ドクタートラストが実施した「就寝1時間前のスマホ・PC操作頻度」とストレス度合の関係性を調査によると、高ストレス者が最も少ないのは、寝る前スマホ・PC習慣「週4~6日」であることが判明した。
ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者163万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。今回は2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、就寝前のスマホ・PC操作について回答が得られた約5600人のデータをもとに「就寝1時間前のスマホ・PC操作頻度」とストレス度合の関係性を調査したもの。調査概要や調査結果のポイントは、次の通り。
【調査概要】
◆調査期間:2022年4月1日~2023年3月31日
◆調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス2022年度契約企業・団体の一部
◆対象人数:5637人
【調査結果のポイント】
・全体の70%超が就寝前にスマホ・PC操作を毎日している。まったく操作しないのは5%未満
・寝る前のスマホ・PC習慣がある人は、週1~3日程度減らすとストレスが少なくなる可能性がある
・就寝前のスマホ・PC操作頻度が高いほど「心身の負担」や「仕事の量」、「役割葛藤」の設問において不良回答率が高い
ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促し、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、ストレスチェックと同時に、生活習慣に関する6つの質問を追加できる。今回は、生活習慣に関する追加設問の一つである「就寝前1時間以内のスマホ・PC操作頻度」について、「高ストレス者率」「各設問の回答」との関係や傾向を分析した。
※ ①毎日、②4~6日/週、③週に1~3日/週、④全くない、の4択形式
回答内訳と割合
図1は、調査対象約5,600人の「就寝前1時間以内のスマホ・PC操作」の回答内訳である。回答者の割合が最も大きいのは「毎日」で70.7%、以下「4~6日/週」、「1~3日/週」、「全くない」と続く。
全体の95%以上が少なくとも週に1日は、また70%以上が毎日、就寝前にスマホ・PC操作をしていることがわかった。
調査結果
1、寝る前のスマホ・PC習慣がある人は週1~3日程度減らすとストレスが少なくなる可能性がある
高ストレス者率とは、実際に受検をした人の中で、高ストレスと判定された人がどれくらいいるかを示した割合である。
<高ストレス者とは>
・ ストレスの自覚症状が高い人
・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人
図2は、就寝前のスマホ・PC操作頻度別の高ストレス者率である。操作頻度が高くなるほど高ストレス者率も高くなると予想していたが、高ストレス者率が最も高かったのは、操作頻度が「毎日」の群で17.0%、以下「1~3日/週」の群16.3%、「全くない」の群14.4%、「4~6日/週」の群11.7%と続く。この結果から、寝る前のスマホ・PC習慣がある人は週1~3日程度減らすとストレスが少なくなる可能性があるのではないかと推測される。
2、10~60代の5割超が週4日以上、就寝前にスマホ・PCを操作している
図3は、年代別の就寝前のスマホ・PC使用頻度である。10~30代では8割以上が毎日、40~60代では半数以上が週4日以上は就寝前にスマホやPCを操作していることがわかった。
なお、「全くない」の群の割合は年代が上がるにつれ増え、70代においては4割以上が就寝前にスマホ・PC操作をしていない。
3、就寝前のスマホ・PC操作頻度が高いほど「心身の負担」や「仕事の量」、「役割葛藤」の不良回答率が高い
ストレスチェックは、各設問に対して「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4択形式で回答する。同分析では、「そうだ」「まあそうだ」を良好回答群、「ややちがう」「ちがう」を不良回答群として算出していく。
図4は、就寝前のスマホ・PC操作頻度「毎日」の群と、「全くない」の群で不良回答率の差が大きかった上位5つの設問を示している。
最も差が大きかった設問は「首筋や肩がこる」(「毎日」の群と「全くない」の群での差が15.2%)であり、以下「時間内に仕事が処理しきれない」(同10.4%)、「複数の人からお互いに矛盾したことを要求される」(同9.9%)、「不安だ」(同9.9%)、「怒りを感じる」(同7.1%)であった。
【考察】
今回の調査では、対象者の95%以上が1週間のうち最低1日は就寝前にスマートフォンまたはPCを使用していた。特に、10~60代では半数以上が週4日以上就寝前にスマホ・PC操作をしていることから、世代を問わず、就寝直前までスマートフォンが手放せなくなっている事実が明らかになった。
また、寝る前にスマホ・PCを操作する頻度が高い人ほど「心身の負担(首筋や肩がこる)」や「仕事の量(時間内に仕事が処理しきれない)」、「役割葛藤(複数の人からお互いに矛盾したことを要求される)」等の設問に対する回答が不良傾向にあることもわかった。
スマホやPCは場所や時間を問わず使用できるメリットがある反面、テレワークで公私の区別がつけにくくなったり、ブルーライトによる睡眠への影響等のデメリットも考えられるため、質の高い睡眠を取るためには、時間の区切りをつけて使用するなどの意識が重要だ。
また、寝る前のスマホ・PC習慣がある人は週1~3日程度減らすとストレスが少なくなる可能性がある。就寝前にスマートフォンを操作することが習慣になっている人は、ブルーライトカット眼鏡の使用や、スマホ・PCを枕元に置かないなどの工夫をした上で、少しずつ就寝前のデジタルデトックスを心掛けよう。