人生100年時代 × デジタル社会の総合的なヘルスリテラシー国際調査結果公表 ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル カンパニー

 ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル カンパニーは8日、「My Health, Myself ― 私の健康のために、私ができること。」プロジェクトによる初の調査 「人生100年時代 × デジタル社会の総合的なヘルスリテラシー国際調査」結果を公表した。
 同調査は、日本・アメリカ・イギリス・オーストラリア・中国・フィンランドの6カ国における20~60 代の3000人を対象に国際比較分析したもの。その結果、日本人のヘルスリテラシー、「情報収集・判断」・「行動」・「デジタル活用」・「コミュニケーション」における自己評価は他国より低い結果となり、健康・医療情報の判断、適切な医療受診、症状の説明への自信がく。痛み・苦痛を我慢しがちで、“健康”寿命延伸への意欲は高いことが判明した。
 「人生100年時代」を迎えた現代社会では、健康・医療の重要度がこれまで以上に増すだけでなく、デジタル化がますます促進される。我々が「自身にとって最もよい人生を送る」ためには、情報を正しく判断し、適切な選択や行動をして、デジタルテクノロジーを含めたさまざまなリソースをうまく活用していく「力」が大切になってくる。
 同調査は、今の日本において、これらの「力」がどれほど備わっているかを明らかにするために実施された。調査の結果、日本の生活者のヘルスリテラシー自己評価は、6カ国中最も低い5.4点であった。また、医療・健康に関する「情報の収集・判断」、「行動」、「デジタル活用」、「コミュニケーション」全般において、他国より低い傾向が明らかになった。
 これからの時代における「主体的に健康や医療を選択していくためのカギ」として、同調査の監修者である京都大学大学院医学研究科健康情報学の中山建夫教授は次のように話す。
 「正しい知識を身につけることに加え、『どんな人生を送りたいか』について考えることで、とるべき行動が見えてくることも多くなり、主体的に適切な健康・医療を選択するための初めの一歩になるだろう」。
 さらに、「デジタルツールを日常の健康管理に活用している人は日本が6カ国中最も少ない結果であったが、使っている人は利便性を感じており、また医療におけるデジタル活用を望ましいとするヒトも約4割いた」と紹介。その上で、「ツールも使いながらご自身の“健康の現在地”を把握して、必要な際に適切に医療機関を受診することが大切である」と強調する。

 調査概要、情報収集・判断、行動、デジタル活用、コミュニケーションの詳細および、京都大学大学院医学研究科健康情報学 中山健夫教授らのコメントは、次の通り。

【調査概要】調査対象国・サンプル数:6カ国20代~60代3,000名 [日本(東京、大阪)、アメリカ(ニューヨーク、ロサンゼルス)、イギリス(ロンドン、マンチェスター)、オーストラリア(シドニー、メルボルン、ブリスベン)、中国(北京、上海)、フィンランド(ウーシマー、ピルカンマー、南西スオミ)各国500名]。
調査期間:2023年10月26日~2023年11月7日。
 調査方法:インターネット調査。調査機関:電通マクロミルインサイト。調査主体:ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー。※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入している。合計が100%にならない場合がある。
【情報収集・判断】
へルスリテラシー自己評価で、日本は6カ国中最も低い5.4点(10点満点)

 調査対象者のヘルスリテラシー(健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力)の自己評価について、日本は10点満点中平均5.4点と6カ国中で最も低いスコアとなった。
 また、健康や病気の症状・治療法に関する情報を「判断できるか」尋ねたところ、「できる(できる+少しはできる計)」と回答した人の割合が、日本以外の5カ国は7~9割であったのに対し、日本は6割以下となっている。「収集できるか」についても、日本が6カ国中最も低い結果となっている(参考資料)。

医療情報が正しいか誤っているかの判断基準がわからないと考える日本の生活者は3割以上

 医療に関する情報で困っていることとして、全ての国で「いろいろな意見があり判断しづらい」が最多(約4~5割)であった。また、「正しい情報か間違った情報か判断基準がわからない」と回答した人は、他国では約1~2割だったのに対し、日本は約3割であった。

「健康」の定義を「肉体的、精神的、社会的に満たされた状態」と考えている人が他国より少ない日本

 世界保健機関(WHO)は、健康を「病気ではないとか、弱っていないということではなく、 肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態であること」と定義しているが、この認識を持つ回答者は日本が最も少なく、 25.2%であった。
 一方で、日本は「 寿命を延ばしたい」人は最も少なかった( 19.4%)ものの、各国とも「 健康寿命を延ばしたい」人は半数を超え(日本: 51.2%)、両者の差が最も大きかったのは日本という結果であった。
 なお、健康寿命については、「自国の健康寿命の平均年齢を知っている」、「平均寿命と健康寿命のギャップをなくすことが大切な理由:社会の生産性向上に貢献できる」で「知っている」割合は日本が最下位で約 2割でした(参考資料)。

