創業以来過去最高の業績を更新
塩野義製薬は10日、2023年3月期決算説明会を開催し、手代木功会長兼社長CEOは、「2020年、21年、22年と新型コロナを通じて会社を上げて努力してきたが一つの節目を迎えつつある」と明言。
その上で、「新型コロナプロジェクトで一定の成果を上げつつ、そのリソースをその他の成長ドライバーにシフトして、今後のさらなる成長に向けた基盤構築に尽力したい」と意気込んだ。
2022年度は、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」の緊急承認や日本政府による買い取り(1000億円)、国内流通(47億円)に加えて、コロナ禍を契機に長時間作用型注射剤の急成長によりHIVフランチャイズも伸長した。
その結果、売上収益4266億8400万円(前期比27.3%増)、営業利益1490億300万円(35.1%増)、税引前利益2203億3200万円(74.5%増)、当期利益1844億9600万円(62.6%増)となり、創業以来過去最高の業績を更新した。
2023年度は、売上収益4500億円(5.5%増)、営業利益1500億円(0.7%増)税引前利益1925億円(12.6%減)を見込んでいる。
ゾコーバの今後の展開について手代木氏は、「23年度上期に中国、韓国での承認が予測される」と述べ、「下期にかけて一定の感染が続くとの予想の中で、東南アジアを含めたアジアで大きな展開をしていく」考えを示した。
日本市場については、「ラゲブリオ、パキロビッド、ゾコーバの3剤を合計した経口薬の処方率は8~9%と低い」と指摘。その上で、「3つの薬剤を使い分けている先生方も増えてきている。もう少し努力して、インフルエンザ薬と同様の早期診断・早期治療の概念に近づけていきたい」と述べ、「若い人を中心にゾコーバを早く服用すればコロナ後遺症が減少するのではないか」との考えも示した。
2023年度は、ゾコーバと申請中の新型コロナワクチンを併せて売上高1050億円を見込んでいる。
手代木氏はゾコーバの育薬にも言及し、①予防投与、②6歳から11歳の学童への投与、③コロナ後遺症のフォローアップーを挙げた。
予防投与に関する臨床試験を継続して行っている新型コロナ経口治療薬はゾコーバのみで、FDAも「プロトコールがミートすれば素晴らしい」との見解を示している。
学童への投与試験の実施もゾコーバのみで、手代木氏は、「政府が少子化対策を推進する中で、子供に対する薬剤の提供も非常に重要である」との認識を示した。
一方、HIVフランチャイズについては、3年前に経口剤「ドルテグラビル」のパテント切れによる大きな落ち込みが予測された。ところがコロナ禍により、ヴィーブ社が得意とする長期作用型注射剤のマーケットが拡大し、「将来的に非常に明るい見通しが立ってきた」
手代木氏は、次期成長ドライバーの進捗状況にも言及し、「抗肥満薬S-309309(P2)、急性期脳梗塞治療薬レダセムチド(P2b)、固型がん薬S-531011の開発が、フランチャイズ形成に向けて非常に重要である」と紹介。
さらに、「これらを強直に推進するために2023年度も引き続き1000億円の研究開発費を計上している」と力説した。