【後編】第12回 くすり文化-くすりに由来する(or纏わる)事柄・出来事- 八野芳已(元兵庫医療大学薬学部教授 前市立堺病院[現堺市立総合医療センター]薬剤・技術局長)

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ここでは装束研究に資すべく、延喜式全文(読み仮名を除く)を掲載し、検索可能としました。底本は『新訂増補国史大系26 延喜式』です。(in延喜式 http://www.kariginu.jp › engishiki)

 また、「延喜式(えんぎしき)」は平安時代の法令集で、律令法の施行細則が記されたものです。当時の法律がわかるのはもちろん、当時の社会や文化も垣間見えるので、貴重な史資料といえます。□□巻三十七には「典薬寮(てんやくりょう=宮中の医薬をつかさどった役所)」で用いられた薬のリストが書かれています。また、当時諸国(五十四国)から朝廷に納められたさまざまな物品の名前も「諸国進年料雑薬」の項に見られます。□□この項目を見ると、昔の国ごとに献上した物品、つまりその国の当時の特産物がわかります。たとえば美濃国六十二種の中には、大黄(ダイオウ)竜胆(リュウタン=リンドウ)などの薬草の名が見えます。また、山国だけあって、獺肝(カワウソの肝臓)熊胆(クマノイ=クマの胆嚢)猪蹄(イノシシのひづめ)鹿茸(ロクジョウ=シカの袋角)熊掌(クマの手のひら)なども挙がっています。□□このような品々は、どのようにして遠い朝廷まで運ばれていったのでしょうか。そして、どのように用いられたのでしょうか。□□歴史的な法律の本というと、どうしても敬遠しがちですが、ちょっと見方を変えるとおもしろいものが見えてきますね。記事:内藤記念くすり博物館、 稲垣  裕美 (2005年1月)

(in薬草に親しむ-「延喜式」の植物 http://www.eisai.co.jp › herb › familiar › statute)

典薬寮へ薬種in典薬寮へ薬種 – よっちゃんの文明論 https://yottyan.blog.ss-blog.jp › …

 延喜式の「巻37典薬寮」には、51カ国と大宰府(西海道分を一括して記述)から、年ごとに典薬寮へ貢進すべきものとして、薬種200種以上が記される。4カ国以上から貢進される薬種が105種あり、現代に伝わる漢方薬が当時から知られていた典薬寮は今日の国立病院のような存在で、薬種採集・調剤・薬園管理など医療全般の業務を行う組織
 四国に割り当てられた薬種とその量は次表のとおり。讃岐の47種は種類が多く、近江73種、美濃62種、出雲53種、播磨53種、伊勢50種に次ぎ、6番目である。
 なお斤・両は重さの単位で、薬種の計量において1斤=16両=160匁と推定されている。1匁=3.75グラムであるから、1斤=600グラム1両=37.5グラムである。

<薬種の説明>
  虎尾俊哉著『訳注日本史料 延喜式』(集英社 2000)、難波恒雄著『原色和漢薬図鑑 上・  下』(保育社 1986)などから、分かった限りで薬種の説明を掲げると次のとおり。
 茈胡 サイコ;現在は柴胡と書く。セリ科ミシマサイコの根。解熱、解毒、消炎
 黄菊花;頭目風熱を解する。解熱、解毒、鎮痛
 澤寫 タクシャ;オモダカ科サジオオダカの塊茎。利尿、止渇、めまい
 橘皮 キッピ;ミカン科ベニミカンの皮。健胃、駆風
 箄薢 ヒカイ;ヤマイモ科オニドコロの根茎。尿道炎、膀胱炎
 茵陳・茵草 インチン・インソウ;キク科カワラヨモギの幼苗と花穂。利尿、利胆、肝炎
 薺尼 セイデイ;キキョウ科ソバナの根。清熱、去痰、解毒
 芍薬 シャクヤク;根を乾燥する。補益、行血理気
 土瓜 ドカ;カラスウリ。肌荒れ、ひび、あかぎれ
 牡丹;根の皮。中風、頭痛を治す
 細辛 サイシン;ウマノスズクサ科サイシンの根。鎮咳、鎮痛
 大戟 ダイゲキ;トウダイグサ科京大戟の根。水腫、胸満に応用する
 狼牙 ロウゲ;マメ科コマツナギ。煎じて消化不良に
 茯苓 ブクリョウ;サルノコシカケの菌核。胃潰瘍予防、鎮静、利尿
 連翹 レンギョウ;モクセイ科レンギョウの種。消炎、解熱
 女萎 オミナエシ;鎮静、鎮痙
 升麻 ショウマ;キンポウゲ科の植物。解毒
 蒲黄 ホオウ;ガマ科ヒメガマの花粉。止血薬
 天門冬 テンモンドウ;ユリ科クサスギカズラ。鎮咳、利尿

