HIV陽性者半数が医療従事者との信頼関係高いも自分の声届かないと感じている ヴィーブヘルスケアが患者調査

 塩野義製薬、GSK、ファイザーが資本参加するグローバルなHIV領域のスペシャリスト・カンパニーであるヴィーブヘルスケアは17日、HIVと共に生きる人々(HIV陽性者)を対象としたPositive Perspectives 3 調査(PP3)の中間解析データを発表した。
Positive Perspectives 調査は、HIVと共に生きる人々を対象としたヴィーブヘルスケアが主催する国際的な横断的調査シリーズで、世界中のコミュニティ代表者と共同で実施されている。この調査データは、公衆衛生に関するメッセージの認知向上、重要なコミュニティ活動の推進、さらにはHIVケアの改善に貢献してきた。
 今回の第3回目の調査では、29か国からHIV陽性者、HIV患者支援団体の関係者、HIV陽性の若者を含む3000人以上が参加予定である。調査結果は、HIVと共に生きる人々の声をさらに広く届けるために活用され、医療従事者や医療制度内の関係者に向けて、治療・ケア・成果の改善を目指したコミュニケーションの強化に役立てられる。
 初期の結果では、医療従事者(HCP)を信頼する人の割合が高い一方で、コミュニケーションのギャップが存在することが示されている。多くの人は、「医療従事者に話を聞いてもらえないと感じることがある」と回答し、現在の抗レトロウイルス療法(ART)について「一緒に決定を下さなかった」と回答した。
 ARTレジメンに満足している人は、意図的に投薬をスキップする可能性が低く、全体的な健康状態が良好であると報告する傾向がみられた。調査の詳細は、次の通り。

◆共同意思決定(Joint Decision-making)は、治療およびケアに対する満足度の向上と関連していた: 調査対象者の80%(n=558/698)はHCP対して高い信頼を寄せていると回答した一方で、47.5%(n=331/698)は「医療従事者に自分の声が届いていないと感じることがある」と答え、34.8%(n=243/698)は「新しい治療法を検討する際に共同で意思決定をしていない」と述べた。
 これらの結果は、患者と医療従事者の対話を強化し、協働的な意思決定を促進する必要性を浮き彫りにしている。

◆治療満足度が高いほど、HIV陽性者の精神的、身体的、性的、および全体的な健康状態が良好である傾向がみられた:
 抗レトロウイルス療法(ART)に満足している人は、意図的に服薬をスキップする可能性が低く、全体的な健康状態が良好であると報告する傾向がある。大多数の人がARTレジメンに満足していると答えた一方で、治療に満足している人々は、一貫して自己評価による健康状態や最適な服薬遵守の指標が良好であると報告している。
 だが、大多数の人がARTに満足していると答える一方で、約半数が感情的な疲労、スティグマ(偏見)に対する懸念を抱いていると報告している。ARTの長期的な影響に対する懸念(53%, n=374/698)、治療に関連する体重増加(48.6%, n=339/698)、および毎日の服薬によってHIVを思い出させられることへの不快感(43.2%,
n=301/698)について多くの人が懸念を示した。
 参加者の3人に1人が過去12か月間に服薬を1回以上忘れたと答えており、4人に1人は意図的にARTの服薬をスキップしたと報告している。意図的な服薬スキップは、50歳以上の成人においてより一般的であった。これらのデータは、ARTレジメンを選択する際に患者の希望や懸念を考慮することの重要性、そして継続的な見直しの必要性を浮き彫りにしている。

◆「検出限界値以下=感染しない(U=U)」の知識と信頼には依然として改善の余地がある:
 調査対象者の93.7%(n=654/698)は、U=U(治療により血液中のHIV-RNA量が検出不能な状態であれば、性行為によってHIVが他者にうつることはない)という概念を認知していると回答した。 だが、そのうちU=Uを「信じている」と答えた人は半数にとどまりまった。U=Uを信じている人は、他者とHIVステータスを共有する傾向が高く、HIVが人間関係に影響を与えたと報告する傾向が低いことがわかっている。これらのデータは、信頼できる情報源を通じてU=Uのメッセージをより広く普及させる必要性を強調している。

◆ネカ・ヌウォコロヴィーブヘルスケア患者エンゲージメント責任者のコメント
 約10年前に開始されたPositive Perspectives調査は、HIVと共に生きる人々の考え方、感じ方、生活に焦点を当てた数少ない国際調査の一つである。その最新の調査結果は明確で重要なメッセージを伝えている。
 医療従事者への信頼は依然として高いものの、自分のケアに関する意思決定から排除され、自分の声が届いていないと感じている人があまりにも多く存在している。このようなコミュニケーションギャップは、HIVと共に生きる人々が自らのケアや治療の選択に関与したいと望んでいる今、特に懸念されるものであり、患者と医療チームとの間に、より開かれた協働的な関係を築く必要性を改めて浮き彫りにしている。

◆デビッド・ハーディ南カリフォルニア大学ケック医科大学(USC)ストリートメディシン部門 家庭医学 臨床教授のコメント
 HIV治療が進化・改善を続ける中で、HIVと共に生きる人々と医療従事者との間に強固なパートナーシップを築くことは、これまで以上に重要になっている。
 PP3のデータは、医療従事者が患者とウイルス抑制だけにとどまらない意味のある対話を行う必要性を浮き彫りにしている。こうした対話は、HIVと共に生きる人々が自らのニーズ、希望、目標、自信を持って医療従事者に伝えられるようにするものである。 “検出限界値以下=感染しない(Undetectable = Untransmittable)”といった重要な概念を HIV陽性者が正しく理解することは、このような対話を実現するために不可欠であり、HIVケアの質を高め、HIVと共に生きる人々がより健康で充実した生活を送れるよう支援することにつながる。

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