田辺三菱製薬のパートナー探し 持ち分比率ゼロも含め様々な可能性検討 三菱ケミカルグループ筑本学代表執行役社長

「田辺三菱製薬の切り離し決断」報道は否定

筑本氏

 三菱ケミカルグループは13日、東京都内で三菱ケミカルグループ経営方針説明会を開催し、筑本学代表執行役社長がヘルスケアを含めた事業制度の検討について言及。ファーマについては、「しっかり稼いで、パテント対策もしっかりと打てている。唯一の問題は、パイプラインの拡充にある」と指摘し、「我々だけで独自に大量の資金を投入することが難しければ、パートナーを探していくことがさらなる成長の道筋である。パートナー探しは、当社の持ち分比率ゼロも含めて様々な可能性が考えられる」と明言した。
 さらに、「我々は、これまで田辺三菱製薬を切り離す決断をしたことはない」と言い切り、パートナーを探すまでの時間ついては「少し掛かるかもしれないし、それほど要しないかもしれない。何とも言い難い」とした上で、「今、これだという答は持ち合わせていない。何も決まっていない中で、言えることは何も無い」と訴求した。
 三菱ケミカルグループ経営方針説明会では、筑本社長が「KAITEKI Vision 35」 と「 新中期経営計画 2029」について説明された。筑本氏は、まず、このタイミングでのKAITEKI Vision 35策定理由を「6年前にKAITEKI Vision 30を策定したが、その頃から選択と集中ができておらず、従業員と経営者の気持ちが乖離していた。改めて作り直す必要性があった」と述べた。
 その上で、KAITEKI Vision 35 注力事業領域として、①グリーン・ケミカルの安定供給基盤(化学産業のグリーン化をグローバルにリードする)、②環境配慮型モビリティ(環境対応に伴うモビリティの進化を素材で支える)、③データ処理と通信の高度化(半導体高度化のエコシステムを支える)、④食の品質保持」、⑤新しい治療に求められる技術や機器(新しい治療を医療グレードの高機能素材で支える)を列挙。
 2035年の事業ポートフォリオを「ケミカルズ事業」(スペシャリティマテリアルズ、MMA&デリバティブズ、ベーシックマテリアルズ&ポリマーズ)、「グループ事業」(ファーマ• 産業ガス)として、目標業績としてコア営業利益24年2900億円(内訳け:ケミカル事業550億円、グループ事業2350億円)、29年5700億円(同:2400億円、3300億円)、35年約9000億円(同:約5500億円、約3500億円)を掲げた。また、ファーマの事業価値最大では「ベストパートナー探索がポイントになる」と指摘した。
 実行の組織・プロセス・リソースの全体像では、「より速く顧客課題を解決するため、社会のニーズと最適なソリューションを徹底的に”つなぐ”ことが重要となる」と力説し、「グローバル連携、市場密着において“つなぐ”ことで利益性を向上させ、“色々な会社との繋がり作り”を評価する人事制度を策定する」考えを示した。
 一方、新中期経営計画 2029は、KAITEKI Vision 35 を達成するための中間点として策定したもので、「事業選別の3つの基準」と「規律ある事業運営の3原則」を用いてポートフォリオ変革と収益改善の実現を目指す。
 事業選別の3つの基準は「Visionとの整合性」、「競争優位性」、「成長性」で、基準に満たない事業は整理ポストへ移行し、撤退する。また、規律ある事業運営の3原則では、「価格政策」、「投資判断」、「資産最適化」を掲げている。
 新中期経営計画2029の 経営数値目標は、コア営業利益5700億円(24年予想2900億円)、売上収益4兆9500億円(同4兆4700億円)。その中で、ファーマのコア営業利益は1070億円(同650億円)。「既存事業の改革でキャッシュを創出、選別したパイプラインに集中し、コア営業利益額を約2倍にする」
 ファーマは、主要施策として「資産最適化」(国内事業の構造改革を通じた大胆なコスト最適化)、「販売増」(主力3製品の拡販)、「投資効果(R&D)」(ポスト・ラジカヴァを見据えた開発後期のパイプライン強化)を掲げる。「効率化は着々と行っている。コストも大きく下げている。来期以降には、大きな合理化メリットが出てくる」と評価する筑本氏。
 その一方で、「R&Dは、もともと免疫疾患と精神疾患が強く、がんについても良いシーズがあり期待している」とした上で、「ファーマの唯一の問題はパイプラインの拡充にあり、よりお金を集中して使うことが重要となる。我々だけで大量の資金を独自に投入することが難しければ、多くの資金をつぎ込んでくれるベストパートナー探しがキーポイントになる」と訴求した。
 辻村明広三菱ケミカルグループ執行役エグゼクティブバイスプレジデントファーマ所管も、「田辺三菱製薬は、臨床後期のパイプラインは多くないが、前臨床、臨床前期にはかなり有効なものがある。このような期待のパイプラインを米国で開発して貰ったりする相手をパートナーと認識している」と断言。
 その上で、「我々は、高分子、生物学的製剤では捉えらえることができない疾患で、かつ副作用の少ない低分子、中分子の経口薬の開発を考えている。そこに優先的にリソースを使っていく」R&D戦略を示した。
 主力3製品の進捗状況にいては筑本氏が、「ND0612(運動症状の日内変動を有するパーキンソン病治療薬)は、FDAとの話し合いが終了し、米国で約1年半後に上市する予定にある。マンジャロ(2型糖尿病治療薬)は、抗肥満症の効能追加でさらに伸長が期待できる。ラジカヴァ(ALS、筋萎縮性側索硬化症治療薬)もパテント戦略を粛々と行っておりその価値が伸びている」と報告した。
   

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