がんの根治目指して 武田薬品日本オンコロジー事業部ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部 

左からペイシェントアドボカシー&コミニュケーション部スタッフの馬目亜紀子氏、池内利行氏、直江佐穂里氏

 武田薬品日本オンコロジー事業部は、「We Aspire to Cure Cancer」(がんの根治を目指す)を理念に掲げるグローバル・オンコロジービジネスユニットに属し、そのペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部は国内の患者団体や医療機関など多くの関係部門と連携しながら、がん治療、がんと共生する上でのアンメットニーズを理解し解決策を提案するための活動や、製薬企業としての医療における「患者・市民参画(PPI)」の推進を展開している。
 
 ペイシェントアドボカシーは、2019年、抗がん剤に特化した日本オンコロジー事業部内に新設され、ボストンのアドボカシーチームとも連携ながら‟がんに特化したグローバルな専門組織の一部門”としてアドボカシー活動を展開している。
 日本オンコロジー事業部では、ストラテジックポートフォリオプランニング(SPP)部を中心に、2021年に武田薬品が着目する日本のがん医療課題とその解決策として「知識普及」、「個別治療」、「研究開発」を主軸にし、オンコロジーポリシーとしてまとめた(図)。

 知識普及では「予防や治療に関する普及啓発」、「小児・AYA世代(Adolescent and Young Adult、思春期・若年成人、15歳~30歳代までの世代)等へのがん教育」、個別治療では、「遠隔医療を活用したがん診療の地域差解消」、「がんゲノム医療の提供体制の構築」、研究開発では「がんに対するデータ利活用」の具体的な課題にブレークダウンして取り組んでいる。
 池内利行ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部長は、「製薬企業として画期的な新薬の創出や提供は当然である」とした上で、「患者さんがどのようなアンメットニーズを抱えておられるのかという観点から、創薬以外にも武田薬品としてがん医療・がん患者さんに貢献できる事柄を策定したのがこのオンコロジーポリシーである」と説明する。
 日本オンコロジー事業部では、メディカルアフェアーズ部、SPP部など様々な部署が連携しながら、ポリシーに挙げられた取り組みを推進している。
 オンコロジーポリシーは、武田薬品だけで解決できるものではないので、がん患者や患者団体、実際に患者を診ている医療現場の医師などとのパートナーシップの下で展開されているのは言うまでもない。
 その中で、ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部では、現在、池内氏と他3名が、「知識普及」にフォーカスした取り組みに尽力している。
 具体的には、「がん患者と家族向けのオンラインシンポジウム」をこれまで4回開催した。同シンポジウムは、毎年9月の「がん征圧月間」、2月の「世界対がんデー」に合わせて開催しているもので、医療者と患者間の協働による治療の意思決定のコミュニケーションプロセスである「Advanced Care Planning(ACP)」ならびに「Shared Decision Making(SDM)」について企業の立場から貢献することを目的にテーマを決定している。
 第1回目のテーマは、「患者さんと医療者が共に話し選択する」で、SDMをより多くの人に知って貰うことを目的に実施された。
 昔は、医師が医薬品や治療方法を決めると患者はそれに従わざるを得なかった。その後、様々な医療が発展する中で、一方的に医師が伝えるのではなく、患者のインフォームドコンセントを重視した治療が行われるようになった。
 さらに、近年ではSDMが重視されるようになり、医師と患者がお互いに話し合って治療を決定していく‟あるべき姿”が重視されるようになってきた。
 こうした中、池内氏は「医療者だけでなく、患者さんもこの考え方を理解して双方でより良いコミュニケーションを取りながら治療を決定していく社会作りを目指したい」と抱負を述べる。
 さらに、「この概念を通して、患者さんが最適な治療やケアを選択し、前向きに治療に取り組んでいただくことで、Patient
Reported Outcome(患者報告アウトカム)の向上に貢献できれば」と話す。
 とはいえ、実際、専門家の医師と患者が様々な事柄についてコミュニケーションするハードルは高い。患者や家族と医療従事者との円滑なコミュニケーションをアシストするのが、武田薬品の「知っておきたいがん用語の基礎知識」(https://urldefense.com/v3/__https://www.cancer-pedia.com/glossary/__;!!KDurfCY!76pngpP6E3fHnG6h9P_iJKNP9XtzC7tEEJlG2ZXsXT_D9sNuk_y_Z_5hqCekYFRMdDjYx0AW9BjCszf0ARDRXy1j4v9WfcTsw6MnrU5B$)だ。