寄生 ヤトリキ;鎮痛、強壮
 榧子 ヒシ;イチイ科カヤの成熟種子。虫下し
 麦門冬 バクモンドウ;ユリ科ジャノヒゲの根。精神安定
 虵床子 ジャショクシ;セリ科オカゼリの成熟果実、蛇が好むという。陰痒、陰腫
 桃仁 トウニン;桃の実。瘀血の薬
 秦椒 ハジカミ;山椒の別名、イヌザンショウの果皮。健胃、消炎
 葵子 キシ;アオイ科イチビの種子。利尿、緩下
 蒺藜子 シツリシ;ハマヒシの未成熟果実。頭痛、眼疾
 鶏頭子 ミヅフフキ;スイレン科オニバスの成熟種子。滋養強壮
 麻子 マシ;麻の実。緩下剤
 胡桃子 コトウシ;クルミ。利尿、整腸、滋養強壮
 蜀椒 ショクショウ;ミカン科サンシコウの皮。健胃、消炎、利尿
 乾棗 カンソウ;ナツメの果実。緩和、強壮、利尿
 黄苓 オウゴン;シソ科の根。消炎、解熱
 藍漆 ランシツ;アイの茎葉。解熱、消炎、止血
 稾本 コウホン;セリ科ヤブニンジンの根茎。鎮痛、鎮痙
 牛漆 ゴシツ;ヒユ科イノコヅチの根。月経不調、悪血
 五茄 ウコ;ウコギ科オミナエシの皮。強壮、利尿
 地楡 ジニレ?;駆虫、消化
 白歛 ビャクレン;ブドウ科カガミグサの肥大根。清熱、解毒、止痛、皮膚病
 虵衑 ジャガン?;ヘビイチゴ。切り傷、腫れ物
 白朮 ビャクジュツ;キク科オケラの根茎。利尿、発汗
 桔梗 キキョウ;去痰
 独活 ドッカツ;セリ科ウドの根茎。発汗、鎮痛
 芍薬 シャクヤク;根を乾燥する。補益、行血理気
 王不留行 オウフルギョウ;ナデシコ科の成熟種子。催乳、通経
 玄参 ゲンジン;ゴマノハグサ科の根。咽喉炎、鼻炎
 白止 ビャクシ;セリ科ヨロイグサ。風邪を治療
 白頭公 ビャクズコウ?;オシダ科植物の根茎。駆虫薬、鼻血
 松脂 ショウシ;まつやに。軟膏の基礎剤、粘着付与剤
 麻黄 マオウ;茎や根。発汗、鎮咳、去痰
 夜干;射干(ヤカン)か? アヤメ科ヒオウギの根茎。消炎、利尿、去痰
 薯蕷 ショヨ;やまいも。滋養強壮
 胡麻子 ゴマシ;ゴマの成熟種子。滋養強壮
 紫蘇子 シソシ;シソ科チリメンジソの種子。発汗、解熱
 車前子 シャゼンシ;オオバコの種子。消炎、利尿

 決明子 ケツメイシ;マメ科エビスグサの種子。強壮薬
 莨唐子;莨蕩子(ロートシ)か? ナス科ヘシリドコロの根茎。胃酸過多、胃痙攣、胃痛
 亭藶子 テイレキシ;アブラナ科ナズナの種子。緩下、利尿
 半夏 ハンゲ;サトイモ科カラスビシャリの根茎の外皮。鎮嘔、鎮吐
 牡荊子 ボケイシ;蔓荊子とも、クマツヅラ科ハマゴウの成熟種子。頭痛、感冒
 鹿茸 ロクジョウ 鹿角 ロッカク;鹿の幼角と角。強壮、強精
 枸杞 クコ;ナス科のクコ。血糖降下
 朴消 ボウショウ;硫酸ナトリウムを含む原石の別名。緩下、消化、利尿
 漏蘆 ロロ;キク科植物(諸説あり)の根。清熱、解毒
 牡仲 トチュウ;トチュウ科の樹皮。強壮、強精、鎮痛
 苦参 クジン;マメ科クララの根。健胃、解熱
 人参 ニンジン;強壮、強心、補精
 木斛 モッコク;ラン科タイワンキバナの茎。解熱、健胃、強壮
 栝樓 カロウ;ウリ科カラスウリの根の外皮。解熱、止渇
 石南草 セキナンソウ;バラ科オオカナメモチの葉。血圧降下、腸運動の亢進
 蕪菁子 ブセイシ;スズナの成熟種子。健胃、去痰
 附子 ブシ;キンポウゲ科トリカブトの塊根。利尿、強壮
 支子;巵子(シシ)か? アカネ科クチナシの果実。消炎、止血、解熱
 菖蒲 ショウブ;サトイモ科ショウブの根。健胃、鎮痛
 呉茱萸 ゴシュユ;ミカン科ゴシュユ(カラハジカミ)の果実。健胃、利尿
(3)医心方(982):(in Wikipedia https://ja.wikipedia.org › wiki › 医心方)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

