アストラゼネカ(日本法人)は13日、2022年業績および開発・サステナビリティの進捗に関する記者発表会を開催し、堀井貴史代表取締役社長が、「我々は2025年のビジョンとして、イノベーションを通じて‟患者さんの人生を変えるパイオニア企業”を目指したい」と抱負を述べた。
アストラゼネカのグローバル2022年通期業績は、売上収益443億5100万ドル (5.7兆円、前年比19%増)、営業利益:37億5700万ドル (4830億円、前年比256%増)、グローバル 研究開発費97億6200万ドル (1.3兆円、売上比22%)となった。
売上収益では、Oncology (がん)が対前年売上15%増、CVRM (循環器・腎・代謝)が同13%増を示した。
その中で、2022年日本の売上収益は41億1000万ドル(5300億円、対前年比17%)となった。為替の影響を除いた恒常為替レートベース成長率では、前年比39%増を示し、堀井氏は「新型コロナ禍においても、日本の患者・社会ニーズにきっちりと応えることができた」と高評価した。
Global 売上収益に占める日本の割合は9.3%で、米国の40%、中国の13.1%に次ぐ3位で、「売上・成長率ともにアストラゼネカの優先市場となった」(堀井氏)。さらに、2022年は日本国内において4つの新薬含む計12の承認を取得し、「記録的なパイプラインの進捗を達成した」 新薬は、抗がん剤「イジュド」(イミフィンジ・イジュド併用療法、発売は2023年3月)、循環器・腎・代謝「オンデキサ」、 呼吸器・免疫疾患「テデスパイア」、ワクチン・免疫療法「エバシェルド」(発症抑制として)の4品目。
会見で堀井氏は、同社の5つのバリューとして「患者を第一に考える」、「サイエンスを追い求める」、「新しいやり方に挑戦する」、「勝つことに注力する」、「正しい行動をとる」を指摘した。
その中で、新しいやり方に挑戦では、「コロナ禍以前はワクチン事業に携わったことが無かったが、チャレンジにより日本で製造できるまでになった」とその一例を紹介。「スピード感をもってチャレンジしていくカルチャーが備わっている。皆が安心してチャレンジできる会社にしていきたい」と言い切った。
アストラゼネカが実現を目指す「人々、社会、地球の健康」においては、‟人々の健康”では「公正なアクセス、適正な価格設定、強靭な医療体制」、‟社会の健康”では、「倫理的な企業文化、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)、従業員の安全と健康」、‟地球の健康”では「アンビション・ゼロカーボン、製品のサステナビリティ、天然資源」がキーワードとなっている。
堀井氏は、2025年のビジョンである「“イノベーションを通じて患者さんの人生を変えるNo.1パイオニア企業」にも言及。「革新的なサイエンスのリーダー」、「患者中心のビジネスモデルのパイオニア」、「社員から選ばれる‟働きがいのある職場”」にチャレンジして、「インクルージョン&ダイバーシティのカルチャーをしっかりと育んでイノベーションを起こす組織組を構築し、患者の人生を変えるNo.1パイオニア企業を目指す」
また、各事業本部の2022年の現況と2023年の目標は次の通り。
◆ワクチン・免疫療法(V&I)事業本部(2022年9月に新設)
【2022年】
• 「エバシェルド」が国内唯一のCOVID-19感染症の曝露前感染予防の適応症の承認を8月末取得し、30万箱(15万人)分を日本政府と契約、9月供給開始
• RSウイルス感染領域ではSNSを活用した疾患啓発を実施。重症化予防薬「シナジス」を、約5万人の新生児に提供(アストラゼネカ社内データ)
【2023年】
• COVID-19感染の重症化リスクの高い人々を守るための選択肢の浸透に注力
• RSウイルス感染シーズン開始に向け医療従事者、保護者へのタイムリーな情報提供。感染による新生児の重症化低減に貢献
• グローバルパイプラインの国内同時発売を達成する開発戦略
◆循環器・腎・代謝疾患(CVRM)事業本部
【2022年】
「フォシーガ」が単剤SGLT2阻害剤としてシェアトップを維持しながら売上を拡大• 「ロケルマ」が血液透析治療などによる高カリウム血症治療に貢献
• Xa因子阻害剤服用中の出血時の抗凝固作用の中
和剤「オンデキサ」の承認を3月に取得し、5月より販売開始(国内初)
【2023年】
• 「フォシーガ」の電子添文改訂により、左室駆出率を問わず慢性心不全に使用可能に
• 慢性腎臓病(CKD)の早期発見・早期治療に貢献
◆呼吸器・免疫疾患(R&I)事業本部
【2022年】
・「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」の2022年認知度向上に貢献(過去最高の34.6%)
• 「ビレーズトリ」でCOPDによる増悪(入院・死亡)の減少に貢献
• 「テゼスパイア」(ヒト抗TSLPモノクローナル抗体)を新たに販売開始し、「ファセンラ」(ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤)とともに、重症喘息治療に貢献
【2023年】
・COPD治療のパイオニア、重症喘息息治療のマーケットリーダー的ポジションを確立すべく、疾患認知向上や治療貢献の取り組みを強化
◆オンコロジー事業本部
【2022年】
• 「タグリッソ」(肺がん)、「リムパーザ」(乳がん)の適応拡大で、より早期治療へ貢献
• 「イミフィンジ」(PD-L1抗体)の適応拡大、「イジュド」 (CTLA-4 抗体)の併用療法の承認により、消化器がんへ新規参入
【2023年】
• 6つの疾患領域にコミットするオンコロジー領域の
リーダー企業としてのポジションを確立
• 各がん領域のpatient journey でペインポイントを特定し、改善に取り組む