グラクソスミスクライン(GSK)は25日、組換えRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」について、60歳以上の成人を対象とするRSウイルスによる感染症の予防を適応症に製造販売承認を取得したと発表した。60歳以上の成人を対象とするRSウイルスワクチンとして日本で初めて承認された。
今回の承認は、GSKの主要なP3試験であるAReSVi-006(Adult Respiratory Syncytial Virus)試験から得られたデータ(New England Journal of Medicine)に基づくもの。同試験では、特定の基礎疾患を有する患者を含め、RSウイルスによる下気道疾患に対して全般的に高いワクチン効果が認められた。
同試験では60歳以上の成人におけるRSウイルスによる下気道疾患(RSV-LRTD)に対する同ワクチンの統計学的に有意かつ臨床的に重要な全般的有効性[82.6%(96.95% CI:57.9-94.1、12,466例中7例対12,494例中40例)]が示され、主要評価項目が達成された。
また、特定の心肺系および内分泌代謝系の疾患など、注目すべき併存疾患を有する60歳以上の成人での有効性は94.6%(95% CI:65.9-99.9、4937例中1例対4861例中18例)であった。
アレックスビーは、概ね良好な安全性プロファイルを示した。最も多く認められた特定有害事象は、注射部位疼痛、疲労、筋肉痛、頭痛、関節痛であった。これらは概ね軽度から中等度であり、一過性であった。
アレックスビーは、アジュバント添加RSウイルスワクチンで、膜融合前型で安定化された遺伝子組換えRSウイルスF糖タンパク質(RSVPreF3)抗原を含有している。
この抗原には、GSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせている。60歳以上の成人を対象にRSウイルスによる感染症の予防を効能または効果として、本年9月25日に承認を取得した。
基礎疾患を有する集団を含む50~59歳の成人を対象としたRSウイルスワクチンの臨床試験の募集が完了している。試験結果は、P3相有効性試験であるAReSVi-006試験および免疫原性試験であるAReSVi-004試験の追加結果とともに、2023年に得られる予定である。
これらの試験では、年1回の再接種スケジュールと、RSウイルスワクチンの単回接種後の複数シーズンにわたる予防効果・免疫原性を継続して評価する。
アレックスビー(Arexvy)は米国FDAで、60歳以上の成人のRSウイルスワクチンとして2023年5月、世界で初めて承認された。
同年、欧州(欧州委員会)、英国、カナダでも承認されている。GSKが所有するAS01アジュバントシステムには、Agenus社の完全子会社であるAntigenics社よりライセンス供与されたQS-21 Stimulonアジュバントが含まれている。
◆舘田一博東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座 教授のコメント
RSウイルス感染症を含む下気道感染症は、世界における死亡原因の第4位であることがWHOより報告されている。RSウイルスは、小児のみならず成人における呼吸器感染症の一般的かつ重大な原因であり、飛沫感染や接触感染により感染する。
RSウイルス感染による入院の大半は高年齢成人で、基礎疾患がある場合は重症化するリスクがさらに高まる。
◆トニー・ウッドGSKチーフ・サイエンティフィック・オフィサーのコメント
GSKは感染症から人々を守るため、ワクチンの製品群を拡充してきた。米国、欧州、英国、カナダに続き、本日、日本でもアレックスビーが承認され、対象となる日本の皆様に初めてRSウイルスワクチン、アレックスビーをお届けできるようになることを嬉しく思う。
◆ポール・リレットGSK代表取締役社長のコメント
このたびのRSウイルスワクチンの承認は、現在でも特定の治療法のない主要な感染性の病原体のひとつであるRSウイルスから、日本の高年齢成人を守るための重要な一歩である。
特に、高齢化が加速する日本において、120年にわたるワクチン開発の歴史を持つGSKの呼吸器領域のリーダーとしての役割を果たすものだ。引き続き、規制当局や医療従事者をはじめ関係者の皆様と協力しながら、できるだけ速やかにアレックスビーをお届けできるよう尽力していく。