武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長 CEOは11日、オンラインによる2020年度決算説明会で会見し、「新型コロナ感染症パンデミックの中でも新たな働き方を推進し、安定的な事業活動を維持して通期のマネジメント・ガイダンスを達成した。30%の利益率は非常に力強い」と強調。
さらに、「グローバルブランド 14製品の売上収益成長、早期実現したコストシナジーが、力強い利益率と強固なキャッシュ・フローに貢献した」と評価し、「2021年度は売上収益成長のさらなる加速が見込める」と断言した。
2020年度の売上収益は3兆1978億円、Core営業利益 9679億円、財務ベース営業利益5093億円、財務ベース当期利益3760億円。
業績ハイライトとしては、グローバルブランド14製品(ENTYVIO対前年比 26.2%増、TAKHZYRO 同30.0%増、免疫グロブリン同15.7%増)の実質的な売上収益が、対前年比16.0%増となりマネジメント・ガイダンスを達成。
また、早期に実現されたコストシナジーにより、23 億米ドルの目標を1年前倒しで達成した。ノン・コア事業等の売却益と買収関連費用の減少により、財務ベースの当期利益は対前年比約 750%の成長となった。
加えて、強固な営業活動によるキャッシュ・フローおよび事業等の売却による譲渡益により、1兆2378 億円のフリー・キャッシュ・フローがレバレッジ低下を推進、純有利子負債/調整後EBITDA 倍率が 3.2 倍に改善した。
革新的なパイプラインでは、「11のウェーブ1新規候補物質」、「約30のウェーブ2新規候補物質」、「投資比率:社内約40%/社外約60%」、「患者集団の明確化/高い革新性」、「より小規模な試験/より低コスト/より長い独占期間の可能性」が挙げられる。
2021年の研究開発費は、対前年比660億円増の5220億円で、5-6件のウェーブ1新規候補物質をFDAに申請し、4つの承認を得る可能性があり、ウェバー氏は「パイプラインは進捗し、転換点となる年を迎える」と強調した。
新型コロナワクチンにも言及し、「ノババックス社から導入したTAK-019は、2億5000万回分で、そのうち国内は1億5000万回分で合意、残りの1億回分は他の所で使用する」と説明した。
TAK-019は、国内における開発、製造、商業化に関してノババックス社と提携しており、国内でのP1/2試験を本年2月に開始し、被験者登録を完了。2021年度下期に国内で初回分の供給開始を目指す。
一方のモデルナ社から導入したTAK-919は、「日本政府、モデルナ社、当社の3者間で、9月までに国内で5000万回分の輸入・供給に関して合意している。加えて、現在、新たに5000万回の追加供給を協議している」と報告した。
TAK-919は、本年3月に国内での申請、良好な国内臨床試験データを5月に提出し、2021年度上期に国内での供給開始を予定している。
本年4月1日にジャパン ファーマ ビジネス ユニット(JPBU)プレジデントに就任した古田未来乃氏は、「国内も、グローバルに展開しているオンコロジー、稀少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス、消化器系疾患(GI)の疾患領域へのシフトにフォーカスしている」と断言。その上で、「薬価改定など厳しい環境下にあるが、アンメットメディカルニーズの領域は市場も伸びている。当社のグローバルな疾患領域への集中により国内業績も伸ばしたい」と抱負を述べた。