春ウコン成分 coronarin Dの神経幹細胞からアストロサイトへの強い分化誘導促進作用を同定 早稲田大学

認知症やパーキンソン病など神経変性疾患予防サプリや治療薬開発に期待

早稲田大学理工学術院の大塚悟史招聘研究員(研究当時)および中尾洋一教授らのグループは、春ウコンCurcuma aromaticaに含まれる生物活性成分のcoronarin Dに神経幹細胞からアストロサイトへの分化誘導を強く促進する活性があることを見出した。
 大塚氏らは、春ウコンCurcuma aromaticaに含まれる生物活性成分として、①coronarin C、②coronarin D、③(E)-labda-8(17),12-diene-15,16-dialの3種類を同定し、coronarin Dのどう活性作用を見出したもの。


 同研究成果は、米国化学会誌『Journal of Agricultural and Food Chemistry』に3月4日付けでオンライン掲載された。
高齢化が進むわが国においては、認知症やパーキンソン病をはじめとした神経変性疾患患者数の増加と、それに伴う医療費負担の増大が問題になっており、その対策は急務である。
 加齢に伴って生じる神経変性疾患への対策には、治療薬・予防薬の開発が重要なのはもちろんだが、日々摂取する食品もしくはサプリメントを通して予防ができれば、その波及効果は大きいと考えられる。
 今回、神経幹細胞からアストロサイトへの分化誘導を強く促進する春ウコンの活性成分として、coronarin Dが見出された。
 春ウコンは、生薬や漢方もしくは食品としても広く使用されてきた歴史がある。アストロサイトへの分化誘導促進成分として今回我々が見出した春ウコン由来のcoronarin Dを食事やサプリメントを通して継続的に摂取することで、加齢による神経変性疾患に対する予防効果が期待できる。
 また、coronarin Dは元来食品成分であるために、安全性が確認されている天然成分として医薬品開発への応用も期待される。

 今回の成果では、coronarin DがJAK/STATシグナル経路を介してアストロサイト分化を促進している可能性が示唆されたため、今後はこのシグナル経路に関与する遺伝子群や種々の生体分子に注目してcoronarin Dの精密な作用機序解析を行う必要がある。
 今回はマウスES細胞由来の神経幹細胞を用いて活性を評価したが、今後はヒトiPS細胞由来の神経幹細胞を用いてヒト細胞における活性の確認や、動物モデルを用いたin vivo活性の評価を行った上で、臨床応用に向けた知見を積み重ねる必要がある。

◆研究者のコメント
 神経幹細胞のアストロサイトへの分化を調節する食品についての研究は限られている。今回、本研究グループが見出した春ウコン由来のcoronarin Dの作用機序解明が進めば、神経変性疾患に苦しむ患者を救う医薬品開発や、加齢に伴う神経変性疾患の予防を通して、健康寿命の延長に貢献できると信じている。

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