iCONMの片岡一則センター長が2023年度「クラリベイト引用栄誉賞」受賞

 公益財団法人川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター (iCONM)は19日、片岡一則同センター長が2023年度「クラリベイト引用栄誉賞」を受賞したと発表した。
 同賞は、世界的な情報サービスプロバイダーである英国・クラリベイト社が、同社独自のデータ解析に基づきノーベル賞級の研究成果を創出する研究者を全世界から選出し、Citation LaureatesTM(引用栄誉賞)としてその功績を讃えるもの。
 2023年度「クラリベイト引用栄誉賞」は、全世界から23名が受賞し、日本からは片岡センター長を含む2名が選出された。同賞は、引用論文実績が極めて高く、研究内容もノーベル賞に値するほど社会への影響力があると評価された研究者に与えられるもので、これまでに同賞受賞者(総数396人)のうち71人がノーベル賞を受賞している。
 片岡センター長は、異なる性質を有する高分子の鎖(例えば、ポリエチレングリコールとポリアミノ酸)を連結した高分子化合物(ブロックポリマー)を自己会合(Self-Assembly)させることによって、高分子ミセルに代表される様々なナノ構造体を創出し、これらのナノ構造体が生体の免疫機能を潜り抜け、狙った組織で薬剤や遺伝子を放出後、安全に排泄される薬物送達システム (DDS) として機能することを世界に先駆けて実証して来た。
 片岡氏の研究を嚆矢とする高分子ナノ構造体を用いるDDS(ナノDDS)の研究開発は、現在、世界各国の研究グループへと拡がりを見せており、様々な薬剤、タンパク質、核酸医薬、mRNA、遺伝子を体内に運び、適切に機能させるシステムへと展開されている。

【片岡一則 ナノ医療イノベーションセンター センター長の略歴】

 川崎市産業振興財団副理事長、ナノ医療イノベーションセンター (iCONM) センター長、東京大学名誉教授。
 過去40年間にわたり、バイオマテリアルの分野、特にドラッグデリバリー/ドラッグターゲティング、非ウイルス性遺伝子ベクター、ナノ医療の分野で数多くの実績をあげ、これまでに700 報超の査読付き論文を発表し、クラリベイト社の解析では6万9000回以上引用されている(h-index は 139)。
 また、2017年から現在まで6年連続、計7回、トップ1%高被引用論文著者として認定されている。特許の数も600件を超え、スタートアップ企業5社の設立にも関与している。
 主な受賞としては、米国バイオマテリアル学会賞(Clemson Award)(2004)、米国 Controlled Release 学会賞 (Founderʼs Award)(2006)、NIMS Award (2009)、フンボルト賞(2012)、江崎玲於奈賞(2012)、高松宮癌研究基金学術賞(2017)、Biomaterials Global Impact Award (2023)、向井賞(2023)
など多数の受賞歴があり、日本工学アカデミー(2011)、米国工学アカデミー(2017)、米国発明
家アカデミー(2017)にも選出されている。
 現在、iCONMでは片岡センター長の下、ナノ DDS をさらに進化させたナノマシンの研究や在宅でも使えるナノ医療技術の開発が進められており、未来の「体内病院」の実現を目指して、ここ数年で10社のスタートアップ企業が設立された。

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