パシフィックコンサルタンツ(本社:東京都)は、同社がPFI事業者として運営する「むつざわスマートウェルネスタウン・道の駅・つどいの郷」(千葉県長生郡睦沢町)について、施設利用者の主観的健康感改善効果の検証を目的としたアンケート調査を実施した。
同調査は、同社と共同研究を行う千葉大学予防医学センターと千葉県睦沢町が連携して実施したもので、「健康支援型」道の駅のような商業施設の整備により、施設利用者の主観的健康感が改善する可能性が示された。
外出や人と出会う機会が主観的健康感の向上に寄与するという既存の研究結果を踏まえ、「むつざわスマートウェルネスタウン・道の駅・つどいの郷」は、2019年度に先進予防型のまちづくりの中核拠点となるべく、温浴施設や広場などを備えた「健康支援型」道の駅として整備された。
同研究では、道の駅整備前の2018年度、整備後の2020年度と2021年度の3時点で65歳以上の要介護認定を受けていない睦沢町内の全高齢者約2500人を対象にアンケート回答を得た。
3時点の調査に回答した576人の回答を分析したところ、統計学的な方法で2018年度の状態を両群間で調整した上でも、2020年度に道の駅を利用していた人(344人)では、利用していなかった人(165人)と比較して、2021年度の主観的健康感が悪いと回答した人が約33%少なかった。この理由の一つとして、道の駅を利用している人では道の駅整備前と比較して、外出や人と出会う機会の増加が確認できた。
千葉県睦沢町では、町民の誰もが、健康を意識せずとも「暮らしているだけで健康になる」まちづくりによって主観的健康感の向上を目指す、先進予防型まちづくりに取り組んでいる。
主観的健康感とは、本人が健康と感じているかを問う指標で、同指標が良好な人は生存率が高いことが明らかになっている。
その取り組みの1つとして、「外出すること」や「人と会うこと」が健康感の向上に寄与するという既存の研究結果を踏まえ、2019年度に、先進予防型のまちづくりの中核拠点として、従来の農産物直売所に加え、レストランや温浴施設、防災広場などを備えた「健康支援型」道の駅として、「むつざわスマートウェルネスタウン・道の駅・つどいの郷」をオープンした。
そこで、「健康支援型」道の駅の利用によって、利用者の主観的健康感の改善効果が出ているのかどうかを検証するための研究を実施した。
同研究では、2019年9月の道の駅整備前の2018年度、整備後の2020年度と2021年度の3時点の睦沢町内高齢者を対象としたアンケート調査回答データを用いて、道の駅整備後に道の駅を利用している人と利用していない人を、多変量解析によって比較した。
目的変数は2021年度調査の主観的健康感の悪さ、説明変数は2020年度調査時点の道の駅利用とした。調整変数は、2018年度調査の基本属性(性別、年齢階級、教育歴、経済的困窮感、独居、主観的健康感)と2018、2020年度の外出、社会参加、社会的ネットワークとした。
対象者576人のうち、道の駅を利用している人は344人(59.8%)、利用していない人は165人(28.6%)であった。道の駅を利用していない人に対して利用している人は、主観的健康感が悪いと回答した人が0.67倍で、統計学的に有意に減少していた。
同研究では、道の駅整備前の影響要因を調整した上で、道の駅を利用している方で主観的健康感が悪いと回答した人が減少し、すなわち主観的健康感の改善が明らかになった。
また、整備された道の駅が「自然に健康になれる環境」の1つとなり、外出や人と出会う機会が増え、主観的健康感を改善しうることが示された。
同研究は、「健康支援型」道の駅の整備と道の駅利用者の主観的健康感との関係性を検証した初の成果となり、今後の健康支援に関わる施設運営において大変意義あるものと考えられる。
パシフィックコンサルタンツでは、引き続き健康支援型道の駅の運営により、利用者の健康増進に寄与していく。さらに、道の駅直売所の野菜・果物の摂取を通じた健康的な食生活の推奨や、道の駅と周辺の地域資源を旅することで心と身体を癒やすウエルネスツーリズムの展開等、多様な形での健康支援にも取り組んでいく。