大阪府薬剤師会は9日、定例記者会見を開き、乾英夫会長は、ファルメディコの国家戦略特区による保険調剤業務一部外部委託提案について「理事会で具体的な対応を協議している」と明かした。
また、3月18日に開かれた「2022年度地域フォーミュラリに関する地域薬剤師会担当者説明会」で実施したアンケート調査結果も公表し、同説明会により「地域フォーミュラリの取り組みに対する理解が高まった」ことが報告された。
始めに乾会長は、「新型コロナは8日より5類に移行して季節インフルエンザと同等の対応になった。大阪薬では、WithコロナからPostコロナに向けて、府民の健康な生活に貢献し、安心・安全を確保するための各事業をしっかりと推進して‟患者のための薬局ビジョン”実現に向けて邁進したい」とあいさつした。
ファルメディコの国家戦略特区による具体的な事業実施内容は、「薬剤師による対人業務を充実させるため、対物業務の効率化を進める目的で、厚労省アクションプランを踏まえ、茨木彩都店および大阪府に近接する兵庫県伊丹市内の伊丹店での調剤業務の一部を新千里西町店に委託して実施する」というもの。
委託業務対象は、「一包化およびそのための薬剤の取り揃え」としており、委託を受けて新千里西町店で調剤を行った薬剤を委託元経由または委託先から患者宅等へ直送する。
ファルメディコでは、「薬局開設者に処方箋を応需した薬局内で薬剤師に調剤を行わせる義務付けが事業の実施を困難とする規制内容になっている」と指摘している。
同事業案については、「外部委託ではなく、同一法人内で行われる」、「当該する3薬局が三次医療圏にまたがっているため、昨年、厚労省のワーキンググループが取りまとめた結論をクリアしていない」などの指摘がある。一方、厚労省では、この取りまとめに基づいた調剤業務の一部外務委託についてのガイドラインを作成中である。
こうした中、4月6日、吉村洋文大阪府知事がファルメディコの提案に対して、「府民のためになるのなら大阪府で前向きに検討したい」とのコメントを出しており、その動向が注目されている。
乾会長は、「個人的」とした上で、「調剤業務の一部外務委託は、まずは安心・安全を確認した上で進めて行くべきである。特区での事業展開は性急過ぎる」との考えを強調した。
尾島博司副会長も大阪府薬の姿勢として、「調剤業務の外部委託反対、特区で行うことも反対である」と明確に示し、「薬剤師の物から人への流れは、きちんとした物(調剤)があってこそ実現する」と言い切った。大阪府薬では、今後、理事会でファルメディコの特区提案に対する具体的な対応を協議していく。
「2022年度地域フォーミュラリに関する地域薬剤師会担当者説明会」で実施されたアンケート調査結果では、地域フォーミュラリに関する理解度は、説明会前の「全く理解していない」24名から、説明会後には「全く理解できない」0人、「非常に理解できた」46人にまで増加し、「理解度が高まった」(堀越博一常務理事)。
また、アンケートでは地域フォーミュラリにおいて大阪府薬に期待する事項として、「会員への周知(地域フォーミュラリに関する説明会)」、「各地域の取り組み事例の報告(八尾市、天王寺区、高槻市)」、「地域フォーミュラリ作成による地域連携の未来像」、「運営に関する手順書・マニュアルの作成」、「医師会への対応方法」が挙げられた。
堀越氏は地域フォーミュラリ推進の課題として、「マンパワー不足」、「ガイドライン変更や後発医薬品発売毎の更新」、「地域フォーミュラリ作成による医薬品供給不安定の加速やメーカーとの調整」を指摘。
その上で、「地域フォーミュラリの推進は病院薬剤師との連携も必須となり、地域薬剤師の活性にも繋がる。2年目となる今年度は、一般会員に向けた地域フォーミュラリ研修会を実施したい」と抱負を述べた。