小野薬品は23日、ファイザーの「ビラフトビ」について、同剤とセツキシマブ、mFOLFOX6の併用療法が、米国FDAにBRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんのファーストライン治療として迅速承認されたと発表した。
ビラフトビは、 ファイザーが米国、カナダ、南米、中東、アフリカにおけるビラフトビの独占的権利を保有している。小野薬品は、ファイザーと日本および韓国で同剤を商業化する独占的権利をライセンス契約している。
今回の適応症は、治療歴のない患者を対象としたP試験(3BREAKWATER試験)において、ビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6の併用療法によって奏効率と奏効持続期間で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示されたことに基づいて承認されたもの。 この適応症の承認が継続されるには、臨床的有用性が検証されることが条件となる。。今回の迅速承認は、進行性または再発性のがんに対する新たな治療薬の開発と承認を支援することを目的としたFDAのProject Front Runnerのもとで実施される業界初の承認の一つである。
現在進行中の BREAKWATER試験は、BRAFV600E 遺伝子変異を有し、前治療歴のない進行・再発の結腸・直腸がん患者を対象に、ビラフトビとセツキシマブおよび化学療法(mFOLFOX6)との併用もしくは非併用を評価するものである。
同試験は、BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんのファーストライン治療としてBRAF標的治療レジメンを評価する唯一のP3試験となる。同試験では、2つの主要評価項目のうちの一つである奏効率(ORR)について、ベバシズマブの併用もしくは非併用の標準化学療法群が40% (95%信頼区間: 31 – 49)であったのに対し、ビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6の併用群は61% (95%信頼区間: 52 – 70)で臨床的に有意な改善を示した(p=0.0008)。
奏効期間(DoR)の中央値は、ベバシズマブの併用もしくは非併用の標準化学療法群では11.1カ月(95%信頼区間:6.7 – 12.7)であったのに対し、ビラフトビの併用療法は13.9カ月(95%信頼区間:8.5 – 推定不能)であった。
BREAKWATER P3試験は現在進行中でおり、全データセットから得られる解析結果が近日開催される学会で発表される。
BREAKWATER試験におけるビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6の併用療法の安全性プロファイルは、これまでに各薬剤で報告されている安全性プロファイルと一貫していた。新たな安全性のシグナルは認められなかた。
報告された主な副作用(25%以上)は、末梢神経障害、悪心、疲労、発疹、貧血、下痢、食欲減退、嘔吐、出血、腹痛および発熱であった。ビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6併用投与群の12% が、ビラフトビの永続的な投薬中止に至る副作用を経験し、報告された主な副作用(1%以上)には、リパーゼ値上昇が含まれていた。
同申請は、FDAによって優先審査に指定され、Real-Time Oncology Review (RTOR) パイロットプログラムを用いて、FDAのProject Orbisに基づき審査された。カナダとブラジルを含むProject Orbis参加国の間で、並行して本申請の審査が進められている。
同じ適応症でビラフトビ併用療法の追加承認を将来的に申請できるよう、他の国の規制当局とも BREAKWATER試験のデータについて協議を行っている。今回の迅速承認は、治療歴を有する、BRAFV600E遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんの成人患者の治療薬としてのビラフトビとセツキシマブの併用療法のFDAによる承認に続くものである。
◆BREAKWATER試験の共同主任研究者であるScott Kopetz氏(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター、消化器腫瘍内科教授兼副部長、M.D.、Ph.D.、FACP)のコメント
これまでBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんと診断された患者さんの治療選択肢は限られており、予後は不良であった。この患者集団に対してファーストライン治療として使用可能なBRAF標的療法を特徴とする最初で唯一の併用療法としてエンコラフェニブを用いたレジメンは、速やかで持続的な高い奏効率を示した。
これにより、持続的な疾患治療が可能になることを示しており、患者さんに新たな希望をもたらす。
◆ Chris Boshoffファイザーオンコロジー開発担当責任者(ファイザーエグゼクティブ・バイス・プレジデント、M.D. 、Ph.D.)のコメント
ファイザーは10年以上にわたり、分子標的がん治療薬開発のパイオニアとなってきたが、本日のビラフトビ 併用療法の迅速承認によって、BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がん患者さんは、このがんを引き起こす遺伝子変異を特異的に標的とする治療薬を含むファーストライン治療の選択肢を手にすることになった。
この成果は、治療が最も困難ながんのひとつであるBRAF遺伝子変異を有するがんを対象として画期的な治療薬の開発を進めてきた当社の新たな功績となるものである。
脳関門を透過する次世代のBRAF阻害薬の創薬と開発を含めて、当社は今後もポートフォリオの拡充を続けていく。
◆Michael Sapienza Colorectal Cancer Allianceチーフ・エグゼクティブ・オフィサーのコメント
がんの進行・再発の発覚は、結腸・直腸がん患者さんとその家族にとって脅威に感じる瞬間である。進行・再発の結腸・直腸がんと診断された患者さんの予後は近年わずかに改善したが、BRAF遺伝子変異を有する場合はそうとは言えず、こうした患者さんは残念ながら急激な病勢進行や予後不良に見舞われている。
本日、BRAFV600E 遺伝子変異を有する結腸・直腸がんを対象として、治療歴のない患者さんに使用できるBRAF標的治療薬を含む初めての併用療法が承認された。
これによって、こうした患者集団に新たな希望をもたらすとともに、この疾患を根絶するという私たち全員の使命の実現に向けた大きな一歩となる。