名古屋大学、住友ファーマ、住友化学、藤田医科大学は9日、ヒト胚性幹細胞(ヒトES 細胞) およびヒトiPS 細胞を用いて、高効率かつ高純度で下垂体ホルモン産生細胞を作製する方法を開発したと発表したと発表した。
研究は、名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の多賀 詩織共同研究員(兼住友ファーマ、筆頭著者)、須賀 英隆 准教授(責任著者)および有馬寛教授らと、住友ファーマ再生・細胞医薬神戸センターの桑原篤グループマネージャー、住友化学生物環境科学研究所の中野徳重主任研究員および藤田医科大学医学部生理学の長崎弘教授らの共同研究グループによるもの。
研究成果は、下垂体の機能が低下した患者に対する再生医療の実現に向け、一歩前進したと考えられる。
下垂体は様々なホルモンの制御中枢で、中でも副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、日内変動や各種ストレスにより需要が変動する。下垂体機能低下症に対する現行の補充療法ではこの需要変動に供給を合わせられず、生命予後に影響を及ぼす場合がある。
同共同研究グループは 2016年にヒトES細胞から、2020年にヒトiPS細胞から下垂体-視床下部組織を作製可能にした。
今回は、これらの方法を基盤としてヒト臨床での使用を想定して改良し、ヒトES細胞およびヒトiPS細胞から安定的かつ高効率で下垂体-視床下部組織を作製可能とした。
さらに、下垂体表面抗原マーカーのEpCAMを用いたセルソーティング(細胞選別)を加えることで、高純度の下垂体ホルモン産生細胞を作製可能とした。精製して再凝集した下垂体ホルモン産生細胞(3D-下垂体)を下垂体機能不全モデルマウスに移植したところ、半年以上に渡ってホルモン分泌能が改善し、ホルモン分泌制御や疑似感染ストレスへの応答を示すことを確認した。
同研究は AMED 難治性疾患実用化研究事業「ヒト多能性幹細胞を用いた下垂体前葉機能低下症への再生医療技術開発」の支援を受けて実施され、6月8日付の米国科学誌『Stem Cell Reports』誌オンライン版に掲載された。