【行動】
「適切な医療受診」や「受診時の症状説明」が「できる」 日本は6カ国中最下位

 「不調や違和感が生じた時に、その症状に応じて、適切なタイミングで適切な医療施設・診療科を受診すること(=適切な医療受診)」や「医師に自分の症状を正確に伝えること」ができるか、という問いに対して、「できる(できる+少しはできる計)」と回答した割合は、日本以外の5カ国はいずれも9割前後であったのに対し、日本は7割前後にとどまった。

 また、日本人の死因上位にあがる三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)の予兆を感じた時の適切な行動に関して、日本は他の5カ国と比較して「適切な行動がとれる」と回答した割合が低く、健康診断・がん検診で再検査が必要になった時に「適切な行動がとれる」と回答した割合も6カ国中で最下位という結果であった(参考資料)。

 「すぐに相談できる医療機関(医療関係者を含む)がある」日本の生活者は約半数

 不調や違和感が生じた時に、すぐに相談できる医療機関(医療関係者を含む)があるかを尋ねた結果、日本は53.8%で6カ国中、最も低い割合であった。最も割合が高かったのはアメリカ(88.0%)で、その他イギリス・オーストラリア・中国・フィンランドも約7~8割であった。

「原因がはっきりしない不調を感じた時に、どのような行動をとりますか?」という問いに対しては、日本は「様子をみる」(63.0%)、「ウェブサイトで調べる」(58.4%)が最も多い結果でした(参考資料)が、「医療機関を受診する」と答えた人にその理由を尋ねると、「自己判断せずに、医師(専門家)が判断すべきだと思うから」を選択した割合が6カ国中最も高く71.4%でした。

慢性的な痛みや苦痛を感じても「我慢できる」と考える日本の生活者は約6割

 日常生活で慢性的な痛みや苦痛を感じながら我慢をしている人の割合は、フィンランドが最も多く55.9%、日本は32.3%であった。我慢をしている理由を尋ねたところ、「我慢できるくらいの痛み・苦痛だから」と回答した割合は日本が最も多く60.4%に及んだ。

【デジタル活用】

健康管理にデジタルツールを活用している割合が日本は最も低いスコア。最も高い中国は8割以上

医療におけるデジタル活用を望ましいと思う人は日本約4割

 近年、スマートウォッチ、活動量計、スマートフォンの健康管理アプリなどのデジタルツールを活用し、健康管理がしやすくなっているが、調査でデジタルツールを使って健康状態を把握しているかを聞いたところ、日本は6カ国中で最下位の39.2%となった。
 使用している人は、「手軽に健康状態を把握できる」ことを理由として最も多く挙げていた(参考資料)。

 さらに、「医療(診察・診断・治療等)におけるデジタル化」について、「デジタル化やデータ活用が進むことは望ましい」と回答した人は、日本においては約4割であった(日本:42.0%、アメリカ:32.6%、イギリス:35.6%、オーストラリア:33.8%、中国:53.4%、フィンランド:56.4%。詳細・グラフは参考資料)。

健康管理のデジタル活用意識はフィンランドが高い傾向

病気の早期発見・治療、健康管理、より適切な受診に各国で期待

 日常生活の健康管理において、デジタル化やデータ活用が広がることで期待できることを尋ねたところ、「病気の早期発見・早期治療」、「自分の健康管理」、「より適切な治療が受けられる」の項目の回答割合が全体的に高く、日本は多くの項目で回答割合が他5カ国を下回っている。他国では回答割合が約2~5割と幅はあるものの、「治療精度の向上」や「自分の情報を医療者に伝えやすくなる」、「国の医療費の最適化につながる」といった期待が持たれていることも明らかになっている。

【コミュニケーション】
受診時に医療関係者と対話ができているという自信のある日本の生活者は4割以下

 「受診の際に医療関係者(医師、薬剤師、看護師など)と対話ができるか」を尋ねたところ、「できる」と回答した割合は、日本は4割以下にとどまり最も低い結果となった。他5カ国はいずれも5割以上となり、アメリカは約7割が「できる」と回答している。

 「医療機関で受診する際、医師とのコミュニケーション」において自身に当てはまるものについては、「医師と話す前に、医師と話すことや質問したいことを整理している」では、日本・中国は5割以下にとどまっている。
 また、医師との会話において、日本は「医師と話すとき、緊張しないで話すことができる」(32.8%)、「治療中や治療後の日常生活のQOLも踏まえて治療について自分の意志を伝えることができる」(10.2%)「診察時に、自分の思いや価値観について話し合っている」(4.2%)のいずれの項目においても6カ国中最下位という結果であった。

