アストラゼネカは16日、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法について、HR陽性の進行乳がんのP3試験(CAPItello-291試験)において、フェソデロックスと比較して疾患増悪または死亡のリスクを40%低下したと発表した。
CAPItello-291試験の対象は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6 阻害薬併用の有無を問わず、内分泌療法中もしくは治療後に再発または増悪したホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)低発現または陰性の局所進行性または転移性乳がん患者。
カピバセルチブ+フェソロデックスの併用療法が、プラゼボ+フェソロデックスと比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間(PFS)の延長が示された。同試験の結果は、2022 年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)において発表された。
同試験の結果によって、カピバセルチブ+フェソロデックスの併用療法は、プラセボ+フェソロデックス投与と比較して、全試験集団における疾患増悪または死亡のリスクを40%低下させることが示された(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.51 – 0.71、p=<0.001、中央値 7.2 ヵ月 vs 3.6 ヵ月に基づく)。
AKT経路のバイオマーカーに変異が認められる集団では、カピバセルチブ+フェソロデックスの併用療法は、プラセボ+フェソロデックスと比較して、疾患増悪または死亡のリスクを 50%低下させた(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.38 – 0.65、p=<0.001、中央値 7.3 ヵ月 vs 3.1 ヵ月)。
AKT 経路(PI3K/AKT/PTEN)の遺伝子変異は乳がんにおいて高頻度に発生し、HR陽性の進行乳がん患者の最大50%が変異を有している。
確定した客観的奏効率(ORR)は、全体集団でカピバセルチブ+フェソロデックス群 22.9%vsプラセボ+フェソロデックス群 12.2%、バイオマーカー変異のある集団で28.8% vs 9.7%であった。
解析時点での全生存期間(OS)データは追跡がまだ不十分であったが、早期データとして有望なものであった。引き続き重要な副次評価項目として OS を評価していく。
カピパセルチブとフェソロデックスの併用療法の安全性プロファイルについては、この併用療法を評価したこれまでの試験と同様であった。カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法により、全試験集団で重症度を問わず 20%を超える最も高い頻度で認められた有害事象(AE)は、下痢(72.4%)、悪心(34.6%)、発疹(発疹、斑状皮疹、斑状丘疹皮疹、そう痒性皮疹を含むグループ用語、38%)、疲労(20.8%)、嘔吐(20.6%)であった。
5%を超える患者さんで発生した最も高頻度のグレード3以上のAEは、下痢(9.3%)と発疹(12.1%)であった。
なお、フェソロデックスのHR陽性進行乳がんに対するカピバセルチブとの併用療法およびカピバセルチブは本邦未承認です。
◆CAPItello-291試験治験責任医師のNicholas Turner氏(ロンドンがん研究所およびRoyal Marsden NHS Foundation Trust分子腫瘍学教授)のコメント
今回発表されたデータは、カピバセルチブがHR陽性の進行乳がん患者さんに対する新たな選択肢として、治療を変える可能性があることを示している。
重要なことは、ファーストインクラスの可能性を持つこの治療法が、内分泌療法やCDK4/6阻害薬による耐性または治療後にがんが進行した患者さんの増悪を遅延させることが示された
点にある。
◆Susan Galbraithアストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジテント兼オンコロジーR&D責任者のコメント
カピバセルチブは、HR 陽性、HER2 低値または陰性の進行乳がん患者さんを対象としたP3試験において有効性が示されたAKT 阻害薬としては初の治療薬として、治療選択肢が限られている領域に重要な進展をもたらすだろう。我々は、全患者集団とバイオマーカー陽性集団においてベネフィットを示した今回の結果が、HR 陽性乳がんの治療を変えるとともに、カピバセルチブがこれらの患者さんにとって新たな選択肢となり得ると信じている。