リリーは29日、オンボー(ミリキズマブ)について、米国FDAが、中等症から重症の活動期クローン病の成人患者の治療薬として適応追加承認したと発表した。オンボーは、米国では2023年10月に中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎(UC)の成人患者のファースト・イン・クラスの治療薬として承認されている。 今回の承認取得により2種類の炎症性腸疾患(IBD)の適応を有する薬剤となった。
同剤は、腸管の炎症に大きく関与する特定のタンパク質であるインターロイキン-23p19(IL-23p19)を標的とすることで、消化管内の炎症を軽減する。クローン病の生物学的製剤としては15年以上ぶりに、承認時点で初めて2年間にわたる第Ⅲ相の有効性データを開示した。
今回の承認は、中等症から重症の活動期クローン病の成人患者を対象としたP3相 VIVID-1試験の良好な結果に基づくもの。同試験には、ステロイド薬、免疫調整薬(アザチオプリン、6-メルカプトプリンおよびメトトレキサート)および/または生物学的製剤(TNF阻害薬、インテグリン受容体拮抗薬)による治療で効果不十分、二次無効あるいは不耐性を示した患者が参加し。
VIVID-1試験は、オンボーの無作為化プラセボ対照試験である。プラセボ群の患者のうち、12週時点で患者報告アウトカムによる臨床的改善を達成しなかった患者(プラセボ群の40%)は、オンボーによる治療に切り換えられた。VIVID-1試験の主要評価項目はいずれも達成された。なお、52週時点での各有効性指標に対する成績は次の通り。
・ 1年時点のクローン病活動指数(CDAI)による臨床的寛解の割合
1年時点の臨床的寛解が認められた患者の割合は、オンボー群では53%、プラセボ群*では36%であった(p<0.001)。
・ 1年時点の内視鏡的改善の割合
1年時点に腸管の粘膜治癒を認めた患者の割合は、オンボー群では46%、プラセボ群*では23%であった(p<0.001)。さらに、3ヵ月時点(12週時点)で内視鏡的改善(内視鏡検査により腸粘膜の治癒を認めることと定義)を認めた患者の割合は、オンボー群では32%、プラセボ群では11%であった(p<0.001)。
なお、プラセボ群には、12週時点でオンボーに切り換えられた患者が含まれている。
オンボーにおいて、中等症から重症の活動期クローン病の成人患者を対象に、最長3年間にわたりオンボーの有効性と安全性を評価する非盲検延長(OLE)試験であるVIVID-2試験も実施中である。VIVID-1試験の1年時点で内視鏡的改善を達成した患者のうち、その後1年間(治療継続期間は2年間)にわたり内視鏡的改善を維持した患者の割合は80%以上であった。
また、VIVID-1試験の1年時点で臨床的寛解および内視鏡的改善を達成した患者のうち、その後1年間(治療継続期間は2年間)にわたり臨床的寛解を維持した患者の割合は約90%であった。
VIVID-1とVIVID-2の両試験とも、中等症から重症の活動期クローン病患者におけるオンボーの全般的な安全性プロファイルは、UC患者で認められた安全性プロファイルと概ね一致していた。オンボーの投与により比較的高頻度で認められた副作用(VIVID-1試験の導入時から第52週時点までの発現割合が5%以上でプラセボ群より発現割合が高い副作用)は、上気道感染、注射部位反応、頭痛、関節痛と肝酵素値上昇であった。
リリーは、EUや日本など世界各国においてミリキズマブのクローン病治療薬としての適応追加申請を提出しており、今後 さらなる国や地域での申請を予定している。潰瘍性大腸炎の治療薬としては、オンボーは現在、世界44ヵ国で承認を取得している。
◆Michael Osso Crohn’s & Colitis Foundationプレジデント兼CEOのコメント
患者さんの日常生活におけるクローン病の負担は非常に大きい。今回の承認は、新たな治療選択肢を得るクローン病の成人患者さんにとって大変意義がある。
◆Marla Dubinsky(マウントサイナイ・アイカーン医科大学マウントサイナイ・クラヴィス小児病院スーザン&レナード・フェインステインIBD臨床センター共同ディレクター、小児消化器栄養科チーフ、医師)のコメント
クローン病患者さんの多くは、使用可能な治療薬を複数試した経験を持つが、依然として疾病コントロールに役立つ治療選択肢を探し求めている。今回のオンボーのFDA承認によって、クローン病の成人患者さんは、他の治療薬を試したものの効果が得られなかったり効果が減弱したりした経験があっても、寛解と粘膜治癒を長期間にわたり維持できる可能性のある選択肢を得ることができた。
◆Daniel M. Skovronskyリリーチーフ・サイエンティフィック・オフィサー兼リリー・リサーチ・ラボラトリーズプレジデント(医学博士)のコメント
本剤が、オンボーがクローン病と潰瘍性大腸炎の治療薬として承認されたことで、より多くの患者さんが長期にわたって疾病のコントロールをすることができ、苦しめられている症状に対応できる治療選択肢がお届けできるようになった。今回の承認は、ケアの向上と、患者さんの治療アウトカムの改善を目標に取り組むリリーの活動を反映している。