治療方針の決定における、主体的関与の意識が6カ国中最も低い日本

 治療法を検討する際の主体的関与に対する意識を尋ねたところ、「主体的に関与できる(できる+少しはできる計)」「主体的に関与したい(そう思う+ややそう思う計)」のいずれにおいても、日本は6カ国中最も低く、7割以下となった。
 また、「治療方針の決定に主体的に関与できるようになるために必要なこと」について尋ねた結果も、日本は他国との意識差が見られた(参考資料)。 


【コメント】
◆同調査監修者の中山健夫京都大学大学院医学研究科健康情報学教授のコメント

中山氏

 「ヘルスリテラシー」というと、少し難しく聞こえるかもしれない。健康・医療情報を理解して活用する力はもちろん大事だが、「自分が大切にしていること」を理解し、理想とする人生のために必要な行動を中長期的に考える力も大切なポイントである。
 今回の調査では、日本人のヘルスリテラシーの自己評価が6カ国中最低の5.4点となり、「不調を感じた際の適切な医療受診」や「受診時に自分の症状を正しく伝える」についても「できる」と回答した人の割合が最も低い結果であった。
 健康・医療においては、「目の前に起きている事象・状態」に対処することは確かに重要であるが、「自分はこうありたい・あるべきだからこの事象・状態を変えていきたい(またはこのままでいい)」といった人生100年時代を生きる上で少し長期的な思考を持つことも有用な場面がある。
 同調査で、健康の定義を(肉体的・精神的・社会的に満たされた状態ではなく)「病気ではない、弱っていない状態」とする回答が6カ国の中で最も多かったのは、健康・医療を「目の前の事象・状態」としてのみ捉えている人が多いことの表れかもしれない。
 不調を感じても様子を見てしまう人が多く、痛み・苦痛を「我慢できるくらいだから」と我慢する人の割合が高かったことも、こうした捉え方が関係していると言えるだろう。
 デジタルツールを健康管理に活用している人も6カ国中最も少ない結果であったが、活用している人はその利便性においてメリットを感じているようだ。医療におけるデジタル活用を望ましいとする声は日本でも4割ほどであった。
 「自身の生活や人生における健康の現在地を知る」という観点で、健康診断やがん検診の受診に加えて、まずは身近なデジタルツールを日常の健康管理に取り入れてみることも良いだろう。
 また、他国ではデジタルツールを「受診時の自身の症状の伝達」に生かす、という回答が日本と比較して多く見られ、医師とのコミュニケーションにも活用している点で、総合的なリテラシーの高さにつながっている様子がうかがえる。
 「予防行動促進による国の医療費の最適化につながる」という思考を持っている人も日本より多くいた。日常のその先における有用性もデジタルツールには期待できる。
 コミュニケーションの面では、医療従事者との対話について「できる」と回答した人の割合も6カ国中最下位となった。対話するために必要な事項は、必ずしも「医学知識を深めること」ではない。
 例えば、医療者から伝えられた医学知識を「納得・理解できること」は重要である。さらに重要な事項は、「自分の人生において、健康・医療の事象や状態にどう対応していくか、を自ら考えていく姿勢」だと思われる。
 調査では、治療方針の決定への「主体的関与」に関して、「できる」の回答が少なかっただけでなく、「したい」の回答も他国と比較して少ない結果であった。
 ただ、7割近くの人が「主体的に関与したい」と思っているのも事実だ。難しい医学情報を極めようとは思わず、ぜひ、「判断できる情報の捉え方」「自分の健康の現在地を知る」「自分がどんな人生を送りたいのか整理する」などを意識してみて頂きたい。

◆玉井孝直ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル カンパニー代表取締役プレジデントのコメント

 ⽇本は、医療の進歩、国⺠皆保険など優れた医療環境も手伝い、長寿国となっていると言える。だが、先進国の中で⾼齢化が最も進んでおり、平均寿命と健康寿命の乖離や、医療・介護費⽤の増大など多くの課題を抱えている。
 コロナ禍では医療機関の受診控えが社会課題となり、当社が2021年に行った調査では、「コロナが、がん治療に影響を及ぼしていると思う」と回答した医師が約9割に上った。コロナ禍を経た今、日本でも医療DXが推進され、変化は訪れている。
 今回の調査では、日本の皆さんが、情報収集・判断や行動、コミュニケーションに対する自信を持ち切れていないことが明らかになった。
 その一方で、単に寿命を延ばしたいというより、健康寿命の延伸に大きな関心を寄せていることがあらためて確認できた。当社は、これからも、人々のヘルスリテラシー向上を支え、主体的な選択が適切な医療やQOL、そしてサステナブルな社会の実現につながり、人々が「人生100年時代」をできるだけ長く、健康で幸せに生きられるよう、多くの皆様とともに取り組んでいく。

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