院だけでなく、細気管支炎または肺炎などの下気道感染症の主要な原因である。
 これらのデータは、ニルセビマブの単回投与により、最初にむかえるRSウイルス感染症流行シーズンにわたりすべての乳幼児をRSウイルス感染から有意に保護できる可能性を初めて示した。
 規制当局と協力して、ニルセビマブをできるだけ早くお届けできることを期待している。

◆サノフィパスツールグローバル研究開発責任者のJean-François Toussaint氏のコメント
 我々は、3 つの主要なピボタル後期臨床試験を行い、全ての乳幼児を守るファースト・イン・クラスのRSウイルス予防薬を届ける研究に集中してきた。健康な後期早期産児と正期産児を対象としたP3相MELODY 試験の結果は、このゴールに向けた大きなマイルストーンへの到達を示している。
 我々、ニルセビマブが1回の投与でRSウイルス感染症流行シーズンを通じて全ての乳児の予防を行うことができる初めての予防薬となる可能性を示せたことを嬉しく感じている。

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