一般社団法人設立記念定時総会・特別講演会開催 中央区南薬剤師会

特別講演会では薬剤師の鈴木大阪市議が「薬剤服用後のフォローの重要性」を指摘

 大阪随一の繁華街ミナミに位置する中央区南薬剤師会は28日、大阪市内のホテルで一般社団法人設立記念定時総会・特別講演を会開催した。
 特別講演会では、4月の統一地方選挙で中央区から大阪市会議員に当選した薬剤師の鈴木りえ氏が「地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の役割」、中央区南医師会会長の小畠昭重氏が「コロナ禍この3年間を振り返って、そして未来に向けて」をテーマに講演した。

藤井氏

 始めに藤井義博中央区南薬剤師会会長が「本会は、令和2年4月に一般社団法人として新たに設立され3年目の総会を迎えた」と報告。
 さらに、「コロナ禍で皆様にご報告できないまま3年間経過したが、ようやく感染も収まった。改めて皆様にお集まり頂き、コロナ禍の熱き戦いを振り返るとともに、今後の薬局・薬剤師が進むべき方向性を考える講演会を企画した」と開催主旨を説明した。

鈴木氏

 鈴木氏は、まず、「2025年大阪万博では、救護班を作って熱中症になった人などをケアする第一回検討会が開かれたが、その中に薬剤師が入っていなかった。大阪市健康局の人にお願いして二回目から薬剤師を入れて貰うことになった」と近況報告した。
 さらに、介護保険料にも言及し「大阪市が政令都市の中で最も高い。最も安いところと比べると2000円程度違う。薬剤師の参議院の本田先生、神谷先生と連携しながら平均まで落としていきたい」と抱負を述べた。
 地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の役割では、「薬局・薬剤師は、調剤技術、服薬指導、薬歴記載など薬を渡すまでの役割だけではない」と指摘し、「薬を渡すまでの業務は、処方監査、薬歴記載も含めて、さらに充実したIT化、機械化が進んでいる」と強調。
 その上で、「薬を渡した後にきちんと患者を自分の目で見て処方箋の内容がベストかどうか把握し、医師にフィードバックすることが重要である。そうすれば薬物治療の質が飛躍的に向上する」と述べ、「薬剤を服用後までフォローする重要性」を訴えかけた。
 薬剤服用後のフォローでは、その一例として気管支拡張剤を例に挙げ、「気管支が拡張している胸の音や頻脈の確認が重要である。このように患者が薬を安全に服用しているかどうかのチェックは、フィジカルアセスメントが大きなポイントになる」と力説した。
 最後に、鈴木氏は、本田あきこ参議院が当選してから3年余りの政治活動を紹介した「本田あきこ物語・第二章」のパワーポイントを紹介し、本田氏の支援を呼びかけた。

小畠氏

 一方、小畠氏は、小畠クリニックでの自らの医療活動を中心に、コロナ禍の3年間を振り返った。
 第1波(2020年3月~5月頃)では、4月7日から最初の「緊急事態宣言」が発出された。小畠氏にとって新型コロナの第1症例となった82歳の男性は残念ながら死亡したものの、「N-95マスクを付けてこの患者さんに接触したため感染しなかった。N-95マスクをすれば感染を防止できることが判り、今後の診療に自信を持った」と振り返った。
 第2波(2020年7月~8月頃)は、夜の街を中心に患者が急増し、小畠氏のクリニックを中心としたミナミの一角が重点警戒地区に指定された。同クリニック発熱外来にも夜の街で働く若い人が多数受診。この頃より検査会社にPCR検査を受注できるようになり、「保健所に依頼しなくても診断が付けられるようになった」
 第3波(2020年11月~2021年3月頃)は、GO TOトラベル、GO TOイートの影響もあり感染が拡大した。病床逼迫のはしりにもなり、自院で診断した患者へのオンライン診療もスタートした。小畠氏のテレビ取材も第3波より始まる。
 第4波(2021年3月~4月頃)では、「まん延防止等重点措置」が初めて適用された。病床逼迫が顕著になり、自宅療養、オンライン診療、往診、酸素ステーションが繁用した。
 小畠氏は、「病床が逼迫して82歳の老人でも入院できなかった」と話す。また、6月の終わり頃から新型コロナワクチン不足に陥った。
 第5波(2021年7月~9月頃)は、ワクチン未接種の世代で流行し、発熱外来がパンクした。「ワクチン2回接種後の感染例は238例中2例で、この頃、デルタ株にワクチンはよく効いていた」
 8月下旬からは、ワクチン接種が再開した。10月には抗体点滴が外来で使用可能になり、11月には南アフリカでオミクロン株が発生。小畠クリニックでは12月にPCR検査機器を購入した。
 第6波(2022年1月~)では、1月に新型コロナ経口治療薬「ラゲブリオ」の使用が可能になった。高齢者施設でのクラスターが発生した。
 「3年間で最も忙しかった時期で、コロナ陽性患者診療や、オンライン診療に加算点が付いた」(小畠氏)
 4月からは保健所に代わっての陽性患者経過診療、日曜祝日の発熱外来に補助金が付いた。6月には海外からの水際対策が緩和された。
 第7波(2022年7月から10月頃)では、インフルエンザが流行(夜の街)した。8月から実施された患者のセルフチェックは当初混乱を招いた。
 「オミクロン株は、全年齢にワクチン接種の有無に関係なく感染し、重症化例はなかった」(小畠氏)
 9月から療養期間が10日から7日に短縮され、全数登録は無くなった。重症化リスクのない人は自身で登録、感染者数は高止まりのまま第8波に移行した。

 第8波(2022年11月から)では、本格的にインフルエンザとコロナの流行がみられた。11月には、国産の新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」が使用可能となった。
 2023年5月8日からの新型コロナ感染症5類移行により、検査が有料になった(3割負担で抗体検査1500円、PCR検査2500円)。隔離の法的規制がなくなり、5日間の療養を推奨。新型コロナ抗ウイルス薬を除く治療が有料となった。加算はトリアージ加算のみ継続される。
 医療機関では、陰圧テントを除去。発熱外来の予約を廃止、発熱者は別室で待機、別室で診療する(導線は異なる)。小畠氏は、「日祝日・盆と正月は休む予定」を強調した。

乾氏

 特別講演会後の懇親会で来賓あいさつした乾英夫大阪府薬会長は、「小畠先生のお話をお聞きして、薬剤師も新型コロナワクチン接種に協力し感謝されたことなどコロナに関する薬剤師の色々な活動を思い出した」と回想。
 さらに、地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の役割については、「鈴木先生が話された薬剤服用後のフォローもしっかりとエビデンスを示さねばならない。大阪府薬でも保険薬局の先生方が研究発表に慣れるよう8月27日に学術研究カンファレンスを開催する。是非参加してほしい」と呼びかけた。

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