ヒトiPS細胞由来網膜シート 移植後2年の細胞生着および安全性確認 住友ファーマ

網膜シート移植の概念図

 住友ファーマは8日、網膜色素変性に対するヒトiPS 細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究について、移植後2年間経過における細胞の生着および安全性が確認されたと発表した。
同試研究結果は、神戸市立神戸アイセンター病院から公表されたもの。これらの試験結果をまとめた成果論文が科学学術雑誌『Cell Stem Cell』オンライン版(日本時間:12 月 8 日)に掲載された。
 住友ファーマは、理化学研究所とのiPS細胞由来網膜の立体組織形成と網膜色素変性治療の実用化に向けた共同研究の成果をもとに、同臨床研究について神戸市立神戸アイセンター病院と連携している。同臨床研究の結果も踏まえ、網膜再生医療の研究開発を推進し、一日も早くより多くの患者に治療機会を提供できるよう進めていく。
 網膜色素変性に対するヒトiPS 細胞由来網膜シート移植に関する研究成果、主な研究体制、これまでの経過の概要は、次の通り。

【研究成果】
・移植した2例において、移植片(網膜シート)は2年間、安定した状態で生着しており、重篤な有害事象もなく、移植により増加した網膜の厚みが維持されていることが確認された。
 また、視機能からみた病状の進行は、移植眼では非移植眼に比べ、同等または穏やかな傾向が確認された。

・同研究結果から、ヒト iPS細胞由来網膜シート移植における移植片(細胞シート)の生着及び安全性が確認された。今回は限定的な範囲の治療であったが、視機能への治療効果の可能性が示された。今後、さらに同治療の安全性と有効性の調査が進むと期待しており、神戸アイセンター病院としても、一早く患者に治療を届けるために、引き続き、同治療法の研究・開発に取り組んでいく。

【主な研究体制】
◆神戸市立神戸アイセンター病院
・副院長 平見恭彦氏 (実施責任者/研究責任医師)
・院 長 栗本康夫氏 (移植手術執刀医師)
・研究センター長 万代道子氏、他

◆細胞製造関連
・京都大学iPS細胞研究財団:iPS 細胞の提供
・住友ファーマ:iPS細胞からの網膜シートの製造
◆支援機関
・日本医療研究開発機構(AMED)
事業名:「再生医療実用化研究事業」
「再生医療実現拠点ネットワークプログラム 疾患・組織別実用化研究拠点(拠点 A)」
・住友ファーマ

【これまでの経過】
・2020年2月 大阪大学第一特定認定再生医療等委員会にて承認
・同年6月 厚生労働省 再生医療等評価部会で了承
jRCT(臨床研究等提出・公開システム)で公開(jRCTa050200027)
・同年10月 1例目の移植手術を実施

・2021年2月 2例目の移植手術を実施

・2022年10月 日本臨床眼科学会において、移植後1年の経過報告を発表

・2023年12月 移植後2年の研究成果論文が科学学術雑誌『Cell Stem Cell』に掲載

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