11月12日は「マイクロニードル化粧品の日」 コスメディ製薬

研究室から社会実装へ。マイクロニードル製品の産業化に挑んだものづくりの18年

 コスメディ製薬(本社:京都市)は、2008年11月12日、注射に代わる投薬技術「マイクロニードル」を化粧品として製品化した。この新市場を生み出した世界初のイノベーションを記念し、日本記念日協会(事務局:長野県)から認定を受けて11月12日を「マイクロニードル化粧品の日」として記念日制定している。
 2026年11月12日、新市場の創出を実現したものづくりは18年の節目を迎える。研究成果を製品として社会実装するために確立した製造技術は、2026年、第10回「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞。技術の革新性が改めて高く評価された。
 マイクロニードルは、長さ数百ミクロンの微細な針で、皮膚から薬剤や有効成分を効率的に吸収させる技術だ。
 コスメディ製薬は2001年の創業後間もなく、注射に代わる薬剤投与方法としてマイクロニードルに着目し、研究を進めた。当時、米国などで研究されていた金属やシリコン製のマイクロニードルは、痛みや出血、皮膚内の針の残存など安全性に課題があり、実用化には程遠い存在であった。
 同社はより安全性の高い技術を追求し、ヒアルロン酸などの「皮膚に含まれる成分そのものを針にしよう」という発想から、皮膚内の水分で針が溶ける「溶解型マイクロニードル」の開発に成功した。
 この「溶解型マイクロニードル」の医薬品への応用開発と並行し、研究成果をより早期に事業化するため、化粧品への応用にも取り組んだ。2008年には世界で初めて溶解型マイクロニードルの工業的製法を確立し、化粧品として製品化。同年11月12日、従来存在しなかった「マイクロニードル化粧品」という新たな美容市場を切り開いた。

(左)美容用溶解型マイクロニードル(顕微鏡写真) (右)パッチ型マイクロニードル化粧品

皮膚への刺入深さを制御する独創的コニーデ形状の設計

 溶解型マイクロニードルを化粧品として応用するには、皮膚の最外層である厚さ0.02mmの角質層に留まる針の形状設計が必要だった。
 コスメディ製薬は、針の先端を細く急峻にすることで皮膚への穿刺性を高める一方、根元に向かって大きく広がるカーブを設計。このカーブにストッパーの役割を持たせ、針が深く刺さりすぎないよう刺入深さを制御した。
 また、カーブの傾斜を緩やかにすることで鋳型から針を取り出すための抜き勾配と安定した土台を確保。化粧品への応用に必要な刺入深さの制御と製造上の要件を両立する、独創的な「コニーデ形状」を開発した。

同社研究開発資料より

京都のものづくり連携
地域企業・支援機関とともにマイクロニードル化粧品の製造体制を構築
 2008年の製品化当時、コスメディ製薬の従業員はわずか8名。研究開発と製造の拠点は、中小機構のベンチャー企業向けインキュベーション施設「クリエイション・コア京都御車」にあった。
 当初の製造工程は手作業が中心。数十ミクロンという薄さのマイクロニードルパッチは、吸湿や静電気、破損などの影響を受けやすく、安定した品質で製造するには多くの課題があった。
 製品化と量産化への道を切り開いたのは、京都の多様な専門家やものづくり企業との連携だ。支援機関に所属する工業デザイナーから製品の操作性や量産化を見据えた設計の助言を受け、さらに地域の中小企業や職人、機械メーカーと協力して専用の製造設備を開発。研究開発型ベンチャーの発想と京都に蓄積された技術や経験が、マイクロニードル化粧品の製造体制を築いた。

世界初のマイクロニードル化粧品(2008年撮影)
世界初の技術「溶解型マイクロニードル」が生まれたラボ(2008年撮影)
マイクロニードル化粧品を製造するラボ工場(2008年撮影)

数千枚の手作業から年間1億枚の生産力へ。マイクロニードル化粧品のトップクラスメーカーに成長

 マイクロニードル化粧品の製造工程は、手作業から半自動化、全自動化へと発展した。現在、コスメディ製薬は京都市内に3つの工場を構え、研究・企画から製造までを一貫して行う体制を構築。桂工場と吉祥工場ではISO22716(化粧品GMP)の認証を取得し、高水準の製造環境と品質管理体制のもとで安定した大量生産を実現している。
 同社は年間1億枚の生産能力を備え、マイクロニードル化粧品製造において国内トップクラスの製造量を誇るメーカーに成長した。2026年現在、マイクロニードル化粧品のODM提供先は100社を超え、美容市場の拡大に貢献している。

マイクロニードル化粧品のマザー工場、吉祥工場(京都市南区)
マイクロニードル化粧品の製造ライン
第10回「ものづくり日本大賞」近畿ブロック表彰式・受賞者の集いにて(2026年3月25日)

 2026年3月、コスメディ製薬の溶解型マイクロニードル製造技術は、経済産業省 第10回「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞した。受賞テーマは「世界初!“貼る注射”が可能となるマイクロニードルの実用化」。研究成果を製品へと発展させ、量産化を実現した開発・製造チームの成果が国に評価された。
 2008年の製品化から18年。研究成果を世界に届く製品へと発展させた京都のものづくりは、新たな美容市場を創出し、マイクロニードルの産業化を実現した。現在、同社のマイクロニードル製品は、中国を中心とするアジア諸国や、ドバイをはじめとする中東地域など、世界約10の国・地域に展開している。
 同社のマイクロニードル製造技術は、美容領域にとどまらず、医療領域でも課題解決を実現。2027年1月には、歯科用マイクロニードル医療機器『アネスパッチ』について、小児用に特化した新製品を発売予定している。

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