Vasomune社と開発中の透析中の脳血管安定化剤「AV-001」 新たな臨床研究開始 アンジェス

 アンジェスは4日、カナダのバイオ医薬品企業Vasomune社と共同開発中の透析中の脳血管安定化剤Tie2受容体アゴニスト「AV-001」(Pegevongitide AV-001)について、新たな医師主導臨床試験を開始すると発表した。
 カナダ保健省は、定期的な血液透析を受ける患者における急性虚血性脳損傷の予防を目的とした新規薬剤の安全性と有効性を評価する画期的な臨床試験を承認している。
 同社とVasomune社は、AV-001が血液透析によって引き起こされる細胞毒性脳浮腫を軽減し、脳の白質の機能を維持できるかを医師主導試験で評価する。同試験は、ウェスタン大学の医学・医学生物物理学・小児科学の教授で、ロバート・リンゼイ透析研究・イノベーション講座の主任を務めるDr. Christopher McIntyre氏の主導で実施する。
 末期腎不全患者の最大 90%が利用する血液透析では、脳の構造的・機能的変化と関連して、混乱、せん妄、さらには長期的な認知機能低下といった症状を引き起こす。
 特に55歳以上の患者では、その70%が中等度から重度の認知障害を引き起こし、大きな課題となっている。同研究は、カナダ心臓・脳卒中財団の助成を受けて実施され、良好な結果が得られれば、より大規模な試験も検討していく。
 カナダ発の新薬候補「AV-001」は、Vasomune社とアェスによって共同開発され、透析中に大きな循環ストレスを受ける脳血管の安定化を目指すもの。脳血管の不安定化は、定期的な透析を開始した患者の最大70%に見られる血管性認知障害と関連している。 同臨床試験を主導するDr.Christopher McIntyre氏は、ロンドン・ヘルス・サイエンス・センターのLilibeth Caberto腎臓臨床研究ユニットのディレクターも務めており、同センターで臨床腎臓内科医として診療を行っている。
 腎臓研究の分野の権威である同博士は、慢性腎臓病が心血管系、神経系、肝臓、消化器系に与える病態生理学的影響を調査する学際的チームを率いている。
 McIntyre氏の研究は、複数の画像診断と臨床・トランスレーショナル研究を統合して新たな治療戦略の開発と評価を行っている。最近では、透析治療そのものがもたらす悪影響の軽減に焦点を当てており、Nature Reviews Nephrology 誌に透析と認知障害に関する論文を発表した。
 「末期腎不全患者の最大90%が利用する血液透析では、脳の構造的・機能的変化と関連して、混乱、せん妄、さらには長期的な認知機能低下を引き起こす。」と McIntyre氏は報告している。特に55歳以上の患者では、70%の患者が中等度から重度の認知障害を引き起こし、大きな課題となっている。血液透析患者は、治療中の循環ストレスによって繰り返し発生する虚血性脳損傷に対して特に脆弱である。
 「AV-001」は、Tie2/Angiopoietin-1 シグナル伝達経路を標的とすることで血管を安定化させ、血管漏出や炎症を抑制するという新たなアプローチを提供する。
 Dr. Harold Kim Vasomune社研究担当副社長は、「今回のカナダ保健省からの試験開始の許可により、Vasomune社は脳血管の機能維持を標的とした新たな適応の可能性を得ることになります」と話す。
 「AV-001」の専門誌への発表データでは、このメカニズムにより神経学的健康の改善、認知障害の軽減、そして脳血管からの漏出の減少が示されている。
 同試験では、「AV-001」が血液透析による細胞毒性脳浮腫を軽減し、脳の白質の機能を維持できるかどうかを評価する。先進的な脳画像診断、認知機能評価、血液バイオマーカーを用いて評価する。
 権威あるHeart and Stroke Foundationの助成によって支援されているこの研究は、血液透析患者の脳の機能を守る新たな治療法を提供する可能性を秘めている。
 良好な結果が得られれば、より大規模な検証試験へとつながり、このリスクの高い集団の生活の質と機能向上に寄与する可能性がある。
 なお、同件は、アンジェスの2025年12期連結業績への影響はない。今後開示すべき事項が発生した場合には、速やかに告知する。

タイトルとURLをコピーしました