
日本生活習慣病予防協会(代表・和田高士氏)は、「血糖値・ヘモグロビンA1cに関する意識調査(2026年9月)」を医師331人、一般生活者310人にを対象にWEBで実施した。
その結果、糖尿病リスク把握指標において、医師は「ヘモグロビンA1c」、生活者は「血糖値」を重視しており認識ギャップが生じていることが明らかになった。
「血糖値」が採血した瞬間の血糖の量を示す値で、1日の中でも変動する指標であるのに対し、「ヘモグロビンA1c」は、過去1~2か月の血糖の状態を示す数値である。すぐには変動しないため“血糖の通信簿”とも呼ばれている。
調査の結果、糖尿病のリスクを把握するうえで、医師と生活者の間に大きな認識のギャップがあることが判った。意識調査結果の詳細は、次の通り。
【キーワード】血糖値の落とし穴 / 血糖の通信簿『ヘモグロビンA1c』
医師はヘモグロビンA1c、生活者は血糖値「より見てほしい/より重視する」指標

図1
まず浮かび上がったのは、糖尿病リスクを把握する上での、医師と生活者の認識ギャップである(図1)。医師に「健康診断で、患者により見てほしいのはどちらか」を尋ねたところ、87.0%がヘモグロビンA1cと答えた。一方、生活者に「糖尿病のリスクを把握する上で、より重視するのはどちらか」を尋ねると、68.7%が血糖値を重視すると答えた。
ヘモグロビンA1cは医師の78.2%が「非常に重要」なのに、生活者の知名度はワースト

図2
では、なぜこのような認識ギャップが生じているか、健康診断で測定される各指標について調査したところ、その背景には、ヘモグロビンA1cが生活者に十分知られていないという実態が見えてきた(図2)。
医師に「各指標が健康管理の観点でどのくらい重要か」を尋ねたところ、78.2%がヘモグロビンA1cを「非常に重要」と回答した。この割合は血圧に次いで2番目に高く、血糖値は64.4%で5番目であった。
一方、生活者には「各指標をどの程度知っているか」を尋ねた。その結果、ヘモグロビンA1cを「知らない」と回答した人は40.3%で、全指標の中で最も高い割合となった。血糖値を「知らない」と回答した人は2.3%にとどまり、認知度の差は明確である。
【生活者】意味まで知っている人の7割は、ヘモグロビンA1cの方が重要と回答

図3
さらに、図2で「ヘモグロビンA1cを知っている」と回答した人を分解してみると、どの程度理解しているかによって、糖尿病リスクの把握において重視する指標にも大きな違いが見られた。
「意味まで知っている人」の70.8%はヘモグロビンA1cを重視すると回答した一方、「見聞きした程度の人」でヘモグロビンA1cを重視と回答した人は29.2%にとどまっている(図3)。
この結果から、ヘモグロビンA1cの認知を広げるには、名称だけでなく、血糖値との違いや指標としての意味まで伝えることが重要であることが伺える。
【医師】ヘモグロビンA1cが重要なのは過去1~2か月の血糖状態がわかるから

図4
ではなぜ、医師はヘモグロビンA1cを重視するのか、その理由を複数回答で選んでもらった(図4)。
最も多かったのは「過去1~2か月の血糖状態を反映するため(82.1%)」、続いて「検査当日の食事の影響を受けにくいため(62.1%)」「糖尿病の診断基準に用いられているため(47.6%)」であった。
ここで改めて、血糖値とヘモグロビンA1cの違いを確認しておきたい。「血糖値」は採血をしたその時点での血液の中にどれだけ血糖があるかを示す指標である。エネルギー源である血糖は、食事をした直後に上がるが、糖尿病がなければ時間とともに空腹状態の値に戻る。加えて食事をするとまた上がる。
こうしたことを繰り返すため、1日のうちでも数値は変動する。糖分の多い飲み物などを摂取することで一時的に血糖が急上昇する「血糖値スパイク」がみられる。
糖尿病になるリスクが高い人でも、食後10時間以上あけた「空腹時血糖値」は低く測定されることもあり、血糖値だけでは糖尿病の「予備群」を見逃してしまう可能性も指摘されている。まさに「血糖値の落とし穴」というわけだ。
一方、「ヘモグロビンA1c」は、過去1~2か月の血糖の平均状態を反映し、1日のうちいつ測定してもほとんど変動しない数値である。特に、空腹時血糖に異常がなくても食後の血糖値が長時間高くなるような人にとって、有用な検査項目だす。
我々の血液の中では、取り込まれた糖のうち一部が赤血球の中に入り、ヘモグロビンと結合する。糖と結合したヘモグロビンがどれだけの割合で存在しているかを示すのがヘモグロビンA1cである。
一度結合すると、その赤血球が寿命を迎えるまで、蓄積される。そのため、血液中に糖が多い状態が長く続く人ほど、糖と結合したヘモグロビンの割合が高くなり、ヘモグロビンA1cが高くなる。
【生活者】87.5%が「血糖値でリスクを十分に把握できる」と回答

図5
ところが、生活者調査では、血糖値を知っている生活者のうち、血糖値の測定やその数値によって、糖尿病予備群などのリスクを十分に把握できると思う人が87.5%に上った(図 5)。
血糖値が身近な指標であるからこそ、「血糖値を見ていれば大丈夫」と受け止められやすいことも、今回の“血糖値の落とし穴”といえそうだ。
内訳を見ると、「非常にそう思う」は20.5%、「そう思う」は67.0%で、「そう思わない」「全くそう思わない」は合わせて12.5%に留まった。一方、医師調査では、ヘモグロビンA1cを重視する理由として「血糖値では「予備群」を見落としてしまうため」を挙げた医師が36.4%いた(図4)。
大半の生活者が「十分に把握できる」と感じる血糖値。その実感と、医師が挙げる「予備群の見落とし」との間には、隔たりがある。
【医師】災害時の避難生活では、血糖コントロールの重要性が高まると医師の9割が回答

図6
また今年は、7月に発生した令和8年熊本地震や、各地で発生している豪雨災害など、大規模な災害が複数発生している。災害時の避難生活では、食事の偏りや運動量の低下、生活リズムの乱れなどから血糖コントロールが難しくなることも考えられる。
同調査では、避難生活における血糖コントロールの重要性に関しても医師を対象に尋ねた。その結果、9 割の医師が重要性が高まると回答した(図6)。
◆調査結果を踏まえて
和田高士日本生活習慣病予防協会代表、東京慈恵会医科大学客員教授のコメント
今回のアンケートにおいて、健康管理上の重要性として、医師が血圧の次にヘモグロビンA1cを挙げたこと、これら以外の順位も、医師の立場からすると図星であった。一方、生活者対象の調査結果では、ヘモグロビンA1cが最下位であった。
その理由は、健康診断では、糖尿病検査としては血糖かヘモグロビンA1cのいずれか実施でよいこと、空腹状態が必要な中性脂肪も同時実施するなら採血側が血糖を選択してしまうこと、その結果、生活者にヘモグロビンA1cを認知される機会が減るためと考えられた。
ヘモグロビンA1cは変動する血糖と異なり、過去1~2か月の血糖平均状態を反映するため、糖尿病状態を容易に評価でき、健康管理には必須の血液検査項目である。