医心方第22巻。医心方の中でも唯一図を持つ巻

医心方』(いしんほう)は、平安時代に宮中医官を務めた鍼博士丹波康頼が撰した、日本に現存する最古の医学書である。

目次:1概要  2訳注一覧  3注釈  4外部リンク

概要[編集]:全30巻、医師倫理・医学総論・各種疾患に対する療法・保健衛生・養生法・医療技術・医学思想・房中術などから構成される。27巻分は12世紀の平安時代に、1巻は鎌倉時代に書写され、2巻と1冊は江戸時代の後補である。本文はすべて漢文で書かれており、代に存在した膨大な医学書を引用してあり、現在では地上から失われた多くの佚書を、この医心方から復元することができることから、文献学上非常に重要な書物とされる。漢方医学のみならず、平安・鎌倉時代の送りカナ・ヲコト点がついているため、国語学史・書道史上からも重要視されている。□□東アジア(特に漢字文化圏)における所謂「古典」というものの扱いは、新しい書物を為す場合の引用源として使用される。つまり、新しい書物は、古い書群から本文を抜き出してきて、編み直したものであるわけである。□□鍼灸医学の書は、明清に至るまで、その殆どが内経などの編み直しと言ってもよい。つまり、由来のわからない文を為すことを忌むのが、東アジアにおける古典の扱いであった。医心方は、この点で非常に優等生的な書と言える。□□医心方は、撰者丹波康頼により984年、朝廷に献上された。これは宮中に納められていたが、1554に至り正親町天皇により典薬頭半井(なからい)家*に下賜された。また丹波家においても秘蔵されていたとされるが、これは少なくとも丹波家の末裔である多紀家(半井家と並ぶ江戸幕府の最高医官)においては、幕末までに多くが失われていたとされ、多紀元堅が復元し刷らせている。幕末に、江戸幕府が多紀に校勘させた「医心方」の元本には、半井家に伝わっていたものが使用された。この半井本は、1982、同家より文化庁に買い上げがあり、1984国宝となっている。現在は東京国立博物館が所蔵している。□□2018年10月16日に、国宝「医心方」のユネスコ「世界の記憶」登録を推進する議員連盟(会長:鴨下一郎)が設立され、ユネスコ「世界の記憶」への登録を目指している[1]

訳注一覧[編集]:槇佐知子訳・注解[2] 『全訳精解 医心方』(全30巻、筑摩書房、1993年-2012年)『巻一 A 医学概論篇』 ※巻一・巻二・巻二十五は2分冊 『巻一 B 薬名考』

『巻二 A 鍼灸篇I 孔穴主治』 『巻二 B 鍼灸篇II 施療』 『巻三 風病篇』 『巻四 美容篇』

『巻五 耳鼻咽喉眼歯篇』 『巻六 五臓六腑』 『巻七 性病・諸痔・寄生虫篇』 『巻八 脚病篇』

『巻九 咳嗽篇』 『巻十 積聚・疝か・水腫篇』 『巻十一 痢病篇』 『巻十二 泌尿器』

『巻十三 虚労篇』 『巻十四 蘇生・傷寒篇』 『巻十五 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽』 『巻十六 腫瘤篇』 『巻十七 皮膚病篇』 『巻十八 外傷篇』 『巻十九 服石篇1』 『巻二十 服石篇2』

