デシフェラ社買収契機に成長戦略集約し持続的成長目指す 小野薬品

滝野氏

 小野薬品は5日、サステナビリティ説明会を開催し、滝野十一社長COOが、「デシフェラ社の買収による欧米自販体制の獲得を契機に見直したマテリアリティ(成長戦略)をしっかりと遂行し、人々の健康への貢献、社会と企業の持続的成長を実現したい」と決意表明した。
 説明会では、女性管理職比率も報告され、現状7.3%から2026年10%、2030年20%とする目標値や、「ロールモデルとなり得る女性人材の採用・登用に注力していく」戦略が強調された。
 小野薬品は、グローバル展開を加速するため、ONOグループの米欧での開発・販売機能を昨年買収したデシフェラ社に集約し、グローバルスペシャルティファーマへの成長実現を目指している。
 その実現のため同社は、マテリアリティをアップデートし、「成長戦略」、「成長戦略推進のための基盤」、「持続可能な社会の実現」の大きなカテゴリーの下、これまで18個のマテリアリティを9個に集約し、選択と集中の明確化行った。アップデートされた9個のマテリアリティは、次の通り。
◆成長と戦略:①パイプラインの強化、②グローバル事業の拡大と加速、③製品価値最大化、④事業ドメインの拡大

◆成長戦略推進のための基盤:⑤デジタル・ITによる企業変革、⑥人的資本の拡充

◆持続可能な社会の実現:⑦地域環境の保全、⑧社会的信頼の向上、⑨ガバナンスの強化

 滝野氏は、②について「デシフェラ社の買収により欧米自販体制を獲得したため、従来の‟欧米自販の実現”から‟グローバル事業の拡大と加速”にアップデートした」と説明した。
 その具体策として、「キンロック(消化管間質腫瘍治療剤)、ロンビムザ(腱滑膜巨細胞腫治療薬、FDAが本年2月14日に承認)をより多くの患者にグローバルに速やかに届けて行く」と明言。加えて、「来年に向けてはチラブルチニブ(中枢神経系原発リンパ腫)の米国での上市を計画しており、グローバルスペシャルティファーマへの成長をよりスピーディかつ着実に進めて行きたい」と訴求した。

奥野氏

 奥野明子社外取締役(甲南大学経営学部教授)も、「デシフェラ社の買収は大きなインパクトがあった。当社は現在、PMI(M&A後の統合プロセス)にかなり大きなエネルギーを注いでおり、これがうまく行けば大きな成功になる」と言い切った。
 さらに「ESGの中でも環境についての取組みは外部機関からも高い評価を得ている。ガバナンスも熱心な取り組みにより年々改善していると実感している」と紹介した上で、「女性活躍推進は厳しい現状にあり、女性管理職比率目標(現状7.3%から2026年10%、2030年20%)も十分とは言えない」と指摘した。その要因を「伝統的な日本企業の組織文化を変えるために時間を要している」と説明し、「地道な取組みをコツコツ実施しており、急激な進歩はないが基盤となる組織文化は変化しつつある」現状を報告した。
 奥野氏は、女性活躍推進の具体策として、「役員レベルでの女性登用を少しでも早く進めて、ロールモデルを確立する必要がある」と力説。人財育成についても、「尖った人財・異質な人材を受け入れ、活かす組織作りをトップから示すことが重要である」との考えを示した。

辻中氏

 辻中聡浩副社長執行役員/経営戦略本部長は、女性管理職の採用・育成・登用へのロードマップとして、「自ら成長するサイクルを作るトレーニング」、「他社の女性管理職・社員との交流」、「社内メンター制度」を列挙。女性管理職登用においては、「役員が、女性管理職一歩手前の人が、何を躊躇してどんな思いをしているのかを把握し、その気付きを活かすことがポイントになる」と強調した。
 人的資本の拡充に向けた人財戦略については、「専門人財の必要数(706)輩出に向けて、キャリア採用・育成を推進している」と報告し、「2026年度までに必要数を上回る専門人材が確保できる」見込みを示した。
 辻中氏は、デシフェラ社とのミッションステートメント浸透のための施策にも言及し、「‟タウンホールミーティング”、‟教育とトレーニング”、‟実践の促進”のトライアングルを実践していくことで、互いの文化を共有し、深い相互理解を獲得してPMIを成し遂げたい」と力強く語った。


      

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