大脳でのAβ蓄積は脳外排出の緩やかさが要因 同志社大学生命医科学部が解明

　同志社大学大学院生命医科学研究科の大学院生アラム シャヌア氏と舟本 聡准教授らは6日、小脳ではアミロイドβタンパク質（Ａβ）が盛んに脳の外に排出されているためＡβ蓄積が少なく、大脳ではこの排出が穏やかなためＡβが蓄積することを解明したと発表した。
　滋賀医科大学などとの共同研究で明らかにされたもの。同研究成果により、大脳でもＡβ排出を盛んにすれば、アルツハイマー病予防への効果が期待される。
　アルツハイマー病は、主要な認知症で、脳で記憶を司る大脳と呼ばれる部位が萎縮する。これには、大脳でのＡβの蓄積が引き起こす神経細胞死が関係していると考えられている。
　一方で、同じ脳でも小脳と呼ばれる部位ではＡβの蓄積が少なく、脳組織の萎縮などの異常がほとんど認められない。なぜ大脳にＡβの蓄積が多く小脳にはそれが少ないのかは、長く謎に包まれていた。小脳には、アルツハイマー病にならない仕組みがあるのかもしれない。
　この謎の解明に取り組んだアラム氏らは、大脳でＡβが多く蓄積している原因として、単にＡβが大脳で多く作られ小脳では少ないためだと予測し、その確認のために、マウスの大脳と小脳で作られるＡβ量を比較した。その結果、予想に反して大脳と小脳ではＡβが同程度に作られていた。　次に、脳内でＡβを貪食するミクログリアという細胞を調べてみると、Ａβを取り込んでいるミクログリアの数は大脳と小脳で違いがなかった。大脳でＡβ蓄積が多く小脳で少ないのは、Ａβの産生や分解とは関係が無いことが判明した。
　そこで、アラム氏らは、大脳と小脳でＡβが拡散する様子について調べてた。マウスのそれぞれの脳の部位にＡβを注入して、その分布を観察すると、小脳に注入したＡβが、大脳に注入した場合と比較して約５倍も広がり、数日後にはほとんどなくなっていることを発見した。
　一方、大脳に注入したＡβの分布は数日経っても変化がなかった。さらに、小脳から無くなったＡβを探してみると、その一部は首にあるリンパ節に多く認められた。
　これらの発見は、小脳ではＡβが盛んに脳の外に排出されているためＡβ蓄積が少なく、大脳ではこの排出が穏やかなためＡβが蓄積する傾向にあることを示している。これらのことから、大脳でもＡβ排出を盛んすれば、アルツハイマー病予防に効果が期待できることが判明した。
　同研究成果は、専門雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に2021年1月8日に発表される（電子版は12月16日に発表）。