

(2)-6-4:安土・桃山時代(1573-1603)
No.3-2:安土・桃山時代、「薬草園、信長との関わりから-Ⅱ」
【信長、薬草園、伊吹山について】
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イブキノエンドウ:「信長の薬草園」在来種と判明 2024/03/22 05:00
国内では滋賀、岐阜県境の伊吹山と北海道だけに分布するマメ科の「イブキノエンドウ」は、中世以降に海外から持ち込まれたと考えられてきたが、滋賀県立大などによる遺伝子解析で、他の地域では絶えた在来種と判明した。外来種と思われていた草花が、一転して日本固有の希少種に「格上げ」される可能性も浮上している。(佐々木栄)
◆伊吹山と札幌市近郊のみに分布 イブキノエンドウは初夏に紫色の花を咲かせる多年草だ。暑さに弱く、乾燥した環境を好むとされ、国内では伊吹山と札幌市近郊だけに分布し、長らく植物学者らの関心を集めてきた。□□中でも興味深いのが、伊吹山に伝わる「信長の薬草園」伝説だ。「織田信長の許可を得た南蛮人宣教師が、伊吹山の山麓に広大な薬草園を開設した」との記述が複数の古文書に残る。□□伊吹山には欧州に自生する珍しい草花がイブキノエンドウを含め3種確認されている。植物学者の牧野富太郎(1862~1957年)らは「宣教師が欧州から薬草を持ち込んだ際に紛れて入ってきた」と推論し、3種は薬草園伝説を裏付ける存在だとする見方が定着していた。□□ところが滋賀県立大の原田英美子教授(植物科学)らが、ドイツとロシアのイブキノエンドウの標本と、国内で採取したものの遺伝子を解析したところ、伊吹山と北海道のイブキノエンドウは、いずれも欧州などと系統が異なり、数万年前から国内に存在した在来種であることが判明。定説を覆す発見となった。
◆「欧米から持ち込み」牧野富太郎の説覆す
伊吹山(1377メートル)は、古くからヨモギの産地として知られ、「薬草の宝庫」と呼ばれてきた。信長や宣教師の伝説にはこうした背景がある。□□石灰岩質の土壌はアルカリ性で、表土が薄く乾燥しやすいため、樹木は育ちにくい。冬には日本海から冷たく湿った風が吹き付け、1927年に記録した積雪11メートル82は観測史上、世界1位の記録として残る「豪雪地帯」だ。□□こうした特殊な環境が、近畿地方にありながら、南北の多様な植物が入り交じる草原を形成する一因となった。山頂の草原には標高2000メートル級の亜高山帯の植物が自生し、学術的価値の高さから国の天然記念物に指定されている。□□原田教授によると、イブキノエンドウは山頂付近など、標高が高く涼しい場所に点在する。滋賀県彦根市の大学構内で栽培を試みたが、夏になると枯れてしまったという。□□「約1万年前に最終氷期が終わるまで、イブキノエンドウは日本全国に広く分布していたが、その後、気温が高くなるにつれて大半が消えてしまったのでは」と原田教授は推測する。
◆「レッドリストに載るレベル」
北海道のイブキノエンドウは、札幌市の東約30キロに位置する長沼町が主な分布地だ。河川の堤防沿いに約5キロにわたって群生している。□□北海道大の首藤光太郎助教(植物分類学)によると、従来は、北海道の開拓が進んだ明治時代に輸入された牧草の種子に交じって持ち込まれた、というのが定説だったという。1890年代に札幌市周辺で採取された標本も現存している。□□元々、長沼町などがある石狩平野は広大な湿地帯。乾燥した環境を好むイブキノエンドウが繁茂するには、あまり適していない。このため首藤助教も「明治期に開拓され、湿地が農地に変わった後で定着したのではないか」と考えていたという。□□今回の発見で、北海道のイブキノエンドウのルーツも数万年前まで遡るとすれば、開拓される以前は一体、どこで生き延びていたのだろうか。これまで北海道では、イブキノエンドウは「外来種リスト」に掲載されてきたが、今回、在来種だと判明したことで、一転、保護対象となる可能性が出てきた。 首藤助教は「レッドリストに載るレベルの貴重さだ。広大な北海道は調査が尽くされていないので、今回の発見を機に、新たな分布地が見つかる可能性もある」と話している。
[文献2] in滋賀・伊吹山の希少植物、在来種だった 「信長の薬草園」伝説 …
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滋賀・伊吹山の希少植物、在来種だった 「信長の薬草園」伝説どうなる?
