最大1958億円でトランセンド社買収 PTSD等の治療薬候補「TSND-201」獲得 大塚製薬

 大塚製薬は27日、トランセンド社買収を買収すると発表した。同社100%子会社である大塚アメリカ Inc.を通じてトランセンド社を完全子会社化するもの。同買収は、今後必要な手続き等を経て、2026年度第2四半期中に完了する見込み。
 同契約に基づき、大塚製薬はトランセンド社株主に対し、同買収の対価として買収完了時に7億ドル(約1119億円)を支払うとともに、開発品の売上に応じた条件付対価(販売マイルストン)として最大5億2500万ドル(約839億円)を支払う。
 トランセンド社は2021年に設立された、精神・神経疾患に対する迅速作用型治療薬の開発を進めるバイオテクノロジー企業。今回の買収により大塚製薬はトランセンド社が開発する「TSND-201」を獲得する。同剤は、メチロンを有効成分とする迅速作用型のニューロプラストゲン(脳内ニューロンの神経可塑性を誘導する化合物)で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを対象とした治療薬候補として開発中だ。
 米国では、PTSDの年間有病者数が1300万人以上に上ると推計されているが、この約 25 年間、新たな治療薬は承認されておらず、依然として大きなアンメットニーズが存在している。近年の研究では、脳の「神経可塑性(neuroplasticity)」の変化が PTSD の発症や症状の持続に深く関わっていることが明らかになっている。神経可塑性とは、脳の神経回路を再編成する能力のことで、記憶の形成や感情の調整を支える重要な仕組みだ。
 PTSD では、恐怖反応に関連する神経回路に変化が生じ、安全であることを再学習する力(恐怖を上書きする力)が損なわれており、神経可塑性を回復あるいは促進する治療アプローチへの関心が高まっている。
 メチロンを有効成分とする TSND-201 は、脳内モノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)のトランスポーターなどに作用する。モノアミンの放出を促進することで、シナプス間隙のモノアミン濃度を高め、神経可塑性を迅速かつ持続的に高める作用が示されている。なお、TSND-201は幻覚作用に関わるセロトニン 5-HT2A 受容体には作用せず、非幻覚性と考えられる。
 トランセンド社は、TSND-201 の有効性と安全性・忍容性のバランスをさらに高めるため、新規化学物質に分類されるプロドラッグの研究開発にも取り組んでいる。既に開発候補化合物を選定しており、米国FDAに対するIND(新薬臨床試験開始届)申請に向け、現在非臨床試験を実施している。
 TSND-201 は PTSD を有する成人を対象としたP2試験「IMPACT-1」において良好な成績を示し、その結果が2026年2月に「JAMA Psychiatry」に掲載されている。迅速な作用発現と高い効果が認められたため、TSND-201は2025年7月にFDAよりブレークスルーセラピー指定を取得した。
 トランセンド社は2025年9月にFDAとTSND-201の開発を加速する計画およびP3試験のデザインについて協議を行い、現在、米国においてP3試験の患者登録を進めている。
 

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