 がんと共生する上で重要な60以上の用語を解説したもので、武田薬品ががん患者向けに運営している情報サイト「キャンサーペディア(https://urldefense.com/v3/__https://www.cancer-pedia.com/__;!!KDurfCY!76pngpP6E3fHnG6h9P_iJKNP9XtzC7tEEJlG2ZXsXT_D9sNuk_y_Z_5hqCekYFRMdDjYx0AW9BjCszf0ARDRXy1j4v9WfcTsw7Vm9Agt$)」に掲載されている。
 発病前→検診→診察・検査→診断→治療前→治療→治療終了後→病気との共生→進行再発と基礎知識がペイシェントジャーニーに沿って必要となる用語を解説しているのが大きな特徴になっている。
 「医療者が話す内容で判り難かった事柄などを紐解いたり、医療者との面談前に目を通すことでコミュニケーションがし易くするという目的でこのサイトが立ち上げられた」(池内氏)。
 本年2月19日に開催された第4回目のオンラインシンポジウムのテーマも、「がんについての正しい情報を知ろう、使いこなそう!」で、多くのがん患者、家族、支援者の人々からの関心が高く、前回を上回る400名超の視聴者から共感や納得の声が多く寄せられた
https://urldefense.com/v3/__https://www.cancer-pedia.com/column/vol005/__;!!KDurfCY!76pngpP6E3fHnG6h9P_iJKNP9XtzC7tEEJlG2ZXsXT_D9sNuk_y_Z_5hqCekYFRMdDjYx0AW9BjCszf0ARDRXy1j4v9WfcTsw_L2pDJu$)。
 シンポジウム冒頭では、約8割の人が「自身で入手したがん情報が正しいか不安に思うことがある」と答えた申込時アンケート結果が公表された。
 登壇者3名による講演では、がん患者・家族・医師・がん相談支援センター相談員と、それぞれの立場から有用な情報や経験談、具体事例が紹介された。
 参加後の感想(アンケートより抜粋)では、「SNSでがん情報をあさっていたが、自分に都合の良い物ばかり見ていると気づいた。今後の人生にとって心強い情報を得られた」、「再生医療の情報を最近頻繁に見かけ、惑わされていたが、エビデンスや内容を吟味し、主治医に隠さず相談することが大切だと思った」、「難しい医療情報の理解を一人で頑張るよりも、相談支援センターや患者会など身近な場所をすぐに頼るなど、自分にもできる事をすればいいのだとわかった」、「がん当事者は孤立しがちで、確かな情報に辿り着きづらいと感じることがある。今回のようなシンポジウムは有効で、多くの人に届く創意工夫をしてほしい」などの声が寄せられた。
 「これらを見て、患者さんとの対話を深めアンメットニーズを理解し課題解決していくことの重要性を改めて確信した」と話す池内氏。
 さらに、「一般の方に向けたがん教育」の必要性も力説する。2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死亡するわが国においては、‟がんとの共生”は大きな課題となっている。
 こうした現況の中、「がんに罹患してから学ぶのではなく、がんになる前からがんに対する正しい知識や理解、罹患した時にどのような対処をすれば良いのかについての啓発を考えている」と訴えかける。
 文科省も昨年4月から「がん教育」を教育指導要領に盛り込んだ。だが、がん教育を学校教諭が行うにはハードルがあり、講師となる医師やがん患者に‟がん教育に対する理解を深めてもらう”ことががん教育実践におけるポイントの一つになっている。
 武田薬品では、こうした点も踏まえながら地方自治体と協力して、がん教育を実施していく意向を示している。神奈川県において、他の製薬企業と連携しながら専門医やがん患者を招いての学校教育を実施している実績もある。
 池内氏は、「がん教育は、大学生や社会人、AYA世代のそれぞれのタイミングにおいて必要な知識を、その世代に沿った難易度で企画して訴求していかねばならない。できるだけ若い世代からがんに対する理解を深めて頂きたい」と意気込む。
 ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部が展開する社内従業員向けの疾患啓発企画も見逃せない。同企画は、製薬企業の従業員として、がん疾患やがん患者のアンメットメディカルニーズを理解することを目的としたものだ。
 多発性骨髄腫、リンパ腫、大腸がん、肺がん、卵巣がん、腎がん、肝がんなど武田薬品が扱っている疾患領域に基づいて様々な活動を実施している。

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