金沢工業大金道教授と金沢医大山田教授の共著論文が「日本医用画像工学会誌」2022年最優秀論文に選定

 金沢工業大学工学部情報工学科の金道敏樹教授と金沢医科大学臨床病理学の山田壮亮教授の共著論文である「病理画像のがんらしさと正常らしさを情報量で評価する情報密度法」が、『日本医用画像工学会誌Medical Imaging Technology(MIT誌)』 2022年の最優秀論文に選定され、田中栄一記念賞(MIT誌論文賞)が授与された。
 授賞式は、大阪大学中之島センターで開催された第42回日本医用画像工学会大会会期中の7月28日に行われた。
 人工知能を使った病理画像診断技術が盛んに研究され、時に医師と同等かそれ以上の診断精度を示すといった成果を上げている一方で、医療現場で医師に求められるレベルの診断根拠を示すに至っていないことが課題となっている。
 同論文では、逆に、判断根拠から積み上げる病理画像診断技術実現の可能性を提示し、妥当性があることを示した点が評価された。田中栄一記念賞(MIT誌論文賞)を受賞した論文の概要は、次の通り。

CAMELYON16のデータに対して、情報密度法を適用して判断根拠密度を可視化した結果。
緑図と赤図は、がんらしさを表し、青図は正常らしさを表している。情報密度法によって得られるがんを示唆する識別情報量が大きい領域と、CAMELYON16でアノテーションされた領域はおおむね一致。 この結果から情報量に注目して判断根拠を積み上げることでがん領域を見つけようとするアプローチには一定の妥当性があると考えられる。

 近年、畳み込みネットワーク(深層学習の手法の一つ。画像認識で主に使われる)など人工知能を使った病理画像診断技術が盛んに研究され、時に医師と同等かそれ以上の診断精度を示すといった成果を上げている。
 その一方で、そういった人工知能でも医療現場で医師に求められるレベルの診断根拠を示すに至っていないことが課題となっている。
 今回受賞した論文は、逆に、判断根拠から積み上げる病理画像診断技術実現の可能性を提示したもの。両教授は、性質のわかっている画像特徴量のそれぞれが、「がんである」と「正常である」と識別する上での情報量をどれほど持っているかに注目した。
 この情報量の大きさは、そのまま判断根拠の強さに対応するため、病理画像の各小領域に含まれる画像特徴量が持つ情報量をすべて足し上げれば、その小領域のがんらしさ・正常らしさの判断根拠が定量化でない。
 論文では「情報密度法」と名付けたこの可視化方法の詳細を示すとともに、情報密度法ががんと疑わしいとする領域が「CAMELYON16」のアノテーション結果とおおむね一致したにより、「情報密度法」に一定の妥当性があることを示した。
 CAMELYON16は、リンパ節切片の全スライド画像から、転移を自動検出するための新規および既存のアルゴリズムを評価するチャレンジ。2016年は、乳がん患者のセンチネルリンパ節に焦点を当て、オランダのラドバウド大学医療センターとユトレヒト大学医療センターの両方からセンチネルリンパ節の正常スライド、転移を含むスライドあわせて400枚が提供された。
 また、「これはがんです」という情報を画像データにひとつひとつ付加していく作業が「アノテーション」だ。今回の論文においては、がんである領域の境界線を描くことが相当する。「教師あり学習」と呼ばれるAIの教師データとして使われる。

タイトルとURLをコピーしました