『巻二十一 婦人諸病篇』 『巻二十二 胎教篇』 『巻二十三 産科治療・儀礼篇』

『巻二十四 占相篇』 『巻二十五 A 小児篇I』 『巻二十五 B 小児篇II』 『巻二十六 仙道篇』

『巻二十七 養生篇』 『巻二十八 房内篇』 『巻二十九 中毒篇』 『巻三十 食養篇』

注釈[編集]:[脚注の使い方] ^ “日本最古の医書「医心方」のユネスコ登録に向け議連発足”. じほう. 2018年10月20日閲覧。^ 訳者槙佐知子は『『医心方』事始 日本最古の医学全書』(藤原書店、2017年)をはじめ、関連書籍を多く刊行している。

外部リンク[編集]:東京国立博物館所蔵『医心方』 – e国宝

現在、リサーチケミカル(試験研究用試薬)、ファインケミカル(化成品)、臨床検査薬、関連機器・機材を主に扱う企業「ナカライテスク株式会社」がこの半井家と関係している。

「半井(なからい)」のいわれ

(in企業情報 – 半井(なからい)のいわれ|ナカライテスク https://www.nacalai.co.jp › company › story)

半井(なからい)家は、我が国の典薬頭(皇室関係の医療組織の長)として不動の地位を長年保っていました。これは我が国の医家の名門として最高の地位にあったと言えますが、「半井」の本姓は「和気」であり、和気清麻呂の子孫にあたります。さらに十数代遡ると垂仁天皇へ行き着きます。□□和気家は京都御所施薬院の故地(京都御所内の烏丸通りに面した正親町、現在の中立売)に住み、そこで典薬頭として仕えていましたが、その邸内に大井戸があり、その水が極めて清らかで美味であったので、その井戸水の半側で主上の御薬を製し、残りの半側を自家の日常用水に充てていました。そのことが後柏原天皇の叡聞に入り、天皇から「半井」という姓を贈られ、以来「和気」を「半井」と改めました。

和気清麻呂 像(護王神社)

「医心方」:『医心方』(全30 巻)は、日本に現存する最古の医学書です。「医心方」の元本には、半井家に伝わっていたものが使用され、半井家本はその後国宝となり、現在は東京国立博物館が所蔵しています。

※詳細は「e 国宝について」をご参照願います。 https://emuseum.nich.go.jp

また、我々「薬剤師」にとって「くすり」はなくてはならない商品(品物)であるがそれを供給する「医薬品卸」もここ「ナカライ」に関係が深いのは大変興味深い。

*1半井株式会社(なからい)は、京都府京都市中京区堀川通三条上ルに本社を置く主に医薬品・医療機器の卸売りを扱う企業であった。「井筒屋」の号を称する暖簾集団に属する半井萬紹商店を前身としている。「中川安」「中川薬品」「嶋路」は暖簾分けされた分家にあたる。

*2株式会社井筒クラヤ三星堂(いづつクラヤさんせいどう)はメディセオ・パルタックホールディングスグループの一社であり、京都市中京区に本社を置く医薬品医療機器などの卸売りを行う企業であった。

2009年10月にクラヤ三星堂に吸収合併され、株式会社メディセオに商号変更した。

*3和気氏(わけうじ)は、「和気」をの名とする氏族

備前国和気郡(古くは藤野郡と称した)を本拠とした豪族である。垂仁天皇の皇子・鐸石別命(ぬてしわけのみこと)を祖とすると伝えられる。「別氏」とも書く。(かばね)は(きみ)から真人(まひと)、宿禰などを経て774年宝亀5年)に朝臣の姓が与えられた。

【参考資料】

・人と薬のあゆみ-年表 www.eisai.co.jp › museum › history」と「奈良県薬業史略年表」

・薬の歴史 | 樋屋製薬株式会社・樋屋奇応丸株式会社 薬の歴史:執筆 宇治 昭 (薬学博士)

 https://hiyakiogan.co.jp › content › fukuyo › history

・大同類聚方』(808(大同3年)):in Wikipedia https://ja.wikipedia.org › wiki

・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について

・延喜式 – CiNii 図書https://ci.nii.ac.jp › ncid 藤原忠平[ほか]撰 出雲寺, 享保

8(1723)]

・延喜式 http://www.kariginu.jp › engishiki

・薬草に親しむ-「延喜式」の植物 http://www.eisai.co.jp › herb › familiar › statute

・典薬寮へ薬種 – よっちゃんの文明論 https://yottyan.blog.ss-blog.jp ›

・Wikipedia https://ja.wikipedia.org › wiki › 医心方

・企業情報 – 半井(なからい)のいわれ|ナカライテスク https://www.nacalai.co.jp ›

company › story

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