日本ベーリンガーインゲルハイムは10日、佐賀県多久市と地域の医療データを活用した保健事業の推進に関する連携協定を締結したと発表した。
同協定では、多久市と日本ベーリンガーインゲルハイムが「多久市データヘルスプロジェクト」として相互に連携および協力し、以下の取り組みを推進することで、多久市の健康寿命の延伸および医療費の適正化を目指す。
近年、全国の自治体では国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)を策定し、国民健康保険の被保険者の方を対象に KDBを活用した保健事業を行っている。
多久市は、2021年度の多久市国民健康保険「特定健診」、「特定保健指導」の実施率が、全国(市・区)815自治体のうちいずれも第2位であるなど、保健事業へ積極的に取り組み、成果を上げている代表的な自治体である。
今回、多久市と日本ベーリンガーインゲルハイムが連携協定を締結した背景として、これまで両者が「糖尿病合併症リスク予測モデル」の検証を通じて相互に連携協力してきた活動を評価するとともに、データヘルスの取り組みをより一層進化させ、保健事業を通じて健康寿命の延伸や医療費の適正化を図ることへの想いが共通したことがある。連携・協力項目および直近で取り組む3つの事業は、次の通り。
【連携・協力項目】
1、 健康課題の解明とその対策
2、 地域医療に従事する保健師等への情報提供の支援
3、 各種健康教育等ポピュレーションアプローチへの支援
【直近で取り組む3つの事業】
1、合併症リスク予測モデルの活用
国保データベース(KDB)を用いて開発した「糖尿病合併症リスク予測モデル」を活用し、住民(国保被保険者)の3年以内の糖尿病合併症、最小血管障害、大血管障害および慢性腎臓病の発症リスクを予測する。
予測結果を踏まえて保健指導を効率化し、潜在的な保健指導対象者の抽出をサポートすることで、住民の予防・未病改善と健康増進を推進する。同予測モデルは、多久市において2023 年度より試験的に使用を開始しており、保健事業における活用の利便性および将来的な可能性の観点から、多久市のフィードバックを基に改良を進めている。
同協定の締結によって、多久市のデータヘルスに関する取組みがより一層発展することが期待される。
2、 地域医療分析ツールの導入
ベーリンガーインゲルハイムがグローバルで開発した「地域医療分析ツール」を試験的に導入する。同ツールは、英国の国民保健サービス(NHS)の協力のもと、英国内の約280万人の患者データを分析して作成されたシミュレーションモデルである。地域住民の健康課題や医療が介入すべきポイントを画面上でグラフィカルに可視化することができ、自治体の保健事業をサポートすることが可能である。
英国のデータを基に構築されたモデルのため、日本のデータを用いた場合にも精度を確保することを目指し、多久市の協力を得ながら、多久市の医療データを用いて日本に適合するモデルの構築と運用を計画している。
3、 後期高齢者の健康に関する探索的分析
後期高齢者データを階層化して過去の医療データを追跡し、後期高齢者のQOL や健康状態の維持または悪化の因子を分析する。
後期高齢者の階層化分析により健康寿命延伸の要因を探索することで、地域の高齢者向けの健康アプローチを検討する。
◆横尾俊彦多久市市長のコメント
多久市は、保健事業を推進することで市民の健康寿命の延伸を図ることを目指している。このような中、グローバル製薬企業である日本ベーリンガーインゲルハイムと連携協力できることを嬉しく思う。
「多久市データヘルスプロジェクト」を通じてデータヘルスを活用した質の高い保健事業を実現し、一人ひとりのヘルスリテラシーが向上することを期待している。
◆荻村正孝日本ベーリンガーインゲルハイム代表取締役医薬事業ユニット統括社長のコメント
ベーリンガーインゲルハイムは、サステナビリティの取り組みである「世代を超えた持続可能な開発(More Health)」を掲げ、医薬品の研究開発や製造販売にとどまらず、患者さんや地域医療に貢献するための幅広い取り組みを推進している。
今回、保健事業に積極的に取り組む多久市と連携できることを嬉しく思う。本プロジェクトを通じて、多久市の健康に寄与するとともに、得られた知見を全国に展開できるよう、努力していく。