塩野義製薬は13日、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、グローバルP3相無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験(SCORPIO-HR 試験)においても、日本、韓国、ベトナムで実施したP2/3試験SCORPIO-SR試験同様に「優れた抗ウイルス効果」と「良好な症状改善傾向」、「高い安全性」が確認されたと発表した。
SCORPIO-HR試験の試験結果は次の通りで、詳細な結果は今後学会等で発表する予定である。
【SCORPIO-HR試験の試験結果】
・ゾコーバ投与により、プラセボ投与群との比較で、COVID-19 の15 症状の消失までの時間短縮が認められた。だが、米国FDAと当初に合意した統計学的手法を用いた主要評価項目の検定では、明確な有意差を示すまでには至らなかった。
・一方で、アジアで実施した第2/3 相臨床試験 Phase 3 part(SCORPIO-SR 試験)と同様の、事前規定した副次評価項目に対する別の解析方法を用いた検定では、有意な短縮(p<0.05)が認められた。
・COVID-19 の罹患後症状(いわゆる後遺症)については、投与後3 ヵ月時点において、全体として差は認められなかったが、「罹患前の健康状態に戻った」および「倦怠感はない」と報告した患者の割合が高い傾向にあった。投与後6 ヵ月時点の調査も含め、今後追加で詳細な解析を予定している。
・ゾコーバ投与により、ウイルスのRNA 量および感染性を有するウイルス(ウイルス力価) のいずれにおいても、副次解析で有意な抗ウイルス効果(p<0.05)が確認された。
さらに、SCORPIO-SR 試験と同様に、症状再燃を伴うウイルスのリバウンドは観察されなかった。
・安全性については、プラセボ投与群との比較で、有害事象の発現頻度に差はなく、高い安全性ならびに忍容性が確認された。特に、味覚異常(薬剤関連の異常な味覚)は報告されなかった。
・オミクロン株が主感染原因と考えられる本試験では、両群でCOVID-19 に関連する死亡例はなく、入院は数例のみであった。そのため、オミクロン株流行前に、ワクチン未接種で、重症化リスク因子有する患者に対する有効性評価指標として汎用されていた、重症化抑制効果を評価することは困難であった。
SCORPIO-HR試験では、ゾコーバの1日1回、5日間経口投与により、主要評価項目(COVID-19の15症状が持続的に消失 [2日間の症状消失維持] するまでの時間のプラセボ投与群との比較)は達成しなかたが、優れた抗ウイルス効果や、アジアで12歳以上の軽症/中等症患者を対象に実施した、P2/3試験 Phase 3 part(SCORPIO-SR試験2)と同様に事前規定した副次解析を行った際には、プラセボ投与群と比較して、有意な症状消失までの時間の短縮(P<0.05)が認められた。
また、ゾコーバ投与により、投与開始時からのウイルスRNA変化量は、副次解析でプラセボ群と比較して有意に減少し、優れた抗ウイルス効果が確認され、SCORPIO-SR試験と同様に、症状再燃を伴うウイルスのリバウンドは観察されなかった。
COVID-19は、SARS-CoV-2感染後に生体内でウイルスが増殖することで、さまざまな臨床症状が起こる急性呼吸器感染症である。SCORPIO-HRでは、SCORPIO-SR試験と同様に、重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無、過去の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の有無にかかわらず、幅広い軽症/中等症の非入院COVID-19患者を対象に試験を実施した。
だが、実際には、SCORPIO-SR試験と比較して、治療開始時のウイルス量が低い患者の占める割合が高い結果となり、ウイルス量の早期低下による臨床症状の改善効果を検証することが困難であった。とはいえ、こうした条件下においても、ゾコーバ投与により症状の改善傾向が示されたことは、臨床的に意義があると考えられる。
SCORPIO-HR試験では、SCORPIO-SR試験と同様に、優れた抗ウイルス効果と良好な症状改善傾向が確認された。塩野義製薬は、規制当局と引き続き協議を行い、安全性が高く、優れた抗ウイルス効果と症状改善効果を有するCOVID-19治療薬を、全世界の患者に提供できるよう引き続き取り組んでいく。
◆Simon Portsmouthシオノギインク(米国)シニアバイスプレジデント兼臨床開発責任者(医学博士)のコメント
今回の結果は、ゾコーバの優れた抗ウイルス効果を裏付けるものであり、これまでアジアで集積された、本薬の臨床データとリアルワールドエビデンスをさらに強化するものである。
本試験では、本薬の安全性面での新たな懸念は確認されなかった。また、本薬はプラセボと同様の忍容性があり、薬剤性の味覚異常は報告されていない。引き続き規制当局と連携し、多くの国々でエンシトレルビルが使用できるよう取り組んでいく。