精神疾患の親をもつ子供の学校での調査結果発表  大阪大学大学院蔭山正子准教授ら

担任教師は子供の小さなサイン見逃さず話をよく聞く重要性の認識を

 大阪大学大学院の蔭山正子准教授らの研究グループは20日、「精神疾患の親をもつ子ども」の学校での相談状況などの調査結果を公表した。
調査結果では、精神疾患の親をもつ子どもたちは、家庭内でのおとなの喧嘩、極度の不安、心身の不調と、子ども自身への支援が必要であるにもかかわらず、小学生の91.7%が相談経験なしと回答。それでも相談しやすかった大人は担任の先生であったため、担任の教師が「子供の小さなサインを見逃さず早期発見する」重要性が浮き彫りになった。
 こうした体験をもつ子供の実態を把握した調査がほとんど存在しない現段階において、これからの学校での支援のあり方を検討するにあたり、同調査結果は基礎資料として活用できる貴重なデータである。
 わが国の精神障がい者数は、厚労省平成29年患者調査によると419万人を超え増加傾向にあり、その親に育てられる子供が心身ともに健康的に成長するためには、親だけでなく子供への支援も必要とされている。
 今回、調査を行ったのは、大阪大学大学院医学系研究科の蔭山正子准教授、埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科の横山恵子教授、精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)メンバーによる研究グループ。
 調査は、「こどもぴあ」(精神疾患のある親に育てられた子どもの立場の人と支援者で運営しているピアサポートグループ、2018年1月設立)の会に参加したことのある240人を対象に、小・中・高校時代の体験、学校での相談状況、子供のころに認識した教師の反応、学校以外での援助などをウェブ上のアンケート形式で質問し、20歳代から50歳以上まで120人から回答を得た。

 ◆調査結果データの概要は次の通り。
・ヤングケアラーとしての役割は、小・中・高校時代で親の情緒的ケアが最も多く57.8~61.5%が経験し、手伝い以上の家事は29.7~32.1%が経験していた。

・小学生の頃は62.4%がおとな同士の喧嘩を、51.4%が親からの攻撃を経験していた。周囲が問題に気づけると思うサインには、親が授業参観や保護者面談に来ない、いじめ、忘れ物が多い、遅刻欠席が多い、学業の停滞があった。だが、サインは出していなかったとした人は小・中・高校時代で43.2~55.0%であった。

・回答者が認識した教師の反応では、精神疾患に関する偏見や差別的な言動、プライバシーへの配慮不足などで嫌な思いをしていた。家庭の事情や悩みを気にかけ、話を聞いて欲しかったという意見が多かった。

・学校への相談歴のなかった人は小学生の頃91.7%、中学生の頃84.5%、高校生の頃で78.6%だった。

・相談しなかった理由としては、問題に気づかない、発信することに抵抗がある、相談する準備性がない、相談環境が不十分というものがあった。

・相談しやすかった人は、すべての時期で担任の先生が最も多かった。

・30歳代以下の人は、40歳代以上の人に比べて小学生や高校生の頃に学校への相談歴がある人が有意に多かった。

 ◆学校・地域・福祉 支援者に求められるもの(考察)
 大人だけで支援方針を決めるのではなく、子供と一緒に考えていくことが重要

・子供自身に自分の負担に気づいてもらうことや、支援を受けてもいいのだと分かってもらう働きかけが必要。話を聞いてもらうことを求める意見が多かったことから、大人だけで支援方針を決めてしまうのではなく、子供と一緒に考えていくことが重要。

・精神疾患に対する偏見やプライバシーへの配慮のなさを経験した子供もいることから、安心して相談することができるように、学校では子供への教育とあわせて、教師への研修も必要。

・教師は、精神疾患の基礎知識だけでなく、精神疾患のある親に育てられる子供の生活や困りごと、対応方法について学ぶ必要がある。

・回答者は、親の病状悪化に伴い、親の情緒的ケアをしたり、暴言・暴力に遭遇するなどの体験をしていた。そのため、親の病状への支援が必要であると考えられ、訪問看護などの継続的な在宅ケアサービスの導入が有効。

・ヤングケアラーとして、料理・掃除などの家事を子供が担っている場合は、障害者向けの家事援助サービスを導入することで子供のケアラー役割を軽減することが可能である。

・親の疾患や障害のサービスを導入する際には、学校が保健医療福祉の専門機関と連携する必要がある。地域では、支援が必要な子供の早期発見から早期支援へと展開できるように、母子保健・児童福祉の関係機関と精神保健医療福祉の関係機関の連携体制を強化することが求められる。

参考図書  
『静かなる変革者たち』 〜精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り〜
(著者・横山恵子、蔭山正子、こどもぴあ、出版:ペンコム)
 

 ◆研究責任者の蔭山正子准教授による調査結果のまとめ。
 精神疾患のある親を持つ子どもは、支援が必要な状況にありながら、支援につながりにくい。そもそも、精神疾患に知識がなく、子供自身が家庭の問題を理解できない。また、大人を信頼し相談するという経験に乏しく、相談できないケースが多い。それでも相談した人の中では、担任の先生が多く、話を聞いてもらいたいと思っている。
 子供自身が回答した『周囲が問題に気づけるサイン』として、親が授業参観や保護者会に来ない、いじめ、忘れ物が多い、遅刻欠席が多い、学業の停滞などがあり、教師は子供のことを気にかけ、これらの小さなサインを見逃さず早期発見し、子供の話をよく聞いてほしい。

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