東京都初の陽子線がん治療施設誕生に向け江戸川病院と基本合意書締結 ビードットメディカル

超小型陽子線がん治療装置のイメージ図(薬機未承認品)

 

 医療機器スタートアップのビードットメディカルは20日、同社が開発する超小型陽子線がん治療装置の初号機導入に向け、江戸川病院(所在:東京都江戸川区)と基本合意書を締結したと発表した。これにより、東京都内で初の陽子線治療施設の誕生に向けて動き始める。
 陽子線治療は、体内深部にある腫瘍をピンポイントで正確に照射するため、X線治療に比べて周囲の正常な組織や臓器へのダメージが少なく、副作用を低く抑えることができる。

江戸川病院

 そのため日常生活を大きく変えることなく、働きながらのがん治療が可能になるなど、患者のQOL向上が見込まれる。
 人口と同じくがん罹患者数が最も多い東京都では、陽子線治療が長年望まれていたものの、スペースの問題などから導入には至っていない。そのため、これまで都内の陽子線治療を希望するがん患者は、筑波大学など他県まで通院する必要があり、容易に選択できる治療法ではなかったのが現状だ。
 ビードットメディカルは、こうした現状を打破すべく、従来に比べて大幅に小型・低価格化した超小型陽子線がん治療装置の製品化を進めている。
 従来装置は、患者周りを筺体(ガントリー)が回転することで陽子線を様々な方向から照射するという構造だが、ビードットメディカルは、陽子線を高磁場の超伝導電磁石内で曲げることで任意の角度から照射するという「非回転ガントリー」を考案した。
 この独自技術により装置をX線治療装置と同程度のサイズにまで小型化し、これまでスペースが無く陽子線治療導入が困難であった都市部や、コストを理由に検討を断念していた病院への導入促進を図り、施設数の大幅増加に貢献してより多くの患者が陽子線治療を選択できる社会を目指していく。
 ビードットメディカルと江戸川病院は、ともに東京都江戸川区に所在しており、メーカーと病院それぞれの立場から時代と共に変化する患者ニーズに合わせたがん治療を追求している。江戸川区から日本中へ、さらには世界に向けて高度がん治療の提供を広げていくため、早期の薬機承認取得を目指して引き続き取り組む。

◆古川卓司ビードットメディカル代表取締役社長のコメント

古川氏


 「より高度ながん治療を、より多くの患者さんに届けたい」という想いで超小型陽子線がん治療装置の開発を始めて3年半、ようやく夢の実現に一歩近づいた。
 今回の導入により、多くのがん患者さんの治療の選択肢が広がればと願っている。これから装置の薬機承認取得、導入、治療開始、さらにその後のサポートまで、全力で頑張りたい。

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