アストラゼネカは20日、フォシーガについて、欧州医薬品評価委員会(CHMP)より慢性心不全治療薬としての承認勧告を取得したと発表した。
承認勧告の対象は、駆出率低下を伴う心不全(HFrEF)から、駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)といった幅広い左室駆出率(LVEF)にわたる慢性心不全(HF)に対する適応拡大。
CHMPは、The New England Journal of Medicine1に掲載されたP3相DELIVER試験の結果とNature Medicine2に発表されたP3相DAPA-HF試験およびP3相DELIVER試験の事前に規定された統合解析の結果に基づき、今回の肯定的な見解を示したもの。この統合解析により、フォシーガが左室駆出率を問わず死亡リスク低下の有用性を示した初の心不全治療薬であることが示された。
心不全は、心臓が十分な血液を体全体へ送り出せない生命を脅かす慢性疾患で欧州連合では1500万人が罹患している。HFmrEFまたはHFpEFの患者では、症状の負担感や身体的制限が特に大きく、生活の質が不良であるため、健康状態の改善が疾患管理の重要な目標となる。
HFpEF、HFmrEF患者を対象に実施されたP3相DELIVER試験の結果では、フォシーガが心血管死または心不全悪化の複合アウトカムを18%低下させることが示された(中央値2.3年のフォローアップ期間においてダパグリフロジン群で16.4%、プラセボ群で19.5%[p<0.001、絶対リスク減少率[ARR]3.1%])。
治療効果は左室駆出率によらず一貫しており、左室駆出率による効果の減弱のエビデンスは認められなかった。さらに、事前に規定したP3相DELIVER試験およびP3相DAPA-HF試験の統合解析では、フォシーガは中央値22か月のフォローアップ期間で心血管死リスクを14%(p=0.01、ARR 1.5%)、原因を問わない死亡リスクを10%(p=0.03、ARR 1.5%)、心不全による(初回および再)入院のリスクを29%(p<0.001、ARR 6%)低下させた。
フォシーガは、米国、欧州連合、中国、日本など、世界100か国を超えるHFrEF患者の治療薬として承認されている。直近では、英国およびトルコにおいて左室駆出率を問わない心不全の適応拡大の承認を取得ている。現在、米国および他の国において、心不全の適応拡大の申請が審査中だ。
◆Mene Pangalosアストラゼネカのバイオファーマ研究開発部門担当エグゼクティブバイスプレジデントのコメント
フォシーガは欧州連合における多くの心不全患者さんの標準治療をすでに変革している。駆出率が軽度低下した心不全や駆出率が保持された心不全に対してこの新たな適応拡大が承認されれば、より多くの患者さんがこの忍容性が良好かつガイドラインに基づく治療によってベネフィットが得られる可能性がある。
心腎疾患のリーダーとして、アストラゼネカは心不全治療選択肢の拡大に尽力し、患者さんのアウトカムを改善するためにこの複雑な疾患を治療する方法を変えている。今回のCHMPの勧告は、フォシーガが成人の慢性心不全の治療に適応とされる。
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