アステラス製薬は4月29日、眼科領域で新規治療薬の研究開発に注力する米国バイオ医薬品企業アイベリックと買収契約を締結した。同買収は、アイベリックが開発中の加齢黄斑変性(AMD)治療薬である補体因子C5阻害剤「ACP」の獲得を始めとする有望なプログラムの獲得を目的としたもの。両社は、2023年度第2四半期中の買収完了を見込んでいる。
アステラス製薬の米国持株子会社アステラス US ホールディング Inc.(本社:米国イリノイ州)の100%子会社であるBerry Merger Sub, Inc.を通じて、一株当たり40.00米ドル、総額約59億米ドルの現金を対価としてIVERIC社を買収するもの。
同買収には、手元資金に加えて、銀行借入れとコマーシャル・ペーパーの発行による計約8000億円の新規調達資金を充当する予定で、今後、5-7年以内に返済可能とみている。
なお、資金調達は同買収が成立するための条件とはなっていない。また、アステラス製薬のキャピタルアロケーションの方針に変更はない。
同買収完了は、アイベリックの既存株主や独占禁止法関連の当局の承認、およびその他のクロージング条件の充足を前提としている。
同買収において、アイベリックはアステラス製薬が間接的に保有する100%子会社となる予定。合意した取得価格はアイベリックの潜在株式を含む発行済み普通株式数約1億4820万株との前提に基づいており、アイベリック株式の2023年3月31日の終値(24.33米ドル/株)に対して64%、同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては75%のプレミアムを加えた価格となる。アステラス製薬とアイベリックの取締役会は、全会一致で本買収へ賛同している。
アステラス製薬は、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでおり、現在、「再生と視力の維持・回復」を含む5つのPrimary Focusを特定し、優先的に経営資源を投下している。同買収は、アステラス製薬が掲げる重点領域における製品ポートフォリオ構築のための重要なステップとなる。
アイベリックは、眼科領域において新規治療薬の研究開発に注力している。開発中の補体因子C5阻害剤「ACP」は、地図状萎縮(GA)を伴うAMDを対象に米国で承認申請中である。FDAから優先審査指定を受けており、FDAによる審査終了目標日(PDUFA date)は2023年8月19日。
ACPは、これまでに2つのピボタル試験(GATHER1,2試験)において、主要評価項目(GAの進行抑制)を統計学的に有意に達成し、この適応症についてFDAからブレークスルーセラピー指定を受けている。
アイベリックのリードプログラムであるACPを獲得することが、アステラス製薬の経営計画2021で定める2025年度までの売上目標に貢献するだけでなく、ACPは、fezolinetantやPADCEVとともに収益を生み出す柱として、2020年代後半に控えるXTANDIの独占期間満了による売上減少を補うことが期待されている。
また、アイベリックの買収により、アステラス製薬は、コマーシャルチームや、専門家との広範なネットワーク、医療機関とのパートナーシップを含む、眼科領域における基盤ケイパビリティを獲得する。こうしたケイパビリティ獲得を通じて、アステラス製薬は、Primary Focus「再生と視力の維持・回復」における目標達成に向け、臨床開発・市場アクセスを加速させていく。
◆岡村直樹アステラス製薬の代表取締役社長CEOのコメント
今回、眼科領域における革新的な治療薬の研究開発について卓越した専門性を有するアイベリック社と買収契約の合意ができたことを大変うれしく思う。
同社はGAを伴うAMDを対象とするリードプログラムACPをはじめとした有望なプログラム、および眼科領域におけるバリューチェーン全体に渡るケイパビリティを有している。
この買収により、失明リスクの高い眼科疾患に罹患している患者さんへより大きな『価値』を届けることができると確信している。
◆Glenn P. SblendorioアイベリックCEOのコメント
世界的に有名なアステラス製薬と買収契約を締結できたことは、当社が株主のために築いてきた大きな価値を示しており、アイベリック社員によるこれまでの多大な功績を評価するものである。
当社の眼科領域における専門性とケイパビリティ、アステラス製薬のグローバルビジネスにおけるケイパビリティを掛け合わせることで、GAを伴うAMDを含む、失明性の網膜疾患に苦しむ世界中の患者さんへ貢献していく。