高齢者が「自分らしく生きる力」の測定方法のあり方を指摘 大阪医科薬科大学

 大阪医科薬科大学 医学部 医療統計学研究室 西尾麻里沙教授らの研究グループは、高齢者の「自分らしく生きる力」の測定方法を決定には、①WHOが定めた機能的能力の5つのドメイン、②各国が行っている機能的能力の概念の明確化 、③AIや機械学習を活用した機能的能力の個別化評価ーの総合的な勘案が重要であると指摘した。
 同論考は、2025年11月に老年学の国際誌『Age and Ageing』(英国老年医学会誌)にオンライン掲載された。
 世界的に高齢化が進む中、WHOは、人が高齢になっても個人の価値観に基づいた生活を続けられるよう支援する考え方として、ヘルシーエイジングを提唱した。その中核にある「機能的能力」は、身体的・精神的な健康状態だけでなく、社会的なつながりや意思決定の力などを含む包括的な概念である。だが、国や地域によって異なる定義や測定方法が用いられており、国際的な比較や政策評価を困難にしている。同論文は、「機能的能力とは何か」を改めて問い直す学術的・政策的な論考である。

 研究者らは、①WHOが定めた機能的能力の5つのドメイン(基本的ニーズを満たす能力、学び・成長し・意思決定する能力、移動する能力、人間関係を築き維持する能力、社会に貢献する能力)を基盤とした共通理解の重要性、②各国が行なっている高齢者縦断調査に機能的能力の概念と測定尺度を統合する必要性、③AIや機械学習を活用した機能的能力の個別化評価の可能性ーを指摘した。
 これらの視点は、国際比較可能な測定の枠組みをつくるための土台となり、今後のデータ整備や政策立案に貢献するとしている。
 同論考は、『「何を測るか」が、「何を実現できるか」を決める』というメッセージを掲げ、ヘルシーエイジングの理念を再確認するものだ。
 今後は、WHOが行う世界高齢者調査(Global Ageing Population Survey: GAPS)などの大規模社会調査において、この議論を具体的な指標づくりとデータ整備へつなげることが期待される。また、機能的能力の個別化評価が進めば、高齢者一人ひとりの「自分らしく生きる力」をより的確に支えるものと考えられる。

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