タグリッソと化学療法の併用療法 肺がん対象に米国で優先審査指定取得 アストラゼネカ

 アストラゼネカは、タグリッソと化学療法との併用療法について、EGFR遺伝子変異陽性局所進行または転移性肺がん患者を対象に米国で優先審査指定を取得したと発表した。
 米国FDAは、現在利用可能な選択肢よりも大幅な安全性または有効性の向上、重篤な疾患の予防、または患者のコンプライアンス向上に繋がる医薬品の承認申請に対し、優先審査の対象として指定している。
 処方箋医薬品ユーザーフィー法(PDUFA)に基づく FDAが目標とする審査の判断期日は、2024年第1四半期中である。
 世界で肺がんと診断される患者さんは年間220万人と推定され、肺がん患者の80~85%が最も一般的な肺がんであるNSCLC(非小細胞肺がん)と診断されている。さらに、約70%のNSCLC患者が進行がんと診断される。
 欧米では、およそ10~15%、アジアでは30~40%のNSCLC患者がEGFR遺伝子変異を有している。
 今回の適応追加申請は、世界肺癌学会(IASLC)の2023年世界肺癌会議(WCLC)プレジデンシャルシンポジウムで発表されたP3相FLAURA2試験のデータに基づくもの。
 同試験では、タグリッソと化学療法との併用療法が、一次治療として世界的な標準治療であるタグリッソ単剤療法と比較して、病勢進行または死亡リスクを 38%低下させた(ハザード比[HR]0.62;95%信頼区間[CI]0.49-0.79;p<0.0001)。
 治験担当医師による評価では、タグリッソ単剤療法と比較して、化学療法との併用により無増悪生存期間(PFS)の中央値が8.8カ月延長した。盲検化された中央評価機関による PFS の結果もこれと一致し、タグリッソと化学療法との併用療法によりPFSの中央値が 9.5 カ月延長したことが示された(HR 0.62;95% CI 0.48-0.80;p=0.0002)。
 特筆すべき点として、中枢神経系転移のある患者を含む事前に既定されたすべてのサブグループで臨床的に意義のあるPFSの有益性が認められた。中枢神経系転移のあるグループでは、タグリッソ単剤療法と比較して併用療法により病勢進行または死亡のリスクが53%低下し(HR 0.47;95% CI 0.33-0.66)、PFS の中央値は 11.1カ月延長した。
 今回の解析時点での全生存期間(OS)のデータは、イベント数が不十分ではあったものの、タグリッソと化学療法の併用療法では良好な傾向が観察された。同試験では、主要な副次評価項目である OS を引き続き評価する。
 タグリッソと化学療法との併用療法の安全性プロファイルは、コントロール可能なものであり、有害事象の発現率は併用療法群で高かったものの、併用療法群で見られた有害事象は各薬剤において確立されたプロファイルと一貫していた。今後の医学学会で、さらなる安全性情報が提示される予定だ。
 本年8月、タグリッソと化学療法との併用療法は、局所進行または転移性 EGFRmNSCLCで一次治療を受ける成人患者に対する画期的治療薬指定(BreakthroughTherapy Designation)をFDAから受けた。
 タグリッソは、米国、EU、中国、日本をはじめとする100カ国以上で単剤療法として承認されている。既承認の適応症としては、一次治療として局所進行または転移性 EGFRmNSCLC、局所進行または転移性 EGFR T790M 遺伝子変異陽性 NSCLC、および早期(IB、II、IIIA)EGFRm NSCLC の術後補助療法がある。

◆SusanGalbraithアストラゼネカのオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントのコメント
 今回のFLAURA2試験の結果は、一次治療を受けるEGFRm NSCLC患者さんに対してタグリッソに化学療法を併用することで無増悪生存期間の中央値が9カ月延長し、タグリッソの標準治療としての地位を強固にするものであると考えている。
 特に、脳転移があるような予後不良の患者さんにとってこの併用療法という選択肢は重要であることから、FDAと協力してこの治療法を1日も早く患者さんにお届けできるよう努めていく。

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