21stAnnualWORLDSymposium 2025でライソゾーム病治療薬の試験データ発表 JCRファーマ

 JCRファーマは5日、21st Annual WORLDSymposium 2025において、同社のライソゾーム病治療薬の研究開発に関する2演題のポスター発表を行ったことを明らかにした。テイ・サックス病、サンドホフ病を対象疾患に開発中のJR-479の非臨床試験結果および、ムコ多糖症II 型患者に対するパビナフスプ アルファ(JR-141)の後ろ向き症例報告について公表したもの。
 同社は、独自で開発した血液脳関門通過技術 J-Brain Cargoを適用した複数のライソゾーム病治療薬候補品の研究開発に注力しており、今回の発表データは、同社の開発品がライソゾーム病治療に対する有効な治療法となる可能性が示された。
 JR-479 の非臨床試験では、JR-479 はヒトトランスフェリン受容体ノックインマウスへの単回投与で血液脳関門を越えて脳内に分布した。また、GM2 ガングリオシドーシスモデルマウスへ JR-479 を反復投与することで、標的組織における基質濃度の減少および病理組織学的な変性の抑制が認められ、モデルマウスが生後120日付近で死亡する一方、JR-479 を投薬したマウスは90%以上の個体が生後270日以降も生存し、延命効果がみられた。
 同結果より、JR-479は、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病、サンドホフ病)患者の治療の候補薬となることが期待される。
 一方、ムコ多糖症II型患者に対するパビナフスプ アルファのの後ろ向き症例報告は、患者報告アウトカムを4年間追跡調査し、ムコ多糖症 II 型患者に対するパビナフスプ アルファの効果を評価したもの。
 同研究開始時に参加した 9 名のうち2名は、104週から208週の間に原疾患の進行により死亡し、残りの7 名は、パビナフスプ アルファを208週間以上静脈内投与された。
 この結果、参加者の71%で筋力が向上し、42%で全般的な運動能力(粗大運動および微細運動)の改善が認められた。さらに、57%で認知機能と歩行能力の改善が、28%で言語能力の改善がみられた。
 また、参加者の50%で行動が改善し、全ての参加者で表情、外見、呼吸パラメータの改善を示した。なお、介護者からは笑顔、アイコンタクト、抱擁などの感情表現の能力が向上したと報告があった。
 追跡調査期間中、以前にみられた改善を維持しただけではなく、特に神経発達や微細運動能力において、新たな改善が継続的に認められた。
 こうした有益な効果の基礎となるメカニズムを解明するためには、実施中のグローバルP3試験を含めさらなる研究が必要と考察される。
 
◆芦田信JCRファーマ代表取締役会長兼社長のコメント
 ライソゾーム病の治療においては、これまでに大きなマイルストーンが達成されてきたが取り組むべき課題はまだ残っている。当社の J-Brain Cargo技術により、治療効果が不十分、あるいは承認された治療法がない生命を脅かす重篤な疾患に伴う神経学的な兆候や症状を治療できる可能性がある。
 今回の発表内容は、4年間JR-141の治療を継続したムコ多糖症 II型患者における患者報告アウトカム、および JR-479における初期の非臨床試験データであり、当社独自のJ-Brain Cargo®技術がライソゾーム病治療の礎を築くものと期待している。

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