2023/12/8 18:44 川西 健士郎
伊吹山に分布するイブキノエンドウ(琵琶湖博物館提供)
戦国武将の織田信長がポルトガル人宣教師を安土城に招待し、滋賀、岐阜両県にまたがる伊吹山に薬草園を開く許可を与えたという伝説がある。その信憑(しんぴょう)性を裏づける欧州由来の植物の一つとされてきた伊吹山の希少植物「イブキノエンドウ」が、太古からの日本在来種だったことが、琵琶湖博物館や滋賀県立大学などの研究グループによるDNA解析で明らかになった。□□この伝説は江戸時代中期ごろの「南蛮寺興廃記」などで紹介されているが、一次史料の裏付けはなく俗説の域を出ない。□□ただ、欧州からユーラシア大陸に広く分布するマメ科植物のイブキノエンドウの分布が日本ではほぼ伊吹山に限られており、「日本の植物分類学の父」と呼ばれる牧野富太郎(1862~1957年)は、南蛮人宣教師によって持ち込まれたとの説を提唱し、広く信じられてきたという。
こうした通説を今回、科学的に検証したのは、琵琶湖博物館の大槻達郎主任学芸員や滋賀県立大学の原田英美子教授、岐阜県立森林文化アカデミーの玉木一郎准教授らの研究グループ。□□ゲノムDNAを用いた分子集団遺伝解析の結果、ドイツやロシアにあるイブキノエンドウに対し、伊吹山と、わずかに残る北海道のイブキノエンドウは明確に系統が分かれていることが判明した。欧州から伊吹山に持ち込まれたとの説は明確に否定されるという。□□ただし、研究グループは「今回の結論は信長の薬草園の存在を否定することにはならない」と強調する。□□研究グループによると、イブキノエンドウは国内では伊吹山と北海道だけで確認されており、その起源については、①日本列島が大陸と地続きだった氷期以前にユーラシア大陸から分布が拡大 ②信長が安土城を構えた時期に欧州から薬用植物とともに移入 ③明治以降、牧草に紛れて移入-の可能性がある。□□伊吹山のイブキノエンドウは、幕末の1857年に出版された植物図鑑「草木図説」に掲載されており、伊吹山は①か②、北海道は③の可能性が高いと考えられていたという。□□ところが今回の解析で、伊吹山と北海道の系統は明確に異なるが、かなり近縁であることを確認。両系統は氷期の約3万年前に分岐した在来種とする仮説が支持され、いずれも①の可能性が極めて高いことが明らかとなった。□□日本での分布はほぼ伊吹山に限られるが、欧州には広く分布する植物として、イブキノエンドウのほかにも「キバナノレンリソウ」と「イブキカモジグサ」が知られており、宣教師由来の植物と考えられてきた。大槻主任学芸員は「こちらは宣教師たちが伊吹山に持ち込んだ植物の可能性が残る」とし、「将来的には2種の由来も明らかにできれば」と話している。
[文献3] in織田信長の薬草園の謎:伊吹山の希少植物イブキノエンドウ …
Tohoku University https://www.tohoku.ac.jp › press20231205-01-nobunaga
2023年 | プレスリリース・研究成果
織田信長の薬草園の謎:伊吹山の希少植物イブキノエンドウは日本の在来種であることを明らかにしました 2023年12月 5日 10:00 | プレスリリース・研究成果
【本学研究者情報】〇大学院農学研究科 附属複合生態フィールド教育研究センター
教授 陶山佳久 研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
伊吹山には、南蛮人宣教師が織田信長の許可を得て開いた薬草園がかつて存在していたという伝説がある。□□イブキノエンドウは、ヨーロッパからユーラシア大陸にかけて広く分布しているマメ科植物だが、日本での分布はほぼ伊吹山に限られている。このことから、イブキノエンドウは、同じような分布を示すキバナノレンリソウ、イブキカモジグサとともに、宣教師たちが伊吹山に持ち込んだヨーロッパ由来の薬草に紛れて16世紀に日本に移入したものであり、薬草園伝説を裏付ける存在であると広く信じられてきた。 イブキノエンドウは北海道にもわずかに分布しているが、これらは伊吹山とは別の経路で、明治初期に牧草に紛れて海外から持ち込まれたと考えられていた。□□研究グループは、伊吹山および北海道でイブキノエンドウを採取し、また、ドイツおよびロシア産の標本に由来するゲノムDNAを入手した。葉緑体遺伝子マーカーの配列と、次世代シークエンサーを用いたゲノムワイド多型解析に基づいて、この植物の移入経路を調べた。□□本研究により、日本のイブキノエンドウは在来種であり、伊吹山に16世紀にヨーロッパから持ち込まれたという従来の説が否定された。伊吹山と北海道のイブキノエンドウは貴重な地域集団であることが明らかとなった。


南蛮寺興廃記には、織田信長が南蛮人宣教師を安土城に招待し、伊吹山に薬草園を開く許可を与えたことが記載されている。
図2:2018年5月25日、伊吹山登山道上野ルート3合目付近で撮影した。
問い合わせ先:(研究に関すること)東北大学大学院農学研究科
附属複合生態フィールド教育研究センター 教授 陶山 佳久 電話:0229-84-7359
E-mail:yoshihisa.suyama.e2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)東北大学大学院農学研究科総務係 TEL: 022-757-4003
Email: agr-syom*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)