乳酸菌が生産する多糖体のインフル感染予防と二次感染リスク軽減効果を確認 昭和大学と明治

 昭和大学と明治は18日、乳酸菌(OLL1073R-1株)が産生する多糖体(R-1 EPS)について、ヒト肺上皮由来培養細胞においてインフルエンザウイルス感染抑制と、細菌の二次感染リスク軽減効果が確認されたと発表した。同研究成果は、昨年11月13日に第69回日本ウイルス学会学術集会で発表されたもので、科学雑誌「Letters in Applied Microbiology」に掲載されている。
 なお、細菌の二次感染は、インフルエンザウイルス感染後に起こりやすく、重度の肺炎の原因にもなっている。
明治は、これまでにOLL1073R-1株で発酵したヨーグルトについて、風邪罹患リスク低減効果やインフルエンザウイルスに反応する唾液中IgA抗体量の増強効果などを確認してきた。
 インフルエンザウイルスは、呼吸器に感染することで高熱・咽頭痛などの症状を引き起こすが、同感染をきっかけに細菌感染を引き起こし(二次感染)、重度の肺炎になることがあると報告されている。
 同研究では、R-1 EPSがインフルエンザウイルスの感染抑制と、さらに感染をきっかけに発症しやすい肺炎の原因にもなる黄色ブドウ球菌による二次感染リスクを軽減することが明らかとなった。これにより、R-1 EPSがインフルエンザウイルス感染ならびにその後の細菌性肺炎を予防できる可能性が示唆された。
 第76回日本栄養・食糧学会大会および第18回日本食品免疫学会学術大会では、ヒト肺細胞を用いたモデル試験において、R-1 EPSによるヒトコロナウイルス229Eおよび新型コロナウイルスの感染抑制効果を発表している。これらの研究により、R-1 EPSはインフルエンザウイルスや各種コロナウイルスなど、さまざまなウイルスの感染を抑制する可能性が示唆された。研究方法の詳細と結果は、次の通り。

【研究方法】
 R-1 EPSを添加、または添加なしで培養したヒト肺由来上皮培養細胞にインフルエンザウイルス(PR8株〔H1N1〕)を感染させた。感染後の細胞を6時間培養して細胞内ウイルス量を測定するとともに、肺炎の原因菌の一つである黄色ブドウ球菌が肺細胞に付着する際に利用する接着因子であるCEACAM-1の遺伝子発現量を解析した。さらに、感染6時間後に実際に黄色ブドウ球菌の細胞付着実験を実施した。

【結果】
 R-1 EPSを添加したヒト肺細胞において、
(1)インフルエンザウイルス感染後の細胞内ウイルス量が有意に減少した(図1)。

図1

(2)インフルエンザウイルス感染後のCEACAM-1の遺伝子発現量が有意に減少した(図2)。

図2

(3)黄色ブドウ球菌の細胞への付着数について減少傾向が認められた(図3)。

図3

 R-1 EPSはヒト肺細胞において、インフルエンザウイルスの増殖の抑制と、接着因子の1つであるCEACAM-1の発現を抑制することで黄色ブドウ球菌の細胞付着を防ぎ、インフルエンザウイルス感染後の細菌性肺炎を予防できる可能性が示唆された。

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