うつ・不安症状に対するマインドフルネスの効果検証研究を開始 早稲田大学とMelon

オンラインによるマインドフルネスの実践風景

 早稲田大学人間科学学術院の髙橋徹助教、大須理英子教授とMelon(代表取締役CEO:橋本大佑氏)は5日、マインドフルネスに関する共同研究を本年9月より開始していると発表した。Melonは、オンラインでマインドフルネスのクラス提供を業務としている。
 マインドフルネスとは、「現在の体験にありのままに気づくこと」を意味しており、「過去でも未来でもない、今この瞬間の感覚」に注意を向ける瞑想などで訓練するもの。マインドフルネスを訓練するプログラムにより、うつや不安、ストレスを低減することは多くの研究から分かってきている。
 近年、コロナ禍によりオンラインでマインドフルネスを実践するプログラムが行われるようになったが、その効果を厳密に検証した研究は、国内では未だ無い。
 こうした中、うつ・不安症状に対し、オンラインで実施するマインドフルネスのプログラムが有効かどうかを国内で初めての検証がスタートした。
 WHOは2017年、世界には3億人を超えるうつ病患者がおり、患者の多くが正しい診断や適切な治療を受けられていないという点を指摘している。
 この状況は、世界だけでなく日本においても深刻化している。厚労省によると、日本人のおよそ40人に1人(323万人)がこころの疾患で通院や入院をしており、生涯を通じて5人に1人がこころの疾患にかかるとも言われている。
 このような現状の打開策として注目を集めているのが「マインドフルネス」だ。マインドフルネスとは、「現在の体験にありのままに気づくこと」を意味しており、「過去でも未来でもない、今この瞬間の感覚」に注意を向ける瞑想などで訓練する。マインドフルネスを訓練するプログラムがうつや不安、ストレスを低減することは多くの研究から分かってきており、集団で訓練するプログラムを提供する病院やクリニックも出てきている。
 うつや不安は、過去の後悔や将来の心配にとらわれることで増悪するため、現在の感覚に注意を向けるマインドフルネスの練習を行うことで、うつや不安が低減するというメカニズムも明らかになってきている。
 近年、コロナ禍によりオンラインでマインドフルネスを実践するプログラムが行われるようになったが、その効果を厳密に検証した研究は、国内では未だ無かった。うつや不安を抱える人は、外出して支援を受けに行くことへの難しさもあるため、同プログラムはオンラインによる新たな支援法としての活用が期待できる。
 そこで、髙橋氏らは、オンラインでマインドフルネスのクラスを提供してきた実績のあるMELONと共同し、ランダム化比較試験を実施することで、その有効性を検証することになった。
 検証において信頼性のあるデータを得るためには、介入実施者と、その効果を測定する評価者が独立していることが重要である。同研究では、なるべく客観性を担保するように、介入実施者であるMELONと、効果測定者である早稲田大学のチームを分離させて研究を進めている。
 また、通常は検査やクラスに参加するために移動するコストがかかるが、測定から介入までの全ての工程をオンラインで行えるようにしたことで、参加者の負担も少なく、日本のどこからでも参加できるような介入試験を実現した。
 うつや不安などのメンタルヘルスの問題が増加している中で、オンラインで簡便に実施できるマインドフルネスプログラムの有効性が実証されれば、効率的な心理支援としての普及が可能になり、その波及効果は大きい。
 メンタルヘルス問題の社会的コストは大きく、マインドフルネスは集団で実施することが容易であるため、長期的には医療経済的なメリットもあると考えられる。
 現在、同研究の参加者を募集している。うつまたは不安症状のある人が対象で、診断の有無に関わらず参加可能なプログラムのため、日々ストレスを感じている人の気軽な応募を受けている。1日のうちの都合の良い時間にオンラインでクラスに参加できるため、仕事等で忙しい方も参加しやすい形になっている。
 参加を希望し、全てのアンケートに回答した人は、回答の一部を集計したフィードバックを受けることができる。マインドフルネスのプログラムに参加して、自身がどのように変化したかを確認できる。効果検証試験の流れは、https://www.the-melon.com/research-waseda1/ で案内している。

◆研究者からのコメント
 身体的な健康に関しては、スポーツジム・フィットネスクラブなどさまざまな施設が充実している。だが、心の健康に関してはどうか。
 今回の共同研究は、MELONが提供しているいつでもマインドフルネスのクラスに参加できる仕組みが「心のインフラ」になり得るのかを検証する、重要なチャレンジだと考えている。
 研究成果の社会実装が叫ばれて久しいが、既に社会実装されているものを研究するという方向性も面白いと思っている。

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