中外製薬は24日、抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「アバスチン(一般名:ベバシズマブ、遺伝子組換え)について、神経線維腫症II型(neurofibromatosis type 2:NF2)に対する適応拡大の申請を8月29日に厚労省に行ったと発表した。
今回の適応拡大申請は、NF2に対し、アバスチンの有効性および安全性を評価した医師主導の国内P2床試験(BeatNF2試験)成績に基づくもの。
BeatNF2試験(jRCT2080224914)は、遺伝性の難病であるNF2を対象に、アバスチンの有効性と安全性を評価した医師主導の多施設共同国内P2I相プラセボ対照二重盲検無作為化臨床試験である。同験では、62名の患者をアバスチン投与群およびプラセボ群に分け、治療開始24週時点の聴力改善効果を比較した。24週以降、48週までは両群ともアバスチンの投与が行われた。
主要評価項目は「治療開始24週時点でのベースラインとの比較による、最高語音明瞭度による評価に基づく聴力改善患者の割合」。副次的評価項目は12、36、48週時点の最高語音明瞭度、腫瘍体積、純音聴力検査、聴性定常反応、NF2重症度スコア、聴力改善後に再度悪化した患者に対する再治療の効果等であった。
NF2は、左右両側に聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)ができる常染色体優性の遺伝性疾患です。聴神経鞘腫による症状が多く見られ、難聴・めまい・ふらつき・耳鳴などがある。その他にも脊髄神経鞘腫の症状として、手足のしびれ・知覚低下・脱力などを惹起する。
聴神経鞘腫に対しては経過観察、手術、放射線治療が行われる。良性腫瘍でほとんど成長しない場合もあるが、症状の発生や腫瘍の成長が明らかな場合、手術により腫瘍を摘出するケースもあり、長期的にみると予後に影響を及ぼす場合がある。手術による聴力の温存は難しく、術後に神経障害の合併を伴うリスクも存在する。
海外報告によると発生率は2万5000〜6万人に1人の希少疾患であり、国内で2009〜2013年に臨床調査個人票を提出した人は約800人であった。多くは10~20代で発症する。