国内最大級の産業医紹介サービスを実施するドクタートラスト(本社:東京都)は、同社に登録している産業医に新型コロナウイルスアンケート調査を行い、317事業場で働く産業医から得た回答の分析結果を発表した。同アンケート調査は、感染症対応における産業保健の実情把握と、今後の産業保健活動に活かせる情報発信を目的としたもので、本年4月29日~6月5日の期間に、アンケートフォームURLを全国の同社に登録する産業医にメール送信した。
アンケート結果の概要は、次の通り。
①衛生委員会、産業医面談の実施状況
衛生委員会や産業医面談の実施状況を聞いたところ、32%の事業場が本来の業務形態である対面対応を継続し、27%の事業場がテレビ電話など新たな方法で実施を行った。一方で、実施を見送った事業場も28%あった。
◆医師の声(一部抜粋)
・人数を絞って、短時間対面
・部屋の窓を開け2ⅿあけて対面で面談、または別室に入ってもらい電話面談で行っている
・産業医も参加してメール審議で開催
・予定されていた面談は希望者以外はリスケジュールのうえ、延期になっている
②職場巡視の実施状況
職場巡視は41%の事業場が実施を見送ったものの、32%の事業場では、継続して実施しいていたことが判明した。
◆医師方の声(一部抜粋)
・巡視先の部署で新型コロナ感染対策として3密の防止が適切にできているか否かを確認している
・休業している部署は中止
③事業場では新型コロナウイルス感染に対してどういった対策が行われたか
風邪症状のある際の出勤停止や手洗いなど、自己管理でできることを取り入れている事業場が80%以上見られた。その一方で、「人と人の間隔を2m保つ」ソーシャルディスタンスの取り組みを行う事業場はおよそ31%に留まった。
◆医師の生の声(一部抜粋)
・手洗いや消毒をしない手で顔にふれないこと、鼻から下の身体を僅かな間でも冷やさないことを励行
・机と机の間に遮蔽板を設置
・3月より一部例外を除いて全員在宅勤務の方針
④新型コロナウイルス感染症に関連して、事業場や従業員からどんな相談が増えたか
「衛生的な相談」や「健康に関する相談」という、感染症に関わる相談が6割を超えた。
◆医師の生の声(一部抜粋)
・コロナへの知識と体調不良の対応をどうしたらいいかの相談
・感染防止のために従業員一人ひとりが注意すべき点について
・COVID-19感染の最近の知見について
⑤産業医として困っていること
医師の生の声を聞くと、「感染症対策が事業場の手腕に委ねられている」、「常態化していた産業医の働き方を変更せざるを得ない状況がある」などが多数を占めた。
医師方の生の声(一部抜粋)
・人事担当者によって不調者対応などに関する課題解決力のばらつきが大きい。オンライン化という発想自体がない企業もある
・連携がむしろ密になったと感じている
・大きく困っていることはないが、ウェブ面談では込み入った話がしづらく、産業医はいらないのではないかと不安になる
・産業医として力を発揮すべき時に、出社禁止で、何もできなかったことが、残念
⑥今後産業医活動を継続するにあたり希望すること
多くの産業医が、ガイドライン作成やオンライン対応などの体制整備を求めている。
医師の生の声(一部抜粋)
・医療現場では、遠隔診療が保険診療で認められているので、産業医においても遠隔診療での活動で済ませて欲しい。臨床医としては産業医の契約先へのコロナ感染拡大防止の観点からも訪問は避けたい
・感染対策などの職場での対策には特に産業医の役割が大きいと感じている。職場巡視などで換気や消毒の必要性について意見することもある。職場で集団感染が起きた際には、企業として安全配慮義務での責任が問われる可能性があることを十分認識していただく必要がある
・医療専門家としての産業医をもっと活用してほしい
これらのアンケート結果の分析による主な考察概要として、
・約3割の事業場がテレビ電話などを活用した方法で衛生委員会や産業医面談を実施
・職場巡視の実施を見送った事業場が見られた
・産業医への相談内容としては、新型コロナウイルス関連が急増
・多くの産業医が、ガイドライン作成やオンライン対応などの体制整備を求めているーなどが明らかになった。
より詳しい内容は、https://doctor-trust.co.jp/pdf/2020/coronaquestionnaire.pdfのサイトで。