ドクタートラストが、残業時間とストレスの関係をストレスチェック結果から分析したところ、残業が多い人のストレスを左右するのは「仕事の満足度」や「ポジティブ感」であることが判明した。
ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者200万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。今回は、2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、月の残業時間についての回答が得られた4万8802人のデータをもとに、残業時間とストレス度合の関係性を調査したもの。調査結果のポイントは、次の通り。
・ 残業時間「10時間未満/月」の群が、全体の過半数を占める
・ 高ストレス者率が最も高いのは、残業時間「30時間以上/月」の群(18.9%)
・ 高ストレス者率が最も低いのは、残業時間「10時間未満/月」の群(12.9%)
・ 残業時間「30時間以上/月」の群の中で、ストレスの高い群と低い群で最も差が出た設問は「仕事に満足だ」
これらの調査結果細については、ストレスチェック研究所コンサルタントの千葉晶子氏がYouTubeで解説動画を公開している。
ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促し、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、4つの分析区分(テレワーク・勤続年数・残業時間・職種)の中うち、2区分を無料で分析している。今回は、このうち「残業時間」について、「高ストレス者率」や「各設問の回答」との関係を調査した。調査概要および調査結果の詳細、考察は次の通り。
【調査概要】
◆調査期間:2022年4月1日~2023年3月31日
◆調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス2022年度契約企業・団体
◆有効受検者数:4万8802人
【調査結果の詳細】
図1は、調査対象4万8802人の「残業時間」への回答内訳である。最も多かったのは、「10時間未満/月」、以下「10時間以上30時間未満/月」、「30時間以上/月」であった。
また、残業時間「10時間未満/月」の群が、全体の過半数を占める結果となった。なお、「月30時間の残業」とは、週5勤務の場合、1日平均1時間20分程度の残業時間である。
調査結果
1、 高ストレス者率が最も高いのは残業時間「30時間以上/月」、最も低いのは「10時間未満/月」
高ストレス者率とは、実際に受検をした人の中で、高ストレスと判定された人がどれくらいいるかを示した割合である。
<高ストレス者とは>
・ ストレスの自覚症状が高い人
・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人
図2は、月の残業時間別の高ストレス者率である。「30時間以上/月」の群における高ストレス者率は、18.9%と最も高く、次に「10時間以上30時間未満/月」の群で15.5%、最も低かったのが「10時間未満/月」の群で、12.9%という結果となった。
2、 残業時間「30時間以上/月」で、ストレスの高い群と低い群を比較して最も差が出た設問は「仕事に満足だ」
ドクタートラストのストレスチェックは、個人のストレスレベルを5段階(A~E)で評価している。Aはストレスが最も低く、Eが最も高いとされる。
図3は、残業時間別に、各ストレスレベルの割合を示している。
図4は、最も高ストレス者率が高い「30時間以上/月」の群のうち、ストレスレベルが低い群(A、B)と高い群(D、E)を比較し、差が大きい設問をランキング化したものだ。1位は「仕事に満足だ」、2位「仕事をしていると活力がみなぎるように感じる」、3位「ひどく疲れた」、以下「仕事でエネルギーをもらうことで、自分の生活がさらに充実している」、「だるい」の順にランクインした。
これは、30時間以上/月残業していても、ストレスが低い人と高い人では、仕事の満足度やポジティブ感、疲労の感じ方などに大きな差が生まれていることを表している。
【考察】
今回の調査で、残業時間の割合を調査したところ、「10時間未満/月」の群が全体の過半数を占めた。また、残業時間「30時間以上/月」の群は高ストレス者率が最も高く、逆に「10時間未満/月」の群が最も低い結果となった。
さらに、高ストレス者の最も多い「30時間以上/月」の群をストレスレベル別(A、BとD、E)で比較したところ、仕事の満足度や活力、疲労の感じ方などに大きな差があることがわかった。
残業時間が月に30時間を超えていても、仕事への満足度が高い人がいることから、必ずしも残業が悪いとは言いきれない。ただし、残業時間は、労働基準法にて原則「月45時間・年360時間」までと定められており、労働時間が長くなると脳血管疾患および虚血性心疾患などの発症リスクを高める。
また、残業時間が長くなれば睡眠時間が短くなり1、その結果として高ストレス者率が高くなる傾向がある。そのため、会社として従業員の残業時間を把握し、必要であれば業務の割り振りを見直すなどのサポートをしていこう。