塩野義製薬は24日、経口新型コロナ感染症治療薬「S-217622」について、P2/3試験のうちP2b partのデータを含む最新結果として、同治療薬を1日1回、5日間経口投与された際の抗ウイルス効果および臨床症状の改善効果が確認できたと発表した。同結果は、23~26日にポルトガル リスボンで開催中の第32回欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)で発表された。
今回、これまで実施してきたP2/3相臨床試験のうち、P2b partに関する最新の結果を発表したもの。P 2b partは、ワクチン接種者を主(約85%)とする軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者428例(日本:419例、韓国:9例)が無作為割付けされたプラセボ対象二重盲検比較試験である。
オミクロン株流行後の感染者を中心に評価が実施された試験で、本治療薬を1日1回、5日間経口投与された際の抗ウイルス効果および臨床症状の改善効果の確認を主目的に実施された。既報の内容に加えて、新たに発表された結果に関する要約は次の通り。
【抗ウイルス効果】
・同治療薬の投与により、感染性を有するSARS-CoV-2ウイルス(ウイルス力価)は速やかに消失した
・4日目(3回投与後)において、ウイルス力価陽性患者の割合は、プラセボ群と比較して約90%減少した
・ウイルス力価が陰性になるまでの時間の中央値は、プラセボに対して1~2日短縮した
・ウイルスRNA量についても、2日目(1回投与後)から9日目の各測定時点において統計学的に有意な減少が確認された
・4日目において、ウイルスRNA量をプラセボ群と比較して10分の1以下に低下させた(ベースラインからの変化量のプラセボ群との差異:‐1.0 log10 copies/mL以上)
【臨床症状の改善効果】
・プラセボ群と比較して、COVID-19の12症状合計スコアに統計学的に有意な差は認められなかったが、本治療薬の投与により、オミクロン株感染に特徴的な呼吸器4症状(計画解析)および呼吸器症状に発熱を加えた5症状(事後解析)の複合スコアの改善が示された
【安全性】
・P1試験およびP2a partの結果も含め、同治療薬は忍容性が高く、投与に起因する試験中止例は少数であり、重篤な有害事象や死亡例の報告はなかった
・これらの試験における投与に起因する有害事象は、一般的に軽度から中等度であり、治療的な処置なしで消失した
塩野義製薬は、同治療薬について、本年2月25日付で条件付き承認制度の適用を希望する製造販売承認申請を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対して行った。
今回発表した結果はPMDAに提出済みであり、現在実施中の軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者を対象としたP3 part(目標症例数:1785例)、無症候/軽度症状のみ有するSARS-CoV-2感染者を対象としたP2b/3 part(目標症例数:660例)についても、結果が得られ次第、速やかに提出する。
また、米国NIHの支援を受けて実施するグローバルP3試験(目標症例数:約1700例)の開始に向けて、準備を加速していく。
塩野義製薬では、今後も経口新型コロナ治療薬の開発状況に変化があり次第、告知する。
なお、同件が2023年3月期の連結業績予想に与える影響に関しては現時点では未定である。今後、状況に応じて精査し、影響を認識した時点で速やかに公表する。