大日本住友製薬は11日、他家培養胸腺組織「リサイミック」について、FDAより米国初唯一の「小児先天性無胸腺症の免疫再構築」を適応症に承認を取得したと発表した。同承認を取得した連結子会社のエンジバント・セラピューティクス・リミテッドが、8日に公表したもの。
同剤は、生涯に1回きりの再生医療に使用される。小児先天性無胸腺症は極めて希な疾患であり、米国での毎年の推定患者数は約 17~24人である。小児先天性無胸腺症は、生まれつき胸腺が欠損しているため、深刻な免疫不全、生命を脅かす免疫調節不全および易感染性を引き起こす。小児先天性無胸腺症の治療は、支持療法しかなく、通常、2 歳または3歳までに亡くなる。
エンジバント社は、今回の承認取得により、希少小児疾患プログラムに基づき、FDA から優先審査バウチャー(Priority Review Voucher)を取得した。
同剤の臨床試験データは、1993年から 2020年までに患者が登録された10 の前向き単群非盲検試験を基に形成されており、105 人の患者の累計797人年のデータおよび最長25.5年間の生存観察データが含まれている。
治験審査委員会(IRB)が承認した10のプロトコールがあり、それぞれに従って、105人の患者が同剤の外科的移植を受け、有効性解析対象集団は95人、安全性解析対象集団は105人であった。生存率の観察期間は最長25.5年で、有効性解析対象集団では、Kaplan-Meier 推定生存率(95%信頼区間)は 1 年で 77%(0.670–0.841)、2 年で 76%(0.658–0.832)であった。
移植1年後に生存していた患者を対象とした場合、生存率の観察期間の中央値である10.7年時点で、Kaplan-Meier 推定長期生存率は94%であった。
臨床試験中、同剤移植後6、12 および 24 カ月に患者のナイーブT細胞のレベルを、フローサイトメトリーを使用して測定した。臨床試験に参加した患者のナイーブT細胞は、臨床試験開始時は非常に少ない状態であったが、ナイーブCD4+T細胞およびナイーブCD8+T 細胞は、1年目で再構築が開始され、2年目まで持続的に増加した。
同剤は、移植後 2 年間、時間の経過とともに感染症の罹患数を統計学的に有意に減少(p<0.001)させた。
◆リサイミックの臨床試験治験責任医師でデューク大学医学部小児科・免疫学教授のルイーズ・マーカート氏のコメント
本剤は、以前はほとんど希望が持てなかった患者さんの生存期間の延長を目的とした25年以上の研究成果である。我々は、生命の危機にある小児先天性無胸腺症の患者さんが、FDA が承認した治療法によって生存できるように、日々の研究プログラムに意欲的に取り組んできた。
◆エンジバント社 CEOのラシェル・ジャック氏のコメント
小児先天性無胸腺症の患者さんの家族は、あまりにも長い間、支持療法のみによる治療では悲しい結末に終わるという現実に直面してきた。FDAによる本剤の承認により、臨床試験だけではなく、本剤を切実に必要としている患者さんに提供することができる。
臨床試験に参加してくださった105 人の患者さんとその家族、さらにこの先駆的な再生医療研究プログラムに貢献してくださったすべての方々に深く感謝したい。