アッヴィは、リンヴォック(一般名:ウパダシチニブ)について、巨細胞性動脈炎(GCA)を対象としたP3試験(SELECT-GCA試験)で良好な結果を示したと発表した。
SELECT-GCA試験は、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照P3試験で、成人巨細胞性動脈炎GCA患者に対して、リンヴォック(15mg、1日1回)と26週間のステロイド漸減投与の併用により、主要評価項目である12週時から52週時までの期間の寛解維持を達成したもの。
同試験において寛解維持を達成した患者の割合は、リンヴォック15 mgと26週間のステロイド漸減投与を併用した患者では46%であったのに対し、プラセボの投与と52週間のステロイド漸減投与を併用した患者さんでは29%であった(p=0.0019)1。
GCAは、自己免疫疾患であり、側頭動脈などの頭部の動脈、大動脈およびその他の大型・中型の動脈に炎症を引き起こす。一般的には、50歳以上に発症し、70~80歳の高齢者に最も多くみられる。
女性の発症リスクが最も高く、本疾患により頭痛、顎痛および視力の変化や消失(突発性かつ永久的な視力消失を含む)を引き起こす可能性がある。
今回の結果では、主要な副次評価項目も達成し、投与12週時から投与52週時までの期間に完全寛解維持を達成した割合は、プラセボの投与と52週間のステロイド漸減投与を併用した患者さんと比較して、リンヴォック15mgと26週間のステロイド漸減投与を併用した患者の方が高いことが示された(16%対37%、p<0.0001)。
投与52週時までの期間に1回以上の再燃が認められた患者の割合は、プラセボ群と比較してリンヴォック15mg群の方が低かった(56%対34%、p<0.0014)。
また、同試験結果から、リンヴォック7.5 mgは主要評価項目もいずれの副次評価項目も到達していないことが認められた。
52週間のプラセボ対照期間において、リンヴォック15mgの安全性プロファイルは、既に承認されている適応症で認められたものと概ね一致していた。同試験では、リンヴォック15 mgの忍容性は総じて良好であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。
有害事象により投与中止となった患者の割合は、リンヴォック15 mg群では15%、プラセボ群では21%であった。同試験において、重篤な有害事象が認められた患者さんの割合は同程度であった(リンヴォック15 mg群23%、プラセボ群21%)。
重篤な感染症が発現した割合は、リンヴォック15 mg群で6%、プラセボ群で11%であった。全体として、悪性腫瘍(非黒色腫皮膚がんを除く)が発生した患者さんおよび静脈血栓塞栓症と診断された患者の割合は、リンヴォック15 mg群(それぞれ2%および3%)とプラセボ群(それぞれ2%および4%)で偏りはみられなかった。
プラセボ群では主要心血管イベント(MACE)と判断された事象が2件認められたのに対し、リンヴォック15mg群では認めらなかった。治験薬投与下で発現した死亡は4件報告され、2件がプラセボ群、2件がリンヴォック15mg群であった。
リンヴォック15mg群の治験薬投与下で発現した死亡2件のうち、1件はCOVID-19によるものであり、もう1件は原因不明と判断された。
SELECT-GCA試験のすべての投与群における詳細な結果については、今後の医学学会での発表を予定している。GCAに対するリンヴォックの使用は承認されておらず、その安全性および有効性はこれまで規制当局により評価されていない。
◆Kori Wallaceアッヴィvice president兼global head of immunology clinical development(M.D., Ph.D.)のコメント 多くのGCA患者さんは、治療選択肢が限られている中、消耗性を引き起こす可能性がある症状に苦しみ続けている。今回の結果は、未だ大きなメディカルニーズがある疾患の新たな治療法を開発することにより、免疫介在性疾患の患者さんの生活改善を目指すという、当社の絶え間ない取り組みを示すものである。
◆SELECT-GCA試験の治験責任医師であるDaniel Blockmans氏(ガストハイスベルグ大学病院一般内科医、ルーベン・カトリック大学の内科教授、兼, M.D., Ph.D.)のコメント
今回の結果はリウマチ性疾患の治療におけるリンヴォックの有効性および安全性プロファイルを裏付ける一連のエビデンスを強化するものであり、心強く思う。
本試験の結果に基づき、リンヴォックはGCA患者さんにとって、初の経口治療選択肢となる可能性がある。GCAは、主に高齢の方が罹患する大型の動脈の炎症性疾患であり、これまでに承認され、ステロイドと一般的に併用されている治療法は1